【親の離婚】<中>面会交流 「子が選択を」

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「ただ重要なのは子どもの気持ち。親と会うかを決める選択権を、子ども自身が持っていることが大切なんだと思います」なんて権利、「ひとり親」の子どもにあるわけ?おかしいでしょ。

2023/02/17 06:00

父親と写った唯一の写真を前に、優しかった人柄を語る玉城ゆかりさん(大阪府門真市で)=中原正純撮影

 久しぶりに会った父親は、昔の印象と違って見えた。記憶の中では「怖い父親」。けれど、「性格が丸くなっていた。イメージが変わった」と大阪府の中学3年の男子生徒(15)は話す。

【親の離婚】<下>再婚しても子どもを一番に

 小学5年の時に両親が離婚。中学入学後に不登校になり、家での言動が荒れた。母親(39)は迷いながら、離婚後に初めて父親に助けを求めた。

 「頭を冷やしに行こう」。父親は男子生徒をドライブに誘い、その後も何度か車で海辺などを走った。次第に進路の相談をするようになり、高校のオープンスクールも一緒に行った。

 「将来に色んな選択肢があることを教えてくれた。男同士なんで、話しやすい」と男子生徒。母親は「最初はすごく緊張していたけど、少しずつ2人にしかわからない信頼関係ができたのでは。どうしたって父親は1人しかいない。印象が悪いままではなく、関係性をまた築けたのは良かったのかな」と語る。

 日本では親の離婚後、多くの子どもが母親と暮らし、父親との関係は希薄になる。

 厚生労働省の全国ひとり親世帯等調査(2021年度)によると、母子世帯の45%は面会交流を行ったことがなかった。66%は取り決めもなく、その理由は「相手と関わり合いたくない」(26%)が最多。「なくても交流できる」(16%)、「相手が希望しない」(12%)が続いた。

 NPO法人「ハッピーシェアリング」(大阪)では、面会交流支援のほか、親同士が直接やりとりしなくても面会日を調整できるオンラインシステムを提供する。代表理事の築城由佳さん(45)は「夫婦の関係は終わっても、親としての責任は続く」と力を込める。

 自身は10年前、長女が1歳の時に離婚。調停中から面会交流を行っていたが、当初は「なぜ会わせないといけないのか」と否定的で、娘も「行きたくない」と話していた。けれど数年たち、元夫を責める気持ちを手放した頃から、長女が「パパと遊んで楽しかった」と口にするように。娘に我慢をさせていたことに気がついたという。

 「自分のルーツを知ることは、子どもの成長や人生の選択に大きく影響する。親の感情で関係を切らないようにしてほしい」と語る。

 ひとり親へ食材支援を行うNPO法人「ハッピーマム」(大阪)代表理事の玉城ゆかりさん(48)は小学4年の時、両親が離婚。大好きだった父親の話はタブーになり、一切連絡を取れなくなった。

 「見捨てられた」。深いショックが刻まれ、どこか自信を持てないまま思春期を過ごした。「両親に恨みつらみがあったり、愛されたいと思ったり。毎日感情が違い、気持ちが安定しなかった」と振り返る。

 20歳の時、母親から預金通帳と手紙の束を渡された。「もう中学生ですね」「お母さんの言うことをよく聞いて」……。手紙には優しい言葉が並び、通帳は毎月一日も遅れず養育費が振り込まれていた。「私のこと忘れてなかったんや」。胸に詰まった10年分の苦しさが流れ出るようだった。

 離れて暮らす親の愛情が自己肯定感にいかに重要か痛感する一方、支援する母子家庭の多くはDVに苦しんだ経験を持つ。子どもを元夫に会わせることを恐れる母親の心理もわかるだけに複雑だ。

 「ただ重要なのは子どもの気持ち。親と会うかを決める選択権を、子ども自身が持っていることが大切なんだと思います」

面会交流

 離れて暮らす親と子どもが遊んだり、手紙や電話で連絡を取ったりすること。2012年施行の改正民法で、離婚時に定める事項として明文化された。

親権のあり方に賛否

 離婚家庭の子どもの養育について、法制審議会(法相の諮問機関)の部会で議論が進んでいる。

 日本では当事者同士の話し合いによる協議離婚が全体の9割を占め、面会交流や養育費の取り決めがなくても離婚できる。部会が昨年11月に公表した中間試案では、面会交流の取り決めなどを離婚の要件とする案も提示された。

 意見が激しく対立するのが、親権のあり方だ。現行の民法では離婚後に父母の一方が親権者となるが、先進国では双方が親権を持てる「共同親権」を認める国が一般的で、導入するかが注目されている。しかし、DVや虐待が背景に潜むケースもあり、「子どもの安全が守られない」などと反対は根強い。

小学生の時に両親が離婚…高校3年の女子生徒(17)

 あまり父親を好きじゃなかったし、母方の祖母と同居していたのでさみしいと思ったことはない。

 大学進学を希望するが、母親だけでは学費が大変と思い、父親に援助を頼むと、「卒業後は働いた方がいい」と言われた。「自分にはお金を使うのに、子どものためには使ってくれないのか」と失望が広がった。たまに食事に行くなどしていたけど、もう関わるつもりはない。連絡先も消した。

 子どもが別居親を好きなら、どちらとも会えるのがいいけど、嫌いな親に会う必要はないって感じる。

高校1年の女子生徒(16)

 両親の離婚後、しばらくは面会交流支援団体を利用して父親と会っていた。母親に連れられて、わざわざ支援団体の施設に出かけることを、すごく不思議に思っていた。ただ普段遊べないようなおもちゃがたくさん置いてあるし、父親に色々買ってもらえるので楽しかった。

 自分の携帯電話を持ってからは直接、連絡を取るように。今は学校帰りに一緒にご飯を食べに行き、大学の進路などを話している。父親というより、気を使わずに、ずっと話し続けていられる友達って感じです。

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