交代監護を主張する弁護士の意見。
「日本で、男性や企業が困るようなことを法定化するとは思えないので、強制的な共同監護、つまり1週間ごとの交代監護を強制するはずはありません」
https://note.com/kyodo_shinpai/n/n4a300d18c033
共同親権の問題について正しく知ってもらいたい弁護士の会
2022年6月28日 20:24
今の「共同親権」になぜ反対するか?
「共同親権」の実質が、別居親に子どもに関する重要な決定について拒否・介入権を与えることだから
良識派は、別れても一緒に子育てっていいよなーって思う、そこに対して反対派はきちんと説明できていないと言われるので、ちゃんと書いてみたいと思います。
まず、結婚式で「愛の共同作業」とか言われるように、結婚とは共同で生活を営むことで、子どもが生まれれば共同で子育てをすることで、それができなくなるから離婚するわけです。
日本は、女性の経済力が諸外国と比べて著しく低いので、DVのような虐待も生まれやすいし、だからと言って別居や離婚に踏み切れない人が多く(スティグマもゼロじゃないし)、妻がそこそこの経済力があるというケースを除いては、とことん破綻してから(妻の立場からすると酷い虐待状態になってから)離別ということになることが多いです。
そこまでいかないケースにおいては、今でも、離婚後もお子さんと定期的に会えたり、何か相談できたりといういわゆる任意の共同親権・共同養育ができていることが多いです(私のような面会に熱心な弁護士が介入して、母子に逃げられてしまった夫を共同親権!という権利主張に向かわせずに、DVを反省ということになれば、定期的に会えるようになったりもします)。つまり、今の民法でも、フランスとかであるような1週間ごとの交代監護というようなことも可能です。
(なお、日本の家事育児責任は女性に偏重しているため、主たる監護者は9割ぐらいが母親のため、同居親も母親が9割程度。以下それを前提に話します)
ただ、今の民法では、元妻や子が嫌だと言っている時に、そのような共同監護とか、学校の進学について元夫の承諾を得るとかの共同親権行使はできません。今できるのは、裁判所に申し立てれば、妻へのD Vの有無や時には子どもの拒否にもかかわらず、子への身体的暴力の恐れがなければ、1ヶ月1回程度の面会です。
今回の民法の改正の実態はまだよくわかりませんが、日本で、男性や企業が困るようなことを法定化するとは思えないので、強制的な共同監護、つまり1週間ごとの交代監護を強制するはずはありません(フランスですら交代監護は1割程度です)。そうすると、結局、共同親権の法定化なのであろうと思われます。これは、別居父親が、子どもが私立中学に進学したいとか、塾や、スキー合宿、海外の修学旅行に行きたいとか、手術や歯列矯正などをしたいということになった時に、それを拒否する権利を与えることです。いいじゃないの?と思う方は、家庭や育児についての知見が足りないと反省いただきたいと思います。子どものことは、子どもの近くにいる人が一番よくわかるものです。父親の知見も活かせばいいじゃないかということについては、次の段落で説明したいと思います。
別居父はどういう人が多いか。これを読んで下さる方は良識ある方だと思いますが、男性はご自分が離婚したら子どもに養育費、ちゃんと払いますよね?そんなもの請求されなくたって、自分より収入が低い妻が可愛い子どもと別居するというのですから、お金いるだろ、使ってよって渡しますよね?しかし、実際は、8割弱が養育費をもらっていません。今の日本、こんなに教育費がかかるのに、そして、日本は子を持つ母親の賃金差がOECD加盟国中最も多い国なのに、その結果、子どもを持つ母子家庭の半分は貧困なのに。家庭裁判所に申し立てをすれば、自営業とか現金労働者でなければ差押えをして受けとることはできるのですが、アンケートの結果は、相手と関わり合いたくない、どうせ払ってもらえないという感じです。相当数が、同居中から生活費を払わない・払いしぶるというDVがあり、また、払ってもらえそうな相手でも、それを理由に、離婚後もあれこれ嫌がらせが続くのは勘弁してくれということだと思います。離婚家庭の8割ぐらいが、父が異常か、母が異常なほど父を嫌っているかということです。
これを前提にすれば、子どもが塾に行くとか、私立の学校に進学するとかの際に、父の承諾が要るとすれば、子どもが本当に可哀想な状態になります。今は、母親が決めて進学して、調停とかで半分持って欲しいなんてお願いするのですが、大体は断られますし、持ってもらえても一部です。私は、共同親権だったら、あのお子さんも、あのお子さんも、この学校には行けてない、この大学には進学できていない・・・・たくさんの依頼者さんのお子さんたちが目に浮かびます。あるいは、進学にOKする代わりに費用は一切請求しないと念書を書けとか、それはまあ可愛い方で、元妻が会って説明するなら承諾するとか、あるいは、承諾する代わりに養育費減額しろとか、あの依頼者さんの相手方もあの相手方もこういうことを言いそうだなあと目に浮かびます。
あと、これ学校や塾など子どもの現場にとっても大変なことになると思います。今も、別居親が(別居中は共同親権状態なので)、親権者なんだから会わせろーと学校の入学式に乗り込んだり、先生に面談や資料の提出を求めたりするというトラブルがあります(2020年、萩生田文科大臣(当時)もそう答弁してました)。今の現場は、それを同居親を単独親権者のような感じにとらえて難を逃れているのですが、それが使えなくなります。学校とか塾に「俺は許可してないから辞めさせろ」と言われて、子どもも学校や塾も本当に気の毒なことになります。結局、学校や塾はトラブルを避けるため、必ず両方のハンコを持ってくるようにと言うでしょう。そうすると、また嫌がらせや条件交渉が始まります。私学では、そういうトラブルが発生すると、入試でひとり親家庭でも両親の面接を要求したりすることが考えられます。ひとり親家庭の子どもだって、いや、そういうお子さんこそ、様々な経験をして、大きく、豊かに育つ権利があるはずです。
なお、選択制ということで双方合意していれば構わないじゃないの?という意見があります。しかし、最も厳しいD Vのケースは、実は、協議離婚に隠れています。妻をオールナイト説教などD Vで無力化させ、子どもの親権は父として離婚届にサインさせるようなことが典型的です(著名な虐待死事案でもそれがありました)。そこまでいかなくても、妻が離婚をしたい一心で、養育費も要らないから、とにかくハンコを押して欲しいというようなケースです。あるいは、裁判所においても、とにかく面会必須と言われちゃうので、離婚をしたい妻は、子どもに、とにかく父親との面会に応じてくれ、あなたさえ我慢すれば離婚ができるのだからと説得しちゃったりもします(これは家事事件をやっている弁護士ならほぼ必ず経験していると思いますが、本当は、子どもは可哀想です)。財産分与を諦めることさえあります。D V夫は、権利という言葉が大好物なので「共同親権」というメニューがあれば、今後は、それに応じない限り離婚しないと言われるのは明らかです。このような強制力がはたらく状態での選択制より、今の、やりたい人・できる人はそうするということでよいのではないでしょうか。
じゃあ、海外はどうなっているの?という点については、フランスのケースはこちら。そもそも海外では、親権という概念はなくなってきており、親責任を共同で果たすということが主流です。それでも、特に欧米では、別れた父親が子へのコンタクト(面会)の機会に、子や母を殺してしまう事件が後をたたないため(日本より断然分厚いDV支援策があるのに!)、最近では、コンタクトより子や母の安全を重視する方向に大きく舵を切っています。
また、もちろん、監護していない親が子どもを連れていってしまう(本当の「連れ去り」)ケースもあります。そして、監護親の虐待が疑われるケースもあります。しかし、これへの対抗策は「共同親権」ではありません。この点もまたお届けしたいと思います。
以上
(弁護士mishima)