共同親権の行方占う「学校園国賠」訴訟リポート
2022年08月13日 06:01
ノンフィクション作家/フリーライター
- 子どもに会えない別居親が、学校行事に参加出来ないのは違法と訴え市を提訴
- 「子どもの成長を見届ける機会を奪われた」提訴に至った別居親の思いは
- 原告の弁護士が説明する訴訟の意義と争点、共同親権の審議への影響は?
家から追い出されたり、子どもらを連れ去れたりして、わが子に会えていない3人の別居親が8月8日、学校行事に参加出来ないのは違法などとして、埼玉県内3市を相手取り、55万円の支払いなどを求める訴訟をさいたま地裁に起こした。
埼玉県の3市を相手取って訴えたのは、彼ら原告3人の子どもたち(上は中1、下は保育園の年長児)が県内3市の学校や保育園といった施設に通っているからだ。この訴訟は「学校園国賠」と呼ばれている。
県内3市に対しての提訴
訴えた親たちはこの日、さいたま地裁で記者会見。原告を代表して、鈴木こま恵さん(47)が思いを吐露した。
子どもたちは一生に一度の大きな日を、大事な日を母親から祝ってもらうことができませんでした。大事な日にお母さんが来てくれなかったと、子どもの心に大きな傷を残したと思います。また私からしても、わが子の門出に立ち会うことができず、親にとっては最大の喜びである子どもの成長を見届ける機会を奪われたことは、何よりも悲しいことであり、許しがたいことです。
彼女は中1の息子と小2の娘に約3年間、会えていない。当然、入学式や卒業式にも出席できていない。
教育委員会に学校の情報開示請求をしたところ、『夫婦の葛藤が高いと、子どもが学校に来られなくなる恐れがあるから』という理由で、拒否されました。
筆者自身、子どもと別れて暮らしている。小学校の入学式には、元の連れ合いから当初、出席を拒否された。しかし懇願した結果、何とか出席は認めてもらった。子どもの人生の門出を目撃し、祝ってあげられたことは、私自身の大きな喜びとなったし、子どもにとっても、嬉しい出来事だったのではないだろうか。少なくとも、自分を支えてくれる人が母親だけでないということを認識したはずだ。
https://googleads.g.doubleclick.net/pagead/ads?client=ca-pub-1179437361663736&output=html&h=280&adk=2057883115&adf=2234036399&pi=t.aa~a.1707276027~i.17~rp.4&w=680&fwrn=4&fwrnh=100&lmt=1660424507&num_ads=1&rafmt=1&armr=3&sem=mc&pwprc=1935530715&psa=1&ad_type=text_image&format=680×280&url=https%3A%2F%2Fsakisiru.jp%2F34009&fwr=0&pra=3&rh=170&rw=680&rpe=1&resp_fmts=3&wgl=1&fa=27&dt=1660514719089&bpp=4&bdt=2559&idt=-M&shv=r20220810&mjsv=m202208110101&ptt=9&saldr=aa&abxe=1&cookie=ID%3D575b7652e74c2b9f-220351109ad50063%3AT%3D1660514717%3ART%3D1660514717%3AS%3DALNI_MZdjsKxdfD6gZF1ta9BkdfoPlQT_A&gpic=UID%3D00000673d7d24146%3AT%3D1654671767%3ART%3D1660514717%3AS%3DALNI_MbaVlBM_iEaVGTQ729ilxjs6KteRA&prev_fmts=0x0%2C720x432%2C300x600&nras=2&correlator=6627831219493&frm=20&pv=1&ga_vid=1747731211.1625697338&ga_sid=1660514718&ga_hid=1971057564&ga_fc=1&u_tz=540&u_his=1&u_h=1080&u_w=1920&u_ah=1040&u_aw=1920&u_cd=24&u_sd=1&adx=334&ady=2178&biw=1687&bih=955&scr_x=0&scr_y=34&eid=44759876%2C44759927%2C44759837%2C31068874%2C31068937%2C44764002&oid=2&pvsid=2791812005496915&tmod=264048063&nvt=1&ref=https%3A%2F%2Ft.co%2F&eae=0&fc=1408&brdim=-8%2C-8%2C-8%2C-8%2C1920%2C0%2C1936%2C1056%2C1704%2C955&vis=1&rsz=%7C%7Cs%7C&abl=NS&fu=128&bc=31&ifi=5&uci=a!5&btvi=2&fsb=1&xpc=qM2AaPPbTw&p=https%3A//sakisiru.jp&dtd=18
鈴木こま恵さんたち3人の原告が、門出を祝う機会を持てなかった悲しさや悔しさは、同じく未成年を子を持つ親として痛いほど理解ができる。
裁判の代理人、大村珠代氏は言う。
私は日々、弁護士として別居や離婚によって、離れて暮らす親と子どもとの交流問題に接して子どもを連れ去られた親は、その瞬間から、親として社会から接してもらえなくなる――そう強く感じています。保育園、学校からは「同居親から同意がないから、保育園・学校に来ないでください。子どもに関する情報も提供できません」と言われます。
別居という社会的事実だけで、別居親に子どもの情報提供や教育参加を認めない保育園や学校の取り扱いは別居親の差別にほかならないと思います。
訴訟の意義、そして争点は?
この学校園国賠は何を訴えているのか。代理人の作花知志弁護士は言う。
先ほど原告の方がおっしゃいましたけれども、学校行事に親御さんが参加するということは、子どもさんにとってですね、親御さんの愛情や自分への関心を感じることができて、非常に成長にとって大きな効果があると思われるわけであります。
逆を言えば、母親が学校に一切来てくれないというときのお子さんの失望感というのがどのようなものであろうというのは容易に想像できるところであります。このような、事態がこの埼玉県の中で3件発生しているということで、今回は3名の原告の方が提訴を行ったということであります。
争点は、憲法14条1項(法の下の平等)と憲法24条2項(個人の尊厳と両性の平等)である。
同居している親御さんの意向を優先して勉強している親御さんを学校への行事参加などから全て排除するということに、果たして合理的な理由があるのか。その有無を被告である行政側が主張・立証しないといけません。主張・立証ができないとなれば、憲法14条1項(法の下の平等)に違反する違法行為であります。
本件違法行為が、個人の尊厳と両性の本質的平等に即応して合理的と認められない差別的取扱いを原告らに行ったことは明白であり、それらは憲法24条2項(個人の尊厳と両性の平等)に違反する違法行為であります。
学校や保育園の行事参加から排除されたり、情報の提供を拒まれたりしたことで、(法の下の平等)や(個人の尊厳と両性の平等)に違反していると訴えているのだ。
法制審議会 vs. 民間法制審に影響
この国賠にはもうひとつポイントがある。SAKISIRUで先日、筆者が安倍元首相が共同親権問題で密かに布石を打っていた秘話を紹介した連載でも指摘したが(連載の1回目はこちら)、現在、法制審議会で検討されている離婚後共同親権・共同養育についての法律法改正への影響である。
事実上の選択的共同親権をうたっているが、実質的には、現状維持案である法務省案。もう一つは、離婚後共同親権・共同養育の法改正を行うべきであるという自民党の法務部会の案である。
作花知志弁護士は言う。
子どもさんからするとですね、両親が離婚するかどうかっていうのは、子どもさんにとっては自分の意志とか努力にとってどうしようもない出来事なんです。で、それにも関わらず法律で、現在は親が離婚したら、一方の親責任をなくして、1人の単独親権にしてしまう。それは子どもさんチルドレンファーストの思想と言うんですけれども、子どもの利益そのものに反してるんではないかという指摘がされるようになりまして、現在、法政審議会や自民党が法改正を検討しているということであります。
そうするとこの今回、提訴に至った3名の原告の方の案件もですね、おそらく向かうべきはもう明らかだと私は思うわけであります。
今までの同居している親御さんの意向だけを優先して別居親を排除するという行政の運用は、明白にチルドレンファーストの思想に反していると思います。
今後の離婚後共同親権の時代を踏まえると、ぜひ裁判所には、法制審議会などの法改正を先に出すようなことをしてほしい。これは両親の平等な学校参加こそが、チルドレンファーストの理念に適してるんだという判断をしていただきたいと担当している弁護士としては思っております」
鈴木こま恵さんは続ける。
学校園国賠訴訟で、子どものためにも別居親差別が違法行為であると認めてもらい、別居親差別を終わらせたいと考えています。また、学校園国賠訴訟で原告が勝訴すれば、全国の学校や役所でも別居親差別が是正され、別居親も平等な扱いを受けることができると考えております。
別居親が差別されないために、この国賠に勝訴する必要がある。
Powered by popIn
ノンフィクション作家/フリーライター