共同親権議論の中、政治学者「今後は簡単には決められなくなる」
2022年08月29日 06:00
- 女優の杏さんが、噂されていたフランスへの海外移住を正式発表
- 直近の週刊誌報道がきっかけで共同親権の賛否を議論するネット民が関心
- 動画では、渡仏後、元夫と子どもの交流について言及はなかったが…
女優の杏さんが28日、自らのYouTubeチャンネルでフランスへの移住を決めたことを明らかにした。
この日の発表は父で俳優の渡辺謙さんと初の共演が実現したことでも注目され、番組終盤、渡辺さんから「そろそろ行くんだよねフランス?」と水を向けられると、杏さんは「これからフランスに行くことになりまして。行ったり来たりじゃないけど、2つのおうちを持つみたいな」と応じた。3人の子どもと飼い犬と渡仏する意向だ。
週刊新潮の記事が物議
杏さんのフランス移住を巡っては、近年フランス語学習を始めたことなどから週刊誌などで度々報じられていたが、正式に発表したのはこの日が初めて。しかし、ネットでは門出を祝うファンが多数を占めた中で、一部で物議を醸したのが週刊新潮の17日発売号だった。
本誌発売時点ではネットであまり話題にはならなかったが、約1週間遅れでデイリー新潮で配信された当該記事では、杏さんが渡仏を決意した背景に、不倫で離婚した後もスキャンダルが重なった元夫の東出昌大さんの存在があると指摘。そこで匿名の芸能記者が「杏はいま、子供たちを月に1回くらい東出に会わせているようですが、できれば会わせたくないというのが彼女の本心です」などと述べたことが、折りしも共同親権導入の賛否が議論されているSNSの関心を引き寄せることになった。
離婚した20年8月には、杏さんと東出さんは連名で「今後は子供達の親として成長し、協力しあう関係を築いていきたいと思います」と表明していたが、その後、週刊誌や女性誌に慰謝料が有名俳優にしては多いとは言えない月額3万円であるなどと報じられたり、離婚後も東出さんが週刊誌を騒がせたことで月1回の面会も危うくなるのではないかという関係者談話が紹介されたりしていた。
こうした芸能人のプライベートを報じるゴシップ記事は、真相と異なることも多い。しかし、当事者が直接語ることもないまま、“ストーリー”が報道やネットを通じて拡散し、世間の心象を形成している。その結果、杏さんが前夫との子どもの接触機会を制限したいのではないかと受け取る人が増えつつある。
フランスに行く「皮肉」
杏さんはこの日の動画で、渡仏後の元夫と子どもの交流について言及はなかったが、ネットでは
単独親権だと勝手に海外移住できて、親子断絶できるんだよね。
と決めつける向きも。ただ、海外移住することで離婚時の取り決めと環境が激変することから、離婚後に子どもと会えなくなった経験を持つ人たちからは「(子連れでの渡仏について)東出さんの承諾を得たのだろうか」と懸念する声も出始めている。
ある演劇関係者は、東出さんの不倫について批判をしながらも、「同居親の一存で子供を遠距離に連れて行かれ、東出くんは事前取り決めで保証されてるはずの満足な面会交流が出来なくなる」とも懸念する。
さらには、東出さんとの承諾がない場合を見越し、駐日フランス大使館にビザ発給をしないようにメールで要請したという“猛者”も。さすがに、この行動には、単独親権維持を主張する人たちから「私怨で動きすぎ」と反発を呼んだだけでなく、共同親権の賛成派からも「やりすぎでは」との声も出た。このほか、「共同親権が基本で日本人母の子供の連れ去りが大々的に非難されてるフランスに行きたいというのは何だか皮肉めいている」との指摘も。
政治学者の竹中治堅・政策研究大学院大学教授はツイッターで「民法の家族法部分が抜本改正必至で日本も共同親権に移行する状況。今後はこういうことを一方が簡単には決められなくなるだろう」と述べ、離婚後に片親が子どもを連れての海外移住に手続き上のハードルが上がるとの見方を示した。
折りしも共同親権の導入を巡って、法務省の法制審議会と民間の法制審議会それぞれの案を検討してきた自民党法務部会が、法務省側の案を先送りする異例の対応をして注目を集めている。関係者によると、自民党の新体制が固まり、安倍元首相の国葬を終えた後の10月以降、新しい法務部会長の下で引き続き制度の審議が続く見通しだ。
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