https://news.yahoo.co.jp/articles/6d9a1681d09bf0c4e1d7e9fe5fe49ec8efc746ae?page=1
12/9(金) 8:47配信
女子SPA!
今、日本の家族を追い詰めているものとは何なのか。離婚、両親との絶縁を経て、長年連れ添ったパートナーと事実婚で子育てをする「女性装する東大教授」安冨歩氏、家族をテーマに取材を重ねてきたノンフィクション作家の大塚玲子氏が新しい家族の在り方について特別対談を行った。
「こうあるべし」という形にとらわれすぎ
安冨:まず言えるのは、多くの人が形骸化した従来の「家」に疲れている。古い日本では家はひとつの“経営体”。夫婦、子供、祖父母、親戚や家来まで多くの人がメンバーだった。やがて明治の近代化で家父長制の家制度がつくられ、戦後に廃止されたものの、いまだ慣習や意識が根強く、多くの矛盾をきたしています。
大塚:みんな「家や家族はこうあるべし」という“形”ばかり見すぎてる。だからこそ、そこから外れた人も苦しみ、形に合わせている人もがんじがらめになっています。
「家」という幻想に、みんなしがみついている
安冨:徴兵制や、高度成長によって崩壊した「家」という幻想に、みんなしがみついている。だから「結婚=我慢」と思い込み生活する人が多い。特に女性は雇用や賃金格差もあり、条件のいい相手と結婚しないと生きづらい。結果、体裁を保ち、家を支えるため、ガス抜き不倫に走る人も日本では多い。アメリカだとイヤならすぐ離婚しちゃいます。
大塚:結婚したら夫婦は同じ姓を名乗り、SEXも子育ても夫婦で行わなければならない。あまりに多くの営みが婚姻にパッケージされている。婚姻と同居を切り離す別居婚や、婚姻とSEXも切り離す一夫多妻・一妻多夫も合意のうえならそれでいい。バラ売りできたらもっといいのに。
婚姻制度って結構“キモい”制度
安冨:婚姻制度って「私はこの人とSEXします」と国に届ける結構“キモい”制度。なのにそれがないと、社会が崩壊すると信じる政治家も少なくない。政治が真剣に考えるべきは、婚姻制度がどれほど時代遅れで、社会的混乱を生む原因であるかを認識し、新しい制度を設計することです。
大塚:子供からすれば、親が我慢して生活する様子を目の当たりにする辛さもある。里親制度など「産みと育ての親は別でもいい」という価値観が広まれば、虐待など不幸な事件も減る。「ふつうの家族」と違う環境の子供は「かわいそう」と決めつけられがちですが、私が取材した「元子供たち」には、その決めつけにこそ腹を立てる人も多かった。
夫婦だけで子育てはそもそも無理な設計
安冨:私も2人の子供の子育て真っ最中ですが、たくさんの人手を借りてやっていますし、夫婦だけで子育ては、無理な設計だと痛感しています。
大塚:自分の子供でなくても子育てに関わりたいという大人も意外といるものです。
安冨:ただ現実問題、複数家族や他人と共同での子育てには、預かる側も万一事故があれば賠償責任を負うなど法的課題のあるのが難しいところ。
みんな、もっといい意味で“わがまま”でいい
大塚:なにより配慮すべきは、そこにいる子供の心情。今は親が離婚したら単独親権一択ですが、もし子供が望めば共同親権や3人以上の親権も可能にしてもいいのでは。逆に韓国では虐待親に子供が自ら「親子の縁」切りを可能にする法律も議論されている。
安冨:今は「進学、就職、結婚、出産、子育て」というライフコースが「ふつう」とされていますが、自分にとってなにが幸せな環境か、それぞれ自分で考えなくてはいけない。みんな、もっといい意味で“わがまま”でいい。
大塚:「みんながふつうであるべき」「家族は永遠であるべし」といった幻想から抜け出し、そのときどきで家族にとって最適な形を考えていけばいいですよね。
【安冨 歩(やすとみ あゆみ)氏】
東京大学教授、経済学者。京都大学経済学部卒業後、住友銀行勤務を経て、研究者の道へ。50歳から女性装を始める。著書に『ありのままの私』など
【大塚玲子氏】
ノンフィクション作家。主なテーマは「いろんな形の家族」と「PTA(学校と保護者)」。著書『ルポ 定形外家族 わたしの家は「ふつう」じゃない』など
<取材・文/週刊SPA!編集部>
女子SPA!