あびる優で注目される「連れ去り」は家族法制見直しでなくなるか 「共同親権導入」を訴える自民党議員に聞いた

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8/23(火) 11:33配信

デイリー新潮

「子供を連れ去られた」「DVを受けていた」。週刊誌の“代理戦争”にまで発展したタレント・あびる優と元夫との親権争い。双方に言い分があるようだが、忘れてはならないのは父母の争いで片方の親との仲を引き裂かれてしまう子供である。日本でこのような夫婦間トラブルが多発する“元凶”と言われているのが離婚後の「単独親権制度」だ。いま親権制度の見直しが、法制審議会(法相の諮問機関)の家族法制部会で審議されている。自民党内でも法務部会の中にプロジェクトチーム(PT)が発足し議論が活発化。「共同親権・共同監護は譲れない」と語る自民党議員二人に話を聞いた。  ***

子供の利益を最優先に考えるべき

「『共同親権よりもまず養育費だ』という声も確かにあります。この問題について調べてみると、10人いれば10人それぞれのケースがあって話がまとまりにくいのです。だからこそ、私たちは原理原則論で行くべきだというスタンスで、『共同親権・共同監護』で民法改正を進めるべきという提言書をまとめたところです。法律は家族を幸せにするためのものであり、家族を引き裂いてはいけない。子供の利益を最優先に考えるべきだという考えが根底にあります」  

こう語るのは、前自民党法務部会長の山田美樹衆議院議員だ。  

日本の民法では、離婚した場合はどちらか一方かが親権を持つ「単独親権制度」が採られている。あびるのケースでも離婚後に一度、親権が元夫側に渡ったものの、あびるが親権者変更を申し立てる争いに発展した。そもそも離婚後も共同で親権を持つ制度であれば、このような争いが起きづらくなるという考え方が増え始めてきているのだ。  

自身も離婚経験がある谷川とむ衆議院議員もこう訴える。 「日本では協議離婚が約9割です。つまり、口約束で子供の養育方針が決められてしまっている。だから、事後的に養育費が支払われないなどの問題が出てきてしまうのです。あらかじめ離婚後も『共同親権・共同監護』と決めたうえで、離婚時に『共同養育計画』を作成し、養育費は月々いくら、親子交流を月2回などと申し合わせる仕組みを作るべき。我々の案では『離婚後養育講座』を受講することも盛り込んであります」

民間法制審も「共同親権導入」を提言

 諸外国で単独親権制度を採り入れているのは、日本、インド、トルコくらいである。山田氏は「グローバルスタンダートにならうべきだ」とも訴える。 「国際社会では、国際結婚した日本人による離婚後の子の連れ去りが起きていると、長らく日本は批判を浴びてきました。先日、凶弾に倒れた安倍晋三先生も外交に力を入れてきたからこそ、この問題に対して前向きでした。PT内でも、『慰安婦問題などと違ってこの問題だけは反論できない』という声も出ています」  

自民党PTでは、こうした議論を経て「離婚後共同親権(監護権を含む)制度を導入すべき」などの提案を柱とする5項目の提言をまとめ、6月21日に古川禎久法務大臣(当時)に申し入れを行った。  

この問題をめぐっては民間サイドでも動いている。日本テレビの人気番組「行列のできる相談所」でおなじみの北村晴男弁護士(66)が部会長を務める「民間法制審議会家族法制部会」が4月に結成され、共同親権導入を求める独自試案を5月末に高市早苗・自民党政調会長(当時)に提出した。自民党PTの提言書も民間法制審の提言も参考に取り入れた上で作成されたという。

骨抜き案

 だが、このまま「共同親権・共同監護」を盛り込んだ法案作成へと進んでいくかと思いきや、相反する動きも出ている。法制審が7月にまとめた「中間試案のたたき台」が、自民党の提言書とはまったく違う内容のものだったのだ。  

たたき台では、「乙案」として「単独親権」を残す案も記載されている。共同親権を採り入れる「甲案」においても、親権を選択制にする案などと記載。さらに、親権と監護者を切り離して、親権は双方にあれど監護者は単独とするなどの案が、α案からγ案といったかたちで盛り込まれている。実質的に単独親権制度と変わらない“骨抜き案”になっているのだ。山田氏はこう首を傾げる。

「審議会というのは、法制審に限らずいろいろな考え方の識者を集めて開かれていますのでこういう形にはなってしまったのだと思います。法制審のたたき台案のなかには、父母の離婚時に父母の協議のみで一方を子の単独親権者に認めたりすることもできてしまう案もあります。婚姻中の親権剥奪事由とは異なる事由で本人の意思に反して裁判所が親権を剥奪してしまう案もある。そうではなくて、原則原理で『共同親権・共同監護』というのが私たちの考えです」

法改正で「連れ去り」は防止できるのか

 法制審では中間試案を取りまとめた後、パブリックコメントを募集し、年内にも答申案を決定する。その内容が自民党案と違う場合はどうなるのか。 「原理原則は変えないというのが私たちの方針です。法制審案がもし骨抜きになってしまったとしても、それが与党を通ることはありえません。」(山田氏)  

もし自民党が提言するような法案に改正され、「共同親権・共同監護」が当たり前の社会になると「連れ去り」はなくなるのだろうか。谷川はこう力説する。

「連れ去られたとしても、親権も監護権もこちら側にあると主張できるようになれば、話し合いが避けられなくなると思います。もちろん、これからもDVで命からがら逃げ出したような人たちは今後もケアし続けないとなりません。けれど、それは違う法律でちゃんと対応していけば良いのです」  

夫婦間ですれ違いが生じ、やむなく別れを選択するのは致し方ないことであろう。だが、子供にとっては父も母も一人しかいない。離婚の狭間で子供が苦しむことがない世の中が実現するよう、一刻も早い制度改正が望まれる。 デイリー新潮編集部

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