離婚後の親権 「共同」選択案と「単独」維持案を併記 法制審

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2022年11月15日 19時39分

離婚後の親権 「共同」選択案と「単独」維持案を併記 法制審

親が離婚したあとの子どもの養育をめぐる制度の見直しに向けて、国の法制審議会は中間試案をまとめ、「親権」の扱いについては、父母双方が持つ「共同親権」を選べる案と、「単独親権」を維持する案が併記されました。

国の法制審議会の部会が15日の会合でまとめた中間試案では、前提として「子どもの最善の利益を考慮するべきだ」としています。

そして、子どもの住む場所や財産管理など、重要な事柄を決める権限である「親権」の扱いについては、親が離婚したあと、▽父母双方が親権を持つ「共同親権」か、いずれか一方が持つ今の「単独親権」を選べる案と、▽「単独親権」を維持する案が併記されました。

また、今回の試案では、父母の協議が整わないまま離婚や別居状態になった場合に、養育費の不払いが想定されることなどから、一定額の養育費を支払う義務が発生する「法定養育費制度」を新設する案も明記されました。

さらに、離婚後に離れて暮らす親子が定期的に会う「面会交流」について、子どもの発達状況や会いたいかどうかの意思など、実施する際の判断基準を明確化する仕組みの検討などが示されました。

法制審議会の部会は、来月にも、国民から意見を募るパブリックコメントを始めたうえで、さらに検討を行い、答申としてまとめる方針です。

「共同親権」には賛否の声

離婚後も父親と母親の双方が「親権」を持つ「共同親権」については賛成と反対の声があり、中間試案では▽「共同親権」を導入して選べるようにする案のほか、▽現在の「単独親権」を維持する案も示されました。

「親権」は、子どもの利益のために身の回りの世話や教育をしたり、財産を管理したりする権限で、義務でもあるとされています。

日本では現在、離婚したあとの未成年の子どもの親権は、父か母のどちらか一方が持つ「単独親権」を採用していますが、「共同親権」が選べるようになると、住む場所や財産の管理など子どもに関わる重要な決定に双方の親が関われるようになります。

「共同親権」の導入に賛成する人たちからは「『単独親権』だと親権を持たない親が子育てに関わりづらく、子どもとの交流が絶たれがちになる。離婚したあとも父と母の双方が子どもの成長に関われるようになれば、養育により責任を持てるようになる」といった声が上がっています。

また、養育費や面会交流について「取り決めがあっても十分に実施されていない現状がうかがえる。共同親権の導入によって責任を明確にすることで、支払いや交流の状況も改善すると思う」などと主張しています。

一方、導入に反対する人たちは「『共同親権』にすると、子どもの養育をめぐって父と母の意見が対立した場合に合意に時間がかかり、子どもが板ばさみになりかねず、DV=ドメスティックバイオレンスや虐待などのおそれがあるケースでは、子どもの安全が守られない」などと主張しています。

養育費や面会交流については「現在の法律でも協議離婚の際には取り決めをすることが明記されていて、共同親権を導入しなくても実施できる」などとしています。

15日の中間試案の取りまとめにあたって、部会の委員24人のうち4人が「紛争解決や安全確保の支援に必要な司法の体制強化について十分な検討がされていない」などとして、「このような状況での取りまとめは、紛争の増加や予測できない影響が子どもなどにもたらされるおそれがある」とする意見書を連名で提出しました。

部会の委員 早大 棚村教授「子どもの利益につながる制度に」

家族法が専門で部会の委員の1人でもある早稲田大学の棚村政行教授は、今回の中間試案の特色について「『子どもの最善の利益を確保する』『父母は未成年の子を養育する責任がある』など、親子関係に関する基本的な原則を明確に示したことだ」と説明します。

また、意見の対立がある「共同親権」などについては、現状維持も含む選択肢を示したことや、DVや虐待などへの配慮を明確に打ち出したことなども特徴だとしています。

そのうえで、今後、パブリックコメントで国民から意見を募るにあたって「子どもの養育に親がどう関わるべきか、さまざまな立場から意見の対立があるかもしれないが、考え方の選択肢も提示したので、大人目線ではなく、子どもの幸せを守るためにどんな制度がいいか冷静に議論してほしい。皆さんからの意見を集約し、当事者や有識者からもヒアリングをしたうえで、子どもたちの利益や幸せにつながるようなよりよい制度の実現を目指したい」と話しています。

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