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2022/12/18 6:00
最も大切なのは子どもにとっての幸せである。その原点に立ち、議論を深めたい。
離婚後の親権について、法制審議会(法相の諮問機関)の部会は制度見直しの中間試案をまとめた。
親のいずれかが親権を持つ現行の「単独親権」に加え、両親が持つ「共同親権」の導入について検討している。
部会の意見は対立し、試案は複数の選択肢を列記するにとどめた。単独親権のみを維持する、共同親権を選べるようにする、選べる場合はどちらかを原則にする-などだ。
法務省は試案に対する国民の意見を募っている。当事者をはじめ、幅広い意見や要望をくみ取ってほしい。
共同親権を求める人の多くは、親権を持たず、子どもと別居している親だ。
子どもの「連れ去り」や面会交流の中断で、会えなくなることがある。共同親権が認められれば、こうした事態は避けられると主張する。
別居しても親子であることに変わりなく、子育てに深く関わりたいという考えはうなずける。一般的に子どもの利益にもかなうだろう。海外では共同親権が主流だ。
一方で、共同親権には根強い反発がある。
特にドメスティックバイオレンス(DV)や児童虐待がある場合、被害者は元配偶者との関わりを避け、子どもの安全を守りたいと訴える。
親権者は子どもの身の回りのこと、教育、財産管理などあらゆることを決めなければならない。共同親権だと親同士の関係によっては、決定が滞ることも懸念される。
いずれも切実な事情を抱えており、一つの制度に絞るのは困難だろう。柔軟に選択ができる仕組みが求められる。
改めて確認したいのは、親権は子どもが養育を受ける権利であり、親にはその責任があることだ。
民法は「親権者は子の利益のために監護、教育をする権利と義務がある」と定める。親権の名の下で、親が子どもを振り回すようなことがあってはならない。
試案では、養育費や面会交流の取り決めをしなければ原則として離婚できない、とする考え方も選択肢の一つとして例示された。
現在はその取り決めがなくても離婚できる。親権がない親も子どもの生活を支える義務があるが、母子家庭で養育費を受け取っているのは4分の1にとどまる。
養育費の不払いは生活困窮に直結する。親権の議論とは別に、確実に払われる仕組み作りを急ぐべきだ。
親権を決める際は子どもの意見が尊重されなければならない。親の心情を察し、自分の思いを押し殺す子どももいる。子どもに寄り添い、意見表明を促す支援員(アドボケイト)の力を活用したい。
法改正の時期は未定だ。専門家や政治家は異なる意見にも耳を傾け、熟議を重ねて結論を出してもらいたい。