https://news.yahoo.co.jp/articles/f32237a06c25b5fddbcbd89bbe77e79cdf542a04?page=1
9/22(木) 7:32配信
その日、妻が子どもを連れて「家出」した…
今夏に法務省が「共同親権制度の導入を検討している」と報じられ、大きな注目を集めました。 具体的には未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合、父親と母親のどちらか一方が親権を持つ「単独親権」と、双方が親権を持つ「共同親権」のどちらかを選べるようになることが検討されたというのです。
現在の法律では選択の余地なく「単独親権」だけです。これは父親と母親のどちらかが必ず、親権を失うことを意味します。現実的に身の回りの世話、教育や躾を担うのは親権者だけになります。
一方の非親権者は毎月、養育費を負担するものの、子どもとの接点は「面会」に限られます。しかし、たとえば、一緒に食事や買い物、映画などを楽しむことが「育児参加」といえるでしょうか。
残念ながら、大半のケースでは子育てなどに参加する機会は与えられていないのが現状です。
筆者は行政書士・ファイナンシャルプランナーとして夫婦の悩み相談にのっていますが、中でも多いのがこうした親権をめぐる相談です。結局、今回は法務省で「共同親権」について先送りにされたようですが、いまの時期や夏休み明けに最も多いのは、「夏休み中、妻が子どもを連れて出ていき、実家へ戻り、夏休み明けは近くの学校へ転校し、登校してしまう」といった悲劇のパターンです。
夫が寝込んでいる間に「離婚しよう」と…
今回の相談者・鈴木幹也さん(39歳、仮名)もその1人です。「こんなことが許されるんでしょうか。僕が病気で寝込んでいる間に息子を連れ去り、実家に帰って、そのまま離婚しようだなんて…」と言いますが、一体、何があったのでしょうか。
———- <登場人物(相談時点。すべて仮名)> 夫:鈴木幹也(39歳。フリーター。年収156万円)☆今回の相談者 妻:鈴木京子(38歳。専業主婦) 長男:鈴木優(7歳)幹也と京子の子 ———-
2020年初頭から始まった新型コロナウイルスの騒動ですが、すでに3年以上が経過。コロナショックは多くの人々の人生を狂わせましたが、幹也さんもその一人です。
2020年の年収は500万円。「最も良かったとき(年収700万円)に比べ、約3割も減ったので生活は大変でした」と幹也さんは回顧しますが、当時は、専業主婦の妻と子どもを扶養していました。
幹也さんの職業は居酒屋チェーンのスーパーバイザー。しかし、政府からの自粛要請を受けて担当エリアの店舗は軒並み休業状態。当の幹也さんは自宅でのリモートワークを命じられ、外回りの仕事がなくなり、慣れない本部の仕事を手伝う日々になりました。
突然、涙が流れ、そして止まらなくなった…
「必ず定時で終わるので残業代はないし、店舗の売上への貢献がないのでインセンティブもないんです」(幹也さん)
活躍の場を失った幹也さんは退職を決意。2021年4月、今の生活を維持すべく、700万円の年収を見込める会社へ転職したのですが、「これが失敗でした」と幹也さんは声を落とします。
新天地で仕事を覚えようとする幹也さんに対して、同僚の先輩たちが嫌がらせをしてきたのです。「4ヵ月間、家族のためにただただ我慢するしかありませんでした」と幹也さんは涙ながらに言いますが、抱えきれないストレスに苛まれた幹也さんはまともに眠れる夜が減り、寝不足のまま出社し、仕事に集中できない日が増えて行ったそうです。
そんな矢先、自宅の書斎に1人でいるとき、突然、涙が流れ、そして止まらなくなったそう。まるで金縛りのような状態になり、「普通じゃない!」と悟った幹也さんは何件もの病院を訪ねたところ、診断結果は「適応障害」――。劣悪な職場で働き続け、精神的に限界に達し、治療が必要な状況に追い込まれていたわけです。
そして、幹也さんは総務部に診断書を提出し、休職することになりました。
妻の「計画的家出」
「あいつらがいなければ仕事を休むこともなかったし、他のみんなと良好な関係を続けることができたかもしれない。そう思うと、あいつらの顔は見たくないし、声も聞きたくないし、とにかく忘れたいですよ」
幹也さんは当時の心境をそう振り返りますが、休職から1ヵ月が経過しているにもかかわらず、これらの症状は回復するどころか、むしろ日増しに悪化するばかりでした。どこまで悪化するのか、いつまで続くのかも分からない絶望的な毎日を送っている矢先、幹也さんをさらなる衝撃を襲いました。
なんと妻子が姿をくらましたのです――。
「ただ僕は病気を早く治したい。その一心だったのに」と幹也さんは言いますが、当時は病気の影響で夜に眠れず、昼に眠るという昼夜逆転の生活に。「甲斐性がない夫は用なし」とばかりに、妻は幹也さんが寝入ったのを見計らって、必要な荷物を運び出していたのです。
「目覚めたとき、目に入ったのはリビングのテーブルに置かれた合鍵だけでした」と幹也さんは愕然とします。
「さようなら。現世ではお別れです」と…
家財や家具、家電はそのまま置かれていたものの、冷蔵庫に食材はなく、タンスに衣服はなく、子ども部屋にランドセルはなく、完全にもぬけの殻。そして妻から驚きのLINEが届いたのです。
「さようなら。もう限界です。現世ではお別れです」と――。
妻子の姿がないことに気付いた幹也さんは胃腸が締め付けられ、大量の胃酸が食道から逆流し、トイレに駆け込んで便器に顔をうずめたそうです。
しかし、こうした“連れ去りケース”はこのように突然のタイミングでやってくることが多いのが事実です。首謀者のほうは入念な準備をして“決行”する一方で、やられたほうは唖然としている間に、離婚に持ち込まれ、親権までもっていかれてしまうケースも少なくありません。
では、このようなケースに直面した時、どう動くのが得策なのでしょうか。離婚すべきか、それとも別居しながらでも時期を待つべきか、あるいは――。後編記事『離婚したい「別居妻」に“毎月12万円の生活費”を支払い続けた「39歳元サラリーマン夫」のヤバい悲劇』では、幹也さんのケースをもとにその“対処法”について見ていきましょう。
露木 幸彦(行政書士)