社説[離婚後の親権]子どもの権利を第一に

国家による家庭介入が子どもの利益だと勘違いしている古典的な議論。

https://news.yahoo.co.jp/articles/15222aac9446e5d306c9602f1f018409fcce8d1b

7/26(火) 7:02配信

沖縄タイムス

 親権は子どもを養育し権利を守る親の責務である。離婚後の親権は、子どもの権利を優先に考えたい。

 家族法制の見直しに関する議論がヤマ場を迎えている。法制審議会(法制審)の部会は離婚後の親権について、現行の「単独親権」維持と、新たに「共同親権」を導入する2案を併記する中間試案のたたき台を作成した。

 共同親権を導入する場合は、「原則は共同で、例外として単独」案と、「原則は単独で、例外として共同」案も提示した。

 中間試案は8月末にまとめる予定だが、単独派と共同派の意見の隔たりは大きい。方向性は示されないままパブリックコメントで国民の意見を募ることになりそうだ。子どもの権利に関わる重要な見直しで、慎重に議論を積み重ねる必要がある。

 今の民法では、婚姻中は両親が子の親権を持つが、離婚後は一方に決めなければならない。離婚の増加に伴い共同親権を求める声が増えている。

 2020年の離婚は約19万組で、うち約11万組に未成年の子どもがいた。一方、離婚時の面会交流の取り決めは約1万1千件にとどまり、親権を持たない親の多くが、子どもと交流していない。

 親権を持たないことは養育費の支払いにも影響していると指摘されている。養育費を受け取る母子家庭は16年度わずか24%だ。

 民法では、子どもの福祉を基準とし親権者を決定することが定められている。親権制度の見直しも、子どもにとって最善の方向性を示すことが重要だ。

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 海外では共同親権を認める国が多い。欧州連合(EU)欧州議会は、国際結婚が破綻した後、単独親権を主張する日本人配偶者による「子どもの連れ去り」を問題視している。

 親権の考え方を巡っては、ドイツでは1979年に「親の配慮」という用語が導入された。イギリスでは89年に「親責任」という概念になった。欧州では、子どもの権利を守るためのものへと変化している。

 一方、日本では今も、親の権利であるかのような意識が残る。

 法制審の部会は今回、親子関係に関する基本的な規律として「父母双方が子を養育する責務を負う」「子の最善の利益を考慮しなければならない」ことを挙げた。親権制度を考える際の原則である。

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 離婚した後も、両親が共に子育てに責任を持てば経済的に安定し、子どもの利益につながるとの考えは自然だ。

 一方で、ドメスティックバイオレンス(DV)や児童虐待などがある場合は、被害が継続、拡大したり、子どもに関わる重要な決定が滞ったりするという懸念もある。

 離婚は子どもに大きな影響を与える。

 当事者任せにせず、両親が抱える事情や子どもの意向によって適切な親権の在り方が選べるなど、それぞれの家庭の実態に即した対応が可能になるような制度設計を実現したい。

2年前