海外でも大きく報じられた異例の離婚訴訟で判決 ネットでは誹謗中傷も、妻は「怒りと恐怖を感じる」

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7/8(金) 15:55配信

弁護士ドットコムニュース

東京家裁( Caito / PIXTA)

日本人の妻とフランス人の夫との離婚訴訟で、東京家裁は7月7日、親権者を妻とし、離婚を認める判断を示した。別居から約4年、提訴から約3年間が経過していた。この間、夫は「子どもを誘拐された」などと主張し、2021年夏には都内でハンストを実施するなどし、国内外のメディアで報じられていた。

判決後、被告である夫は「日本は、国際的に保障された子どもの権利に敬意を払っていない」などと述べ、控訴の意向を示した。

原告となった妻は「裁判で勝訴しても、(夫が)国を巻き込んでメディアなどで事実と異なる主張をしてきた事実、それによってどれだけ恐怖を味わったかに変わりはなく、悔しさが残ります」と話した。

この夫婦の離婚をめぐっては、一般の夫婦の離婚訴訟では異例とも言える報道が国外でもなされ、ネットでは妻や子の実名や写真が広がり、誹謗中傷も書き込まれる事態となっている。

●裁判の争点、判決は

夫婦は2009年に婚姻し、長男、長女の二児に恵まれた。約4年前、妻が二児を連れて別居を始め、その後の監護者指定審判でも妻の監護権は認められている。

妻が原告となり、離婚を求めた今回の裁判。離婚、長男と長女の親権者、慰謝料なども争点となった。裁判所は次のように判断を示した。

・離婚:「原告と被告を離婚する」

「原告と被告は、同居中、考え方の相違や性格の不一致から互いに不満や苛立ちを募らせ、遂には婚姻関係が破綻して別居に至ったものと認められる。(中略)原被告間には、民法770条1項5号の離婚事由が認められる」

「原告が、(被告側が主張するように)DVシェルターのインタビューを通じて被告から原告に対するDVがあったという証拠を捏造しようとした可能性が高いとは認められない。(中略)原告に専ら又は主として婚姻関係が破綻した原因があるとはいえないから、本件離婚が有責配偶者からの請求として許されないということはできない」

・長男、長女の親権者:「いずれも母である原告と定める」

「フランスの裁判所又は判事が、『監督責任を持つ者からの子供の略奪及びフランス国外での拘束』などの罪状で原告に対する逮捕状を発布したことが認められる。しかしながら、口頭弁論終結時において、原告が逮捕されている事実は認められず、(中略)原告が現に子らを養育監護し、子らの監護状況について特段の問題がみられないことからすれば、上記逮捕状が発布されているとの一事をもって、直ちに原告が子らの親権者として不適格であるということはできない」

「原告は安全確保に対する懸念を理由に被告と子らとの面会交流に消極的な意向であるものの、子らは被告に対して否定的な感情を示すことはなかったというのであるから、原告が被告と子らの面会交流を妨げていることは問題であるといわざるを得ない。しかしながら、共同親権を認めていない現行法の下では、この点は、本件訴訟とは別に、原告と被告が協議をし、協議が整わないときには、調停及び審判の手続きを経るなどして、子らの福祉に適うところを慎重に模索して、これを実現していくのが相当というべきであって、原告が被告と子らとの面会交流を拒み、他方、被告が子らの親権者に指定された場合には年間140日以上の原告と子らとの交流を約束しているということから、直ちに、被告が原告よりも子らの親権者として適格であるということはできない」

・慰謝料:「原告の請求を棄却する」

「原告と被告は、同居中、考え方の相違や性格の不一致から互いに不満や苛立ちを募らせ、遂には別居に至ったのであり、離婚の原因が、被告のみにあるとは認められない」

「原告と被告は、別居の時点において互いに強固な離婚意思を有しており、原被告間の婚姻関係は既に破綻していたと認めるのが相当である。そうすると、原告が主張している被告が別居後にしたとされる種々の行動は、離婚慰謝料の発生事由とはならない」

この他、養育費、財産分与、年金分割について夫に支払いを命じた。

●双方の代理人の見解は

夫側の上野晃弁護士は「裁判所の判断は腹立たしい。我々にもわからないが、外国の人には余計にわからないだろう。裁判所の判断は『すでにあちらで暮らしており、特に暮らしぶりに問題がない』というものだった。しかし、その前提にあるのは子の連れ去りに問題がないとしたもの。その判断がおかしい」と指摘した。

また「妻はDVがあったがゆえに子どもを連れていかなければいけなかったと主張し、夫はDV はなく、離婚訴訟中に不意打ち的に連れ去られたという主張をしていた。ここについて裁判所はDVの事実を認めなかったにもかかわらず、この連れ去りに問題があるかどうか評価もせずに、すくすく育っているから問題ないと言うのはおかしい」。

「法制審議会や自民党内で共同親権、共同養育について議論されている中、裁判所は議論しない判断を示した」として、法制度の改正を呼びかけていく方針だと言う。

一方、妻側の露木肇子弁護士も「非常に納得しがたい判決だ」とする。

妻が主張していたDVについて、認められなかった点について「裁判所は、暴行の有無について(証拠となった)写真の提出が遅かったことを理由にあげて否定している」。

精神的暴力についても、「妻は経済的な不均衡から萎縮して支配関係があったのにもかかわらず、たまに言い返したことを持って対等な関係にあったとしてしまう。そのため口論として扱い、精神的なDV については認めなかった。裁判官の認識不足、理解不足であり、裁判官がいかにDVを理解していないかがわかる」。

さらに「離婚慰謝料が認められなかったのも、裁判所はその対象となる被告の行為態様を別居時までとしたから。別居後のそれも問題すべきだった。メディアを利用したり、ハンストを強行したり、逮捕状をとったりして、彼女を支配しようとした」。「婚姻費用はこれまで被告から支払われたことがないこと、給与差押えをしたら会社を辞めたこと、家の持分を一方的に売却して差押えを逃れたこと、これらは経済的DVにあたる」として、別居後もDV は継続していたのだと指摘した。

また「海外では多数の大手メディアが被告(夫)の主張をそのまま取り上げて日本の離婚制度を批判する報道を繰り返しました。(中略)その際、被告の氏名を公開するのみならず、原告や子の名前や、子の写真も公になっているものもありました」と問題視する。

「国内外のプライバシー無視の報道及びネット上の誹謗中傷により、(原告の妻は)莫大な精神的苦痛を受け続けてきました」として、冷静な報道を呼びかけた。

●夫は「子どもの権利に敬意を払っていない」

判決のあった7日、夫は都内で会見を開き、「日本は国際的に保障された子どもの権利に敬意を払っていない」などと述べた。

親権や監護権を持たなくても、離れて暮らす親には協議や調停により面会交流が認められている。夫側は面会交流の申し立てをしていない。

この理由は「私の子どもは誘拐されたのであって、会わせてくださいという問題ではない。私は今日に至るまで、親権という権利を有している」として、今後も面会交流の申し立てはしない意向だという。

●妻は「夫の主張に怒りと恐怖を感じてきました」

判決前、妻は弁護士ドットコムニュースの取材に応じ、次のように話した。

「本来であればプライベートな出来事が、国内外のメディアで事実と異なる情報が大きく報じられ、名誉が傷つけられたり、子どものプライバシーが侵害されたりするようになるとは思いませんでした。私自身が国内外で『誘拐犯』と言われ、ありもしない虐待をしていると発信されることにこの間、怒りと恐怖を感じてきました。

そもそも離婚は、私から言い出したことではありませんでした。別居する数年前から日常生活の中で、彼が『離婚だ』ということは度々ありましたが、私が弁護士に依頼した時も最初は『相手から離婚と言われているけど、どうしたらいいのか。話し合いをしなければいけないから力になってほしい』という心情でした。

代理人を立ててからは、どういう形で子どもと会わせていこうか、という話も出ていました。しかし彼は『離婚しない』と意向が変わり、『僕には子どもを育てる権利があるから、面会交流の申し立てもしない』などと主張するばかりで、話し合いは進みません。彼が結局のところ、離婚したいのか、子どもと会いたくないのか。彼がどうしたいのかわからず、私は混乱していきました。

さらに、メディアやインターネット、SNS上では『妻が虐待した、誘拐した』などと事実と異なる彼の一方的な主張が繰り返され、子どもの写真を公開されるなど、著しいプライバシー侵害もありました。

こうした彼の対応をみて、この人とは婚姻関係を続けることはできないと離婚を決意し、裁判所の面会交流調停を通さずに面会することは子どもにとっても危険だと考えるようになったのです。その後もメディアで、彼は『子どもと会えない』と言っていたのに、実際には彼からの面会交流の申し立てはありませんでした。

なお、彼が申し立てた『子の監護者指定審判』の高裁決定では『未成年者らを監護養育する上でより重要な役割を担っていたと評価し得る相手方(妻)が、抗告人(夫)と別居するにあたり、年少の未成年者らを伴い家を出たことをもって、違法な子の連れ去りに当たるとはいえない』と判断されています。

その他にも、彼がこれまでメディアなどで行ってきた主張には誤りばかりです。彼が私に対して行った暴力(DV)、婚姻費用(養育費)を差押えされるまで支払わなかったこと、差押えられるとすぐに退職し、不動産を売ったことなど、自分にとって都合の悪いことには一切、触れていません」

また、判決後には次のようにコメントした。

「この期間、幼い子どもたちの前では『毎日ハッピーで楽しく』過ごすことを心がけて、子どもに不安を感じさせないようにしてきました。裁判で勝訴しても、彼が国を巻き込んで事実と異なる主張をしてきた事実、それによってどれだけ恐怖を味わったかに変わりはなく、悔しさが残ります。

このケースでDVが認められないのであれば、認められるケースは、極めて限定的だろうと思います。今、DVケースを除いて共同親権を導入するなどと議論されていますが、別居後も子どもを巻き込んだDVを繰り返す相手と共同親権による子育てができるとは到底思えません」

弁護士ドットコムニュース編集部

5か月前