子育てしてない古臭い記者が書いたんでしょうね。ご苦労様です。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/317847
公開日:2023/01/27 06:00 更新日:2023/01/27 06:00
離婚後の子供の親権について法制審議会の部会が民法改正のたたき台を示した。現行の民法では離婚後はどちらか一方に決める必要があるが、離婚後も双方に親権を認める「共同親権」が盛り込まれたことで注目された。共同親権なら離婚後も共に子育てに関わることが容易になるため、メリットがあると思われがちだが、単純にそうとも言い切れない側面もある。
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■単独親権だから子供に会えないわけではない
毎年、約20万組前後が離婚する昨今(婚姻件数は約50万組)、離婚を機に子供になかなか会えなくなった親たちがいる。
《パパに会えなくて子供が泣いています》
《日本は単独親権だから親子断絶が起きる》
そのような主張を聞くと、気の毒に思う人も多いかもしれない。現在、離婚後の共同親権の導入を強く求めているのは、主に子供となかなか会えない別居親(父親)たちだが、そう単純な話ではない。
日本では、離婚後の親権者を父母の一方に定める単独親権制度を採用。ただし、親権の有無にかかわらず、日常の世話や子供と会う条件、養育費などについては協議で決めることができる(民法766条1項)。そもそも離婚した両親の意思疎通がうまくいっていれば、子供は両親間を自由に行き来できるが、そうではない場合でも、別居親が家裁の取り決めに従って子供に会う「面会交流」という制度がある。
「単独親権だからといって子供に会えないということはありません」
こう話すのは、家事事件に詳しい岡村晴美弁護士。岡村弁護士はDVや虐待、いじめ、パワハラ案件などに取り組み、立場の弱い側に寄り添ってきた。関わる案件の多くは低所得者も利用しやすい法テラス経由。手間がかかるわりには利益が少ないため、多くの弁護士はやりたがらない。
「2012年の法改正以降、裁判所は面会交流原則実施の立場をとってきました。中学生以上だと子供の意思(会いたい・会いたくない)が尊重されますが、小学生以下の場合はちょっとやそっとの拒否なら、『子供が嫌がっても歯医者に連れていく』と同じ論理で、裁判所は会わせようとします」
同居親が裁判所の決定に従わない場合には罰金の支払いや親権を認められなくなるリスクもある。それほど厳しい条件を課せられているにもかかわらず、一部面会交流が認められないのは、子供の利益にならないと判断された場合だ。
「最も多いのが、子供の拒否感が強いケースです」(岡村弁護士)
子供が会いたがらないのは「同居親の刷り込み」と考える別居親は多いが、実際には同居していた頃の嫌な経験が原因である場合が少なくないというのだ。
慎重派弁護士にはさまざまな嫌がらせ
(C)日刊ゲンダイ
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「私が、『お子さんに会えない理由は審判書に書いてあります。そこを直さないと会えないですよ』と父親に言っても聞く耳を持ちません」(岡村弁護士)
そんな助言を無視して「弁護士を懲戒請求しよう」「子供を連れ去った妻を未成年者略取誘拐罪で刑事告訴しよう」などと別居親仲間にSNSで呼びかける事例もある。
「面会交流が不成立になっても、申し立てをずっと繰り返す人がいます。さらには面会交流調停、面会妨害に対する損害賠償請求、裁判官への訴追請求、元妻への刑事告訴など何種類もの訴訟を起こす横の展開もあります」(岡村弁護士)
■「コラァ、子供の涙で飯食うな!」
こんな暴言も浴びせられる弁護士もいる。
《コラァ、おまえら。どんだけ子供たちに涙流させて飯食うとるんや。その鼻へし折りにきたったぞ。出てこい、離婚弁護士》《モラハラなんか、そんなもんな、嫁はんと旦那の話であって、子供と何の関係あるんじゃ》
まるで荒くれ者の恫喝のような一場面だが、とある共同親権推進団体の街頭宣伝の様子である。
「『共同親権について慎重に考えたほうがいい』という意見をネット上に表明するだけで、無能、クズ弁、工作員などと誹謗中傷され、県や市への苦情電話、講演主催者への講師降板要請などの被害を受けました」と岡村弁護士は嘆く。別居親たちからは「DVをでっちあげて儲けている離婚ビジネス弁護士」と見なされ、業務妨害も受けるという。
「DV・虐待案件では、相手方の意に反する結果になると、怒りの矛先が弁護士に向かい、所属弁護士会に懲戒請求されることがあります」(岡村弁護士)
そうなると、弁護士会に弁明書を書かなくてはいけないので、非常に手間がかかるのだ。
「情けなくて涙が出ます。本当にしんどいけれども、私の口を封じたくてやっているわけだから辞任することはできません。ネットへの発信も、黙ってなるものかという思いで続けています」(岡村弁護士)
フランス移住の杏にも大使館に抗議メール
フランスに移住した女優の杏(C)日刊ゲンダイ
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女優の杏がフランス移住を発表した際、面識もないのに「元夫に子供を会わせたくないからだ」と決めつけ、杏にビザを発給しないようにフランス大使館にメールを送り付ける者まで現れたという。
「共同親権と聞くと、協力し合う関係のように思われがちですが、共同を法律で強制することを意味するのです」とは岡村弁護士。その弊害としては、別居親の許可を得ないと重要事項の決定ができなくなり、進学先の決定や手術などスピーディーさが求められるケースでも、一方の親が反対すると子供の身動きが取れなくなる。別れた配偶者が拒否権を発動し、ずっと嫌がらせをすることも可能だ。取材したジャーナリストの林美保子氏がこう言う。
■拒否されている別居親ほど共同親権を求める
「DV・虐待被害関係者は、離婚後も加害者に関わらざるを得なくなることを恐れて、現行制度の維持を求めています。元夫や元妻から見える風景やストーリーが違い過ぎるために両派の対立は根深く、熾烈なバトルが繰り広げられているのが現状です。『ある日突然、妻に子供を連れ去られた』と主張する夫は多い。しかし、何の非もない夫のもとを黙って家を出るでしょうか? それなりの理由があることも考慮に入れておかなくてはいけません」
子連れ別居、子連れ避難かもしれないのに、「連れ去り」「実子誘拐」と言って、元妻の厳罰を望んだりもする。それより、なぜこうなってしまったのかと自分自身に問うほうが、親子関係はよほどよくなる。
伝統的な家族観を持つ国会議員が別居親を支援するかたちで共同親権制度を導入しようとしているが、それで子供に不利益が出てしまうのだったら本末転倒だ。