モラハラ夫との別居準備(6)―夫から「子どもの連れ去り」と言われないためにはどうすればよいか

男性や子どもの権利について考えないので、こういう偏ったアドバイスになる。

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モラハラ夫との別居準備(6)―夫から「子どもの連れ去り」と言われないためにはどうすればよいか

2022.05.23更新

弁護士 秦

こんにちは、東京・日本橋(神田至近)の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。なお、>>「モラハラの連鎖を断ち切る!!」モラハラ被害女性のための総合サイトはこちら<<になります。

1.モラハラ夫と事前に話ができるようなら話しておく

 モラハラ夫との別居を検討する際、あなた自身の別居については応じるかもしれないけれども、「子どもは置いていけ」とか「子どもは連れて行くな」と言われそうだというご相談を受けることは多いです。
 そのため、もし事前にモラハラ夫側に話をし、夫側の理解を得られるようであれば、理解を得た上で別居するのが良いと思います。
 もちろん、あなた自身がモラハラ夫と単身で話をすることが難しいようであれば、あなたのご両親や親族等に間に入ってもらったり、同席してもらって話をするという方法もあります。

2.モラハラ夫の事前の同意がなければ「違法な連れ去り」になってしまうのか?

モラハラ夫側の了解を得ていなかったとしても、そのことだけで、違法な連れ去りになるということではありません。
モラハラ夫側の了解を得ずに別居したとしても、同居中夫側からのDVやモラハラにかなり苦しめられており、事前に話をすると別居を妨害される危険性があったとか、もしくは、旦那側からのDVやモラハラが強まる可能性が高かったなど、一定の事情があって別居を開始しているケースが大半だと思いますので、そのような場合には、相手の了解を得なくともやむを得ないと言えます。

3.違法な連れ去りに該当するかのポイントは?

 それでは、違法な連れ去りに該当するか否かのポイントはどのようなところにあるのでしょうか?

 一般的には以下のような要素を考慮して判断されるケースが多いので、詳しく解説していきます。

1)【違法な連れ去りかどうかのポイント1】連れ去り態様
 お子様と一緒に別居することを余儀なくされたとしても、その態様によっては、お子様の心情をひどく害してしまうというケースもありますので、違法な連れ去りかどうかの重要なポイントの一つが、その「態様」ということになります。

 「態様」というのは、分かりやすく言いますと、「連れ去り方」の問題です。
 例えば、大型のバンの後部座席に無理矢理お子様を軟禁するかのような態様で連れ去るケースだとか、保育園の保育士さんの全く目が届かないところで、勝手に園庭に侵入して連れ去ると言ったケースですと、態様そのものが違法な態様といえますので、違法な連れ去りと認定されるケースが多いかと思います。

2)【違法な連れ去りかどうかのポイント2】お子様の意思
 ここでのお子様の意思というのは、別居に対してのお子様の意思と言うことになります。
 あなたが別居を余儀なくされた側だとしても、そのことにお子様が納得しないケースもあると思いますし、ある程度の年頃にいったお子様ですと、明確に別居に反対したり、自宅に残るという意思表示をするケースもあると思います。
 このようなお子様の意思に反して別居を始める場合、違法な連れ去りと認定されるおそれがあります。

 なお、まだ年齢が小さい子は、自身の置かれている状況等をしっかりと把握できていないケースも多いので、お子様の意思の確認は6,7歳以上を一つの目安として確認することが多いと思います(但し、離婚訴訟の場合には、10歳くらいを一つの目安にすることが多いです)。

3)【違法な連れ去りかどうかのポイント3】それまでの監護状況
 同居生活中の監護状況は、違法な連れ去りかどうかの判断にも影響を及ぼします。
 前述の通り、お子様が10歳以上の年齢の場合には、一般的にお子様の意思や別居時の様子についてお子様から直接話を聞くことができますが、お子様の年齢がまだ小さい場合には、お子様の意思確認をすることはあまり期待できません。

 そのため、一般的には、普段お子様の面倒を見てきた奥様がお子様と一緒に別居を開始したという場合には、「違法な連れ去り」とは評価されないケースが多いのが実情です。他方、普段お子様の面倒をほとんど見てこなかった旦那様がお子様と一緒に別居を開始したという場合には、「違法な連れ去り」のおそれがあると見られるケースが相対的に多いように感じます。

4)【違法な連れ去りかどうかのポイント4】無断別居イコール「違法な連れ去り」ではない。
 奥様がお子様と無断別居したケース、要するに事前に旦那様に何も別居等の相談をせずに別居を開始したケースでは、旦那様側では「違法な連れ去りだ」と声高に主張なさる方も多いのですが、無断別居と言うだけでは、直ちに違法な連れ去りとは言えないことが多いです。
 「違法な連れ去り」かどうかは、前述のポイント1からポイント3までを総合考慮して決定することが多いです。

5)実態としては?
 ただ、結論から申し上げますと、奥様がこれまで主にお子様の育児に携わってきており、事情があってお子様と別居を開始したという場合には、その方法がよほどお子様の意思に反するといった事情がない限り、「違法な連れ去り」と認定される可能性は低いと思います。
 奥様によっては、しっかりと旦那に伝えてから別居すべきだったとかお悩みになる方もいらっしゃいますが、あまりこの部分で神経質になり過ぎない方が良いと思います。

4.どんなに慎重に進めようとしても、「連れ去り」と主張してくる夫は、そのように主張してくる

 前述の通り、可能なのであれば、モラハラ夫にも事前にお子様との別居についても相談しておくのが望ましいと言えます。
 ただ、このように相談し、モラハラ夫の同意を得た場合であっても、「連れ去り」と主張してくる人は結局「連れ去り」と主張してきます。例えば「一時帰省することは認めたが、別居までは認めてない」とか「妻が離婚を考えているとは全く考えなかった。少し頭を冷やすために別居したのだと思っていたから、これでは騙し討ちだ」などと言ってくる例です。
 そのため、「言ってくる人は結局言ってくるんだ」という発想もある程度は必要かもしれません。

5.結局しっかりとした事情があって、子供の意思も確認しているなら、慎重に夫の意見を確認するメリットってどこにあるの?

 前述の通り、やむを得ない事情があり、主に子育てを担ってきたあなたがお子様の意思を確認した上で別居するのであれば、それが違法な連れ去りと判断されるケースはほとんどないと思います。
 このような説明を致しますと、「それなら、わざわざリスクを冒して夫に事前に話をする意味・メリットはあるの?」と感じるかもしれません。
 弁護士として一番のメリットと感じますのは、モラハラ夫からの監護者指定審判等の手続を起こされるリスクを下げるという点だと思います。

 子の監護者指定の手続は別のブログで解説いたしますが、この手続きの申し立てを受けますと、かなりの書面や資料の準備と、家庭訪問等に備えた準備をしなければならず、育児をしながら準備していくことはかなりの負担になります。

6.まとめ

・旦那様の了解を経ずに別居したからと言って直ちに連れ去りになるわけではない。
・違法な連れ去りに該当するかは以下のような要素で判断することが多い
① 連れ去りの態様
② お子様の意思
③ それまでの監護状況
・別居前に事前に旦那側に話をしておくことが望ましいが、状況による。
・どんなに慎重に進めても「連れ去り」と主張してくる夫は結局その主張をしてくる
・「連れ去り」といった形で問題が複雑化すると、夫側が監護者指定審判の申立てをしてくるリスクが高まる。

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投稿者: 弁護士秦真太郎

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