補足意見が興味深い
「今回のケースでは、父親に引き渡しに協力する姿勢はみられるものの、長男の母親に対する強い拒絶感情を取り除く努力が十分ではなかった」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221202/k10013911331000.html
2022年12月2日 18時43分
別居したあと、子どもの身の回りの世話などをする監護権を持った母親が、夫に対し強制的に子どもを引き渡すよう求めた申し立てについて、最高裁判所は「子どもが拒んだというだけでは、引き渡しを認めない理由にはならない」と指摘し、申し立てを認める決定をしました。
和歌山県の女性は、別居した夫に対して息子を引き渡すよう求め、去年、母親を監護者と認めて引き渡しを命じる審判が確定しました。
しかし、当時8歳の息子が母親の元へ行くことを拒み、引き渡しが実現していないため、母親は夫に制裁金を課して強制的に引き渡しをさせるよう申し立てていました。
和歌山家庭裁判所は「子どもの年齢などを考えれば、引き渡しを強制されても過酷ではない」として、父親に対し、息子を引き渡すまで一日につき2万円を支払うよう命じましたが、大阪高等裁判所は「息子には拒絶する明確な意思があり、心身への影響を考えると引き渡しの実現は難しい」と判断し、母親の申し立てを退けました。
これについて、最高裁判所第3小法廷の長嶺安政裁判長は「子どもが拒んだというだけでは引き渡しを認めない理由にはならない。今回のケースでは長男が拒絶の意思を示したのは2か月間で2回にとどまっていて、強制的な引き渡しを求めることが母親の権利の乱用にあたるとはいえない」として、大阪高裁の決定を取り消し、母親の申し立てを認めた判断が確定しました。
“まずは説得する努力を” 裁判官が補足意見
決定では5人の裁判官のうち、学者出身の宇賀克也裁判官が結論に賛成の立場で補足する意見を述べました。
補足意見では、引き渡しを明確に拒んでいる長男の意思を重視した大阪高裁の決定について、「共感できる部分があるが、権利の乱用にあたるとするには、ためらいを覚える」としたうえで、「今回のケースでは、父親に引き渡しに協力する姿勢はみられるものの、長男の母親に対する強い拒絶感情を取り除く努力が十分ではなかった」と指摘しました。
そして、「そのような努力を行っても拒否感情を和らげることが期待できない場合は、長男の監護者を父親に変更する申し立てや、強制的な引き渡しをやめるよう求める訴えを起こすこともできる」として、まずは、長男を説得する努力をしてほしいと述べました。