議論沸騰「共同親権問題」 あの「行列」の顔「北村晴男弁護士」が本気で取り組むワケ

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6/22(水) 17:00配信

デイリー新潮

議論は進む、されど……

 共同親権――離婚後も両親が子供の親権を持ち、それぞれが子を見守り、監護すること。先進国の多くで採用されている制度だが、日本は、離婚すると親権はどちらか一方にしか認めない「単独親権制」を採用している。これにより、共同親権を採用する国の人と日本人が国際結婚して子供をもうけ、離婚する場合、日本人親が突然子供を連れて帰国し、残された親が「誘拐罪」で日本人親を告訴するケースが後を絶たない。こういう子の連れ去り行為は国際的には誘拐罪に他ならず、日本は「拉致国家」との強い非難を受けている。

【写真】民間法制審の部会長を務める北村弁護士

 そのため、「共同親権の導入を」と、国際的な圧力が高まるなか、日本でも導入すべきか議論する動きが出ている。しかし――。
異例中の異例

 制度改正の議論を行っているのは、法務省の諮問機関、法制審議会の「家族法制部会」。昨年3月にスタートし、今夏、中間試案が発表される見込みだが、この試案を巡って動いたのが、日本テレビの人気番組「行列のできる相談所」でもおなじみの、北村晴男弁護士(66)、そして彼が率いる「民間法制審議会家族法制部会」という団体だった。この団体が先月31日、法務省の部会版とは異なる、独自の試案を作成し、自民党に提出。比較して議論を進めるよう高市早苗政務調査会長に提言した。

 法務省担当記者が言う。

「法務省の法制審があり、審議を進めているにも関わらず、それとは別に、民間団体が独自の法制審を立ち上げ、提言を行うなんて、異例中の異例です。しかもあの人気弁護士の北村先生が旗振り役なので話題になりました」

 なぜ「行列」のあの人が動いたのか。北村弁護士ご本人に、直接話を伺った。

――共同親権問題に取り組むようになったきっかけは。

「長いこと弁護士業務をするなかで、何度も、単独親権制の問題点を痛感させられてきました。例えば、妻の浮気など圧倒的に妻の責任で離婚に至るケースで、妻が子を連れて別居してしまう。その後、離婚の協議に入るわけですが、夫は私に、『先生、妻の浮気が原因ですから、当然、子供の親権はとれますよね?』と言う」

日本はこんな法律でいいの? 

「でも、日本は単独親権制で、その上、裁判所には『小さな子供には母親が必要』という認識があり、監護実績を重視するという判断基準もあるため、父親が親権を取るのは、ほとんど不可能。『それでもお願いします』と言われるものの、結局親権を取れずに、月に1度、数時間程度の面会交流を確約してもらうために、相場よりも高い養育費を払うことになるわけです。おまけに、犯罪者でもないのに、第三者による監視付き面会とせざるを得ないことも多い。これにより、親権を奪われた側の祖父母は孫と全く会えなくなる。諸外国の共同親権制度では、両親や祖父母は子の成長をずっと見守る事が出来、子供も多くの大人に見守られ、愛情をたっぷりと注がれながら成長することが出来る。法律家として、仕事はするけど、そもそも、日本はこんな法律でいいの? という疑問が、ずっと頭にありました。単独親権制は、親子関係を破壊し、子供、親権を奪われた親、祖父母など多くの人の幸せを奪う、とんでもない悪法です。

 そんな中、今年に入って、ある弁護士さんがうちの事務所にいらして、この方が共同親権の実現を目指して一生懸命やっておられる方で、『是非とも応援してほしい』と言われ、微力ながら、力になれればと思った次第です」
夫婦喧嘩でも……

――法務省の法制審が公開しようとしている試案の、どの点が問題なのでしょうか。

「まず、一番の問題は、父親と母親が合意したら共同親権を認める、という点です。『子供を元配偶者に合わせたくない』という親は合意しませんから、この制度ではこれまで同様、不幸な子供、不幸な親、絶望する祖父母を生み出し続けることになります。原則共同親権とする制度にしないと全く意味がない。そして二つ目は、監護権と親権を切り離したうえで、監護は単独で行います、というところ。監護、つまり、一緒に住んで見守る権利は一方にしか与えられない。そして、子供がどこに住むかを決める居所指定権も、監護権に付与する、と。こうなってしまうと、これは、今問題になっている“子の連れ去り”を合法化するための巧妙な仕掛けです。しかもですよ、その監護権を、婚姻中にもどちらか片方に付与することができるように議論を進めている節がある。夫婦喧嘩をし、かっとなったどちらかが訴えると、監護権を片方にのみ設定できるわけで、現行法よりもさらに早く親子関係を破壊する可能性が高い」

子供の幸せに責任を

――北村先生たちが提案している試案について教えてください。

「まず、離婚後も原則共同親権とします。未成年の子供がいる夫婦が離婚をする場合、子供を父母がそれぞれどういう割合で監護するかなどについて具体的に定めた計画、『共同監護計画』の提出を義務付けよう、というのが基本です。離婚する二人の事情は様々ですから、多様な場面に対応可能なガイドラインも作成します。当然ながら、DV被害者を守るための制度設計も重要ですからそれについても十分に検討しています。

 さらに、我々が提案しているのは、離婚するのであれば、子供の心理について講座を設けるので勉強してください、と。例えば、片親疎外症候群というのですが、一泊二日で父親の元に行き、母親のところに帰って来たとします。そして子供が『楽しかったよ』と報告したときに、母親が顔を曇らせると、大好きな父親を嫌いにならなければいけない心理状況に追い込まれることになる。その結果本当に父親を毛嫌いするようになるケースもある。そうした複雑な心理環境に子供を追い込むのは子の虐待に等しい。そういうことをきちんと勉強して、共同監護をしましょう、ということです。親の都合で離婚するわけですから、それによる子供への精神的負担を出来る限り軽減し、子供の幸せに最大限責任をもちましょうよ、と。共同親権を導入している先進国の制度を参考に、作成しました。どちらの案が、子供の幸せ、親の幸せに結びつくかは火を見るより明らかだと私は思っています」

 二つの試案は、法改正にどのような影響を及ぼすか――。

デイリー新潮編集部

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