共同親権のパブコメに自民党が介入? 推進派議員が関与した資料を政府がサイト掲載 公正・中立性に疑問の声

茶番です。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/224741

2023年1月12日 06時00分

 離婚後も両親がともに子の親権を持つ「共同親権」の導入を巡り、法務省が法案作成の前提として2月中旬まで実施しているパブリックコメント(意見公募)のサイトに、推進派の自民党議員が作成に関わった資料も掲載されていることが分かった。国民を特定の意見に誘導せず、多様な声を集めるのがパブコメの目的だが、準備段階で推進派が介入していた。法務省は手続きに問題はないと説明するが、識者は制度の公正さを損なわせると指摘する。 (大野暢子)

◆共同親権…DVや虐待から逃れにくくなるとの反対論も

パブリックコメントのサイトに掲載された法制審部会がとりまとめた全16ページの中間試案と自民党議員が作成に関わった全4ページの参考資料(手前)=由木直子撮影

パブリックコメントのサイトに掲載された法制審部会がとりまとめた全16ページの中間試案と自民党議員が作成に関わった全4ページの参考資料(手前)=由木直子撮影

 自民党議員が関与したのは、本体の「家族法制の見直しに関する中間試案」とは別に、図柄入りで制度の論点などを示した全4ページの「参考資料」。作成者は「法務省民事局」になっており、サイトを開けば誰でも見られる。

 中間試案は全16ページで、法相が任命した識者や実務家でつくる法制審議会(法制審)の家族法制部会が1年半かけてまとめ、全会一致で了承した。共同親権は、子と疎遠になっている別居親らが導入を求めているのに対し、家庭内暴力(DV)や虐待の加害から逃れにくくなるとの反対論も根強い。委員間で賛否が割れ、導入案、現行の単独親権のみ維持する案の両論を併記した経緯がある。

 一方、参考資料は法制審部会の了承を得ずに法務省がサイトに掲載。民事局の担当者は「省の責任で作成したもので、法制審の了承は不要だ」と説明する。

◆自民・柴山氏「立法機関はわれわれだ。政治介入ではない」

 問題は作成の経緯だ。パブコメ前の昨年12月、推進派の超党派議連会長で自民党の柴山昌彦衆院議員は記者団に「中間試案の論点の並び方が論理的でなかったので、私たちが(参考資料で)並べ替えた」と明言。複数の自民党議員によると、参考資料は原案の段階から同党議員が作成に関わっていた。

 柴山氏は「立法機関はわれわれだ。政府とキャッチボールするのは政治介入ではない。共同親権の導入に誘導する意図はない」と主張。分かりやすさと中立性を意識した内容といい、民事局の担当者も「政党から事前に意見を聴くことは禁じられていない」と話す。

 だが、政府提出法案は通常、担当省庁が策定した後に与党の審査を受ける。自民党内にも慎重論がある中、この段階での推進派の関与に、法制審部会の関係者は「パブコメを公正に行うには中間試案と同様、委員が確認すべきだった」と憤る。

◆「誘導する内容だ」弁護士の会が注意喚起

 内容の中立性にも疑義が出ている。DVや虐待などの問題に詳しい弁護士有志からなる「共同親権の問題について正しく知ってもらいたい弁護士の会」は昨年12月、「共同親権に誘導する内容だ」とネット上で注意喚起を始めた。

 例えば、現行制度でも互いに協力的な父母は離婚後に子の世話を分担できるが、参考資料にこうした記述はない。同会事務局長の岡村晴美弁護士は「離婚後もともに子育てする選択肢が現状では全くないと誤解させる。共同親権導入が既定路線のような印象を与えている。法務省は政治的な圧力に毅然きぜんと対応すべきだった」と語った。

◆「パブコメの趣旨に反する」

 パブコメ制度に詳しい榊原さかきばら秀訓ひでのり南山大教授の話 法制審部会の部外者が作成に関わった資料を、法制審部会の案と同じサイトで公表するのは不適切だ。仮に内容が妥当でも、「行政運営における公正の確保と透明性の向上」のために行うパブコメの趣旨に反する。自民党議員は、パブコメに口を出して制度の公正さを損なわせるのではなく、自分たちの立場を独自に国民に訴えればよい。

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