離婚したい「別居妻」に“毎月12万円の生活費”を支払い続けた「39歳元サラリーマン夫」のヤバい悲劇

9/22(木) 16:32配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/7ca97f732e23591a29035558ffaad4ef407a1aa1?page=1

現代ビジネス

ある日突然、妻が子どもを連れて「家出」した…

 夫婦は離婚すれば、言ってしまえば“赤の他人”です。しかし、親子は離婚しても親子ですし、夫が子の父親、妻が子の母親だということは変わりません。

そうした中で、今夏に共同親権が日本でも検討されたという報道がなされ、注目が集まりました。  

あくまで「子どものため」という視点にしぼって、離婚にともなう影響を最小限にとどめるのであれば、単独親権のように「突然、片親を失う」という事態を避けるべきなのは言うまでもありません。そうした中で、ここへきて共同親権が、つまりは、離婚した元夫と元妻が協力して子育てをすることが脚光を浴びているわけです。  

海外では一般的な制度なのに日本では導入が遅れたせいで、離婚の現場では数々の悲劇が繰り返されてきました。  

一例を挙げると、離婚しなければ共同親権のまま。しかし、夫は子どもだけでなく妻の生活費も払わなければなりません。一方で、離婚をすれば生活費は不要ですが、親権を失うというジレンマに悩まされる人は多いです。  

今回紹介する鈴木幹也さん(仮名)も、そんな一人です。コロナ禍で仕事を失い、メンタルも患って体調を崩していた中、ある日突然、妻が子どもを連れて実家に帰ってしまったのです。  

妻からは「さようなら」とLINEが届きましたが、いったいなぜそんなことになっているのか見当もつかず、頭を抱えて、筆者のもとへ相談にやってきたのです。

「愛情がなかったこと」の証し

 幹也さんは「予想もしていなかった」と言いますが、妻のそのような大それた行動には相応の準備が必要だったはずです。  

たとえば、小学校での転校の手続き、実家での両親の説得、そして役所での扶養の変更など……。筆者は「奥さんは突発的に動いていたわけではなく、前々から計画的に仕組んでいたのではないでしょうか」と幹也さんにたずねました。  

「よりによって僕が弱っているときに…。僕が何か悪いことでもしたのでしょうか」と幹也さんは言いますが、妻の離婚計画は幹也さんが倒れた後ではなく、倒れる前から練られていた可能性があります。 ———- <登場人物(相談時点。すべて仮名)> 夫:鈴木幹也(39歳。フリーター。年収156万円)☆今回の相談者 妻:鈴木京子(38歳。専業主婦) 長男:鈴木優(7歳)幹也と京子の子 ———-  

もし、妻が結婚生活を続けるつもりならば、たとえば、メンタルヘルスでの通院に付き添ったり、セカンドオピニオンをする相手を探し出したり、食事療法など別のサポート方法を試してみたりするはずでしょう。  

しかし、妻は家事や育児をいままで通りにやるだけだったそうです。料理、洗濯、掃除以外に看病という役割を増やそうとはしなかったのは「愛情がなかった」証でしょう。夫婦なら助け合うのが当然ですが、夫婦でなくなるのなら「助け合いの精神」は成立しません。

裁判所から届いた「封筒」

 その後、幹也さんのもとには裁判所から呼び出しの手紙が届いたそうです。封筒を開封すると、妻が離婚の調停を家庭裁判所へ申し立てたことが書かれていました。  

裁判所への申し立てから手紙の発送までは数日かかります。「このタイミングで届いたのは、奥さんが別居後ではなく同居中に申し立てを行ったのかもしれません」と筆者は補足しました。  同居から別居へ、既婚者から未婚者へ、親権者から非親権者へ――。  

「離婚」という二文字によって世界が一変することに幹也さんの頭はついていけず、「悪い夢でも見ているのではないか」と目が回るばかりでした。何事も初動が大事ですが、さすがのショックの大きさに、幹也さんは何も動けませんでした。  

警察署に「子どもが連れ去られたんです」と通報したり、小学校に「どこに転校したんですか」と確認したり、弁護士に「子どもを連れ戻してください」と依頼したり……打つ手は多々あったのですが、「とにかく大事にしたくなかったんです。妻と子が戻ってきやすいよう、なるべく穏便に済ませたかったので…」と幹也さんは振り返ります。

生活費、差し押さえ、住宅ローン…

 結局、幹也さんはほとんど何の準備をすることもなく裁判所へ出頭。裁判所では、調停委員と話をしても、細かい内容は耳に入らず、とにかく「別れたくないんです」の一点張りだったそう。  

そして、「何かの間違いだと思うんです。妻は悪い人に騙されているに違いない。少し頭が冷やしたら戻ってくるはずです」と必死に訴えたのです。  

別居中の生活費のことを「婚姻費用(=婚費)」といいます。  

幹也さんのケースではかろうじて離婚の成立は免れているものの、「籍を入れ続けるならば奥さん、お子さんを支えなければなりませんよ」という調停委員の一言により、幹也さんは毎月12万円の生活費を妻の口座に振り込むことを約束させられ、そして約束は裁判所で書面化されたのです。

 「約束を破った場合、奥さんは幹也さんの財産を差し押さえ、未払い分を回収できるんですよ」と筆者は解説しました。  

「もし生活費を渡さなかったら、彼女は僕に愛想をつかすでしょう。渡していれば、いずれ帰ってくる。そのときはそう信じていました」と幹也さんは当時の心境を吐露しますが、妻子が戻ってくる場所を残すため、自宅の住宅ローンとして毎月8万円も返済し続けました。

もう息子には会えないのか…

 一方、幹也さんの収入は休職中、傷病手当金として毎月28万円だけ。結局、幹也さんが職場へ復帰することは叶わずに退職。アルバイトを始めたのですが、手当ての支給は停止され、バイト代は3ヵ所を掛け持ちしても毎月わずか13万円。そのため、毎月10万円以上の赤字に転落しました。  

赤字は新卒で就職した会社の退職金で補填していたのですが、間もなく底をつき、どうしようもなくなっていました。  

「生活費を送っても、息子には一度も会えやしない…これじゃ無駄金じゃないですか」と幹也さんが嘆きますが、妻子が家出をしてから2年間。幹也さんは何十回も会わせて欲しいと頼んだそうです。  

しかし、妻は知らんぷりの連続。例えば、「今月はいろいろと忙しいから無理よ。コロナをうつされるのが怖いわ。優は会いたくないって言っているの」などなど…。挙句の果てには「ストーカーって警察に通報するわよ。しつこくされるとパニック障害になるわ!!」と激怒することもあったそうです。  

結局、幹也さんは息子さんの顔を見ることも、手をつなぐことも、言葉を交わすことも叶わなかったのです。

背に腹は代えられない

 まず幹也さんの頭を整理するため、筆者は彼の矛盾を指摘しました。「鈴木さんは二兎を追っているのではないですか。生活費を減らしたいけれど妻子とやり直したいというのは虫が良すぎるのではないでしょうか」と。  

もともと月12万円の生活費は妻への誠意として約束した金額。妻が幹也さんのことを見直し、離婚を思いとどまり、「そこまでするなら」と自宅へ戻ってきやすいようにするためです。  

もし生活費を減らしたら、妻は幹也さんに失望し、このまま離婚の手続を押し進めるでしょう。自宅へ戻ってくることは期待できません。  

つまり、生活費の減額と妻子との復縁は両立しません。どちらを選ぶのかを問いかけたのです。  

そうすると幹也さんは「背に腹はかえられません。無理なものは無理なので」と生活費の減額を選んだのですが、さらに話を続けます。「でも、2人との思い出が詰まった、この家だけは残したいんです。住宅ローンを返済していれば、いつ2人が戻ってきてもいい。僕が出迎える気持ちがあることが伝わりませんか」と。

 戻るつもりがない家のローンを払ったところで妻が感謝するとは思えませんが、幹也さんの気持ちが第一です。筆者は「鈴木さんがそう思われるのなら…」と言い添えたうえで、「奥さんの所得(課税)証明書をとってください」と頼みました。

生活費は「毎月1万円」

 夫婦ならば役所は夫が妻の、妻が夫の公的書類を発行してくれる場合があります。  婚姻費用を見直す場合、家庭裁判所が公表している婚姻費用算定表にお互いの年収を当てはめて計算しますが、所得証明書には昨年の所得が書かれています。  

幹也さんが妻の住所地の役所へ出向いたところ、証明書を入手でき、そこには「340万円」という数字が書かれていました。  

同居中、妻は専業主婦だったはず。手に職がない妻が求人の少ないコロナ禍で正社員並みの給料を得るのは現実的ではありません。幹也さんは言います。  

「向こうの親の会社だと思います。実家は建築業をやっているので」と。妻は父親の会社を手伝い、十分な収入を得ているにもかかわらず、幹也さんから月12万円の生活費をもらっていたわけです。  

実家暮らしなので家賃もかからず、かなり余裕がありそうですが、一方の幹也さんは赤字暮らし。明らかに不平等です。  

お互いの年収を算定表に当てはめると生活費は「毎月1万円」が妥当な金額でした。

妻は連帯保証人

 これらのことを踏まえ、幹也さんは1週間かけて妻宛てのメッセージをしたため、意を決してLINEの送信ボタンを押したのです。  

「京子と優がいなくなってから、もうすぐ2年ですね。僕は前の会社はクビになり、今はバイト暮らしです。全盛期と比べて年収は600万も減りました。僕がどのくらい大変なのかを察してください」と前置きした上で、「月12万を払うと10万の赤字です。(生活費は)1万が限界です」と頼み込んだのですが……。  やはりというべきか、妻は「親戚とか友達とか当たったの? 土下座して回ればいいでしょ」と逆上。借金をしてでも満額払えと言わんばかりだったのです。  

幹也さんは「月10万も貸してくれる人はいないよ」と断った上で「僕が破産したら京子も困るんじゃないか」と続けました。  

借金で借金を返済する自転車操業に陥り、最終的には返済不能に陥り、破産するのは目に見えています。生活費だけでなく住宅ローンも払えなくなるでしょう。妻はローンの連帯保証人です。銀行は妻から取り立てようとするでしょうが、住んでいない家のローンを負担させられるのは妻も耐えられないでしょう。

妻のLINEをブロックした

 さらに幹也さんは畳みかけました。

 「あんまり言いたくないけど…お父さんに援助してもらっているんだろう。結構、余裕があるんじゃないか?」と。

 妻はまさかそのことを幹也さんが知っているとは思わなかったのでしょう。

 不意打ちを食らった形で、妻も渋々生活費の減額を承諾したのです。「生活費をくれないなら、もう優と親子じゃないわ!」と言い捨てて…。  

さらに「正直、優に愛情を持ち続けているのは迷惑だから」と言い、息子さんの成長が気になって、せめてLINEでやり取りでもしたいと思っている幹也さんに八つ当たりをしたといいます。  

幹也さんは「今回、僕は頼み事をしている弱い立場だということは承知しているよ。もちろん、優に悪くは思われたくないけれど、どう伝えるのかは京子に任せます」と言い、妻のLINEをブロックしたのです。  

こういう目に遭うのは、すでに家庭が崩壊している場合で、うちは円満だから関係ない――。幹也さんの悲劇を目の当たりにしても、多くの人は「他人事」だと思うかもしれません。筆者もそう思っていました。幹也さん夫婦は関係が破綻していたのだ、と。

悲劇は誰にでも起こり得る

 しかし、幹也さんはいわゆるイクメン夫。例えば、息子さんが幼稚園へ通っているときは園へ送迎したり、喘息持ちの息子さんを病院へ連れて行ったり、毎週の宿題や夏休みの課題を手伝うことも。  

さらに会社を休んで小学校の授業参観や運動会、文化祭、そして引き渡し訓練や個人面談に参加したり、突然、呼び出されれば早退して駆けつけたりしたそうです。  

少なくとも幹也さんの目線では家庭は上手くいっていると思っていました。もちろん、妻の目線ではまた違う光景が広がっていたのでしょうが。  

つまり、同じような“悲劇”はどこの家庭でも起こりえる問題だと考えた方が良いでしょう。自分だけの目線で「大丈夫」と自信を持つのは危険だということは、肝に銘じておきましょう。  

さらに連載記事『離婚したい「38歳専業主婦」が、子連れで“計画逃亡”した…!  年収156万円夫が青ざめた「ヤバすぎる裏切り」の末路』では、誰にでも起こり得る“妻子の突然の家出”について見ていきましょう。

露木 幸彦(行政書士)

2年前