『法制度における男性差別 合法化されるミサンドリー』を読む意味ーーー日本社会の近未来を知ることができる書

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2021-03-09
『法制度における男性差別 合法化されるミサンドリー』を読む意味ーーー日本社会の近未来を知ることができる書
book ノンフィクション フェミニズム 共同親権 USA 国際比較
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『法制度における男性差別: 合法化されるミサンドリー』は、共同親権に関心を持つ人間なら必読書だ。アメリカにおいてフェミニズム運動家たちが、いかに男性を合法的に差別し、経済的に搾取しているか、その仕組みを事細かく記述している。

 二段組みで492ページの大著である。参考文献も充実している。フェミニズム運動家たちから攻撃されてもそれに耐えうる内容にするためだろう、それだけに、本書で書かれている、さまざまな形態の男性差別の現実は厳しい。

 アメリカは共同親権の先進国なので、離婚後単独親権制度の日本より進んでいるだろう、と漠然とイメージしていた。それは間違いだったことが分かる。アメリカの女性たちは、離婚にあたって、弁護士と組んで夫から収奪していく。経済的に奪い、子どもと会わせないノウハウがある。

 私は手始めに「第二部 裁判にかけられる権利ーー経済問題 第五章 母親の権利 対 父親の権利」を中心に読んだ。アメリカの男性たちは離婚にあたって妻から収奪されていた。

 養育費の支払いが滞ると、運転免許が停止され、最悪の場合、刑務所に収監される。その人物が極悪人というわけでは無い。困窮して養育費が支払えないと厳罰に処される司法システムに乗せられてしまうのだ。

 養育費の算定の根拠となる統計は、女性に有利になるように操作されており、男性は不当に高額な養育費を支払うことを強制される。この算定根拠の統計は、養育費ピンハネビジネス業者がつくっている。金銭的に困窮し、子どもと面会できない、その苦境を周囲に説明できないまま、自殺してしまう父親が多数いる。

 著者たちは、この男性差別をする人たちと、それを支えるイデオロギーを丁寧に説明してくれる。イデオロギーフェミニズム。これが社会、法律、メディアなど隅々に影響をあたえて、男性を不利な状況に押しとどめている。女性は弱いものだ、という「神話」を利用して収奪する。このためそれがきわめて非合理、非人道的な搾取・差別であることに気づく人が少ない。気がついたときには遅い。離婚手続きのなかで、男性は不当に高額な金を取られていくのだ。

 女性のなかには不倫相手との間に子どもを作り、その養育費を離婚させた元夫に支払わせ続けるという人間もいる。これを著者は「父性詐欺」と記述している。アメリカでは「誰もが知っている詐欺」だという。暗澹とした。

 「アメリカの養育費産業は、男性がその制度を批判する何十冊の書籍を生み出すほど」であるという。これらの産業にフェミニストが影響力を行使している。

 見方を変えれば、本書は、日本の結婚・離婚という小さな人間関係と経済単位の、近未来を知るための予言の書ともいえる。

 結婚したカップルの3人にひとりが離婚する時代である。本書を独身のうちに読んでおくことを推奨する。女性不信を助長するためではない。子どもの養育と幸福のために、知っておくべきことがあまりにも多いからである。

 私たちは、結婚と離婚が、イデオロギーの戦場になっていること、経済的利益を獲得する業者のビジネスのマーケットになること、共同親権になっても女たちは親権の独占を要求し子どもを養育費獲得のための交渉の道具にすること、それを支援する法体系と弁護士がいることをあまりにも知らない。

 本書を読むと、洋の東西を問わず、結婚は、男女間の文化、経済の衝突の場になっていることに気づかされる。夫婦の争いが発生すると、それに介入する弁護士、養育費ピンハネビジネス業者、裁判所、フェミニズム運動団体たちが、わっとかけつけてくる。知識がない男たちは、イデオロギーフェミニズムの連合軍に敗北していく。すべてをむしり取られて自殺に追い込まれていったアメリカの男たちの敗北から、日本社会は学ぶべきである。

ユニークフェイス・ラジオでも書評しました

ユニークフェイス・ラジオ 第7回|石井政之 ユニークフェイス研究所Blog|note

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法制度における男性差別: 合法化されるミサンドリー

法制度における男性差別: 合法化されるミサンドリー

作者:ナサンソン,ポール,ヤング,キャサリン・K.
発売日: 2020/05/25
メディア: 単行本

法制度における男性差別

【内容】
男だって“差別”されている。 なぜ父親は、離婚で子供の親権を認められないのか? なぜ男性のDV被害は問題にならないのか?
親権、DV、セクハラ、レイプ、売春、アファーマティブアクションなど、具体的な事例を検証し、いかに男性への差別・蔑視が合法化されているかを明らかにする。
北米で大論争を巻き起こしている注目の書!

夫のペニスを切断した〈ホビット事件〉、最高裁判事候補がセクハラで訴えられた〈C・トーマス事件〉、14人の女性を殺害した〈モントリオール理工科大学銃撃事件〉などを取り上げ、これらの事件後、いかに政治的な運動と論争が起こされ、世論がマスメディアによって形成され、男性差別的な法改正が行われたかを検証する。
そして、1990年代以降、この合法化された“男性蔑視”(ミサンドリー)が、裁判所・教育機関・政府委員会・企業から、雇用・結婚・離婚・セクハラ・暴力・人権に影響を与える法律や政策に至るまで、いかに浸透していったかを明らかにする。

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追記

法制度における男性差別: 合法化されるミサンドリー

・初版完売、増刷して、累計1万部まで売れて欲しい書籍です。

・私と田中俊英さんが「昭和フェミニズム」と命名した、古いフェミニズム運動が可愛く見える。アメリカのイデオロギーフェミニズムは強力。ほとんどSTAR WARSの帝国軍である。
・フェミニズムの人が書評してほしい。どんな書評になるのか、見当がつかないから、書いてほしい。

・本書で登場する、男性差別・蔑視のプレイヤーたちの動きが、日本のだれと似ているだろうか、と想像するのも面白い読み方。ただし、アメリカのフェミニズムの人たちの強欲、大胆不敵さは日本から見ると規格外。スケールがでかい。

「シングルマザー産業と呼ぶのが最良であるものの発展」ーーー『法制度における男性差別』ーーーという指摘は、日本でもあてはまる現象がおきている、と考える。

「イデオロギーフェミニストは、言語上のごまかしを通して社会的・経済的変化を起こす」「インターネットを使いながら、あらゆる潜在的法改正を孤立させるために、支援者を動員した」ーーーという指摘は、日本でもあてはまる、と考える。

イデオロギーフェミニストは、男性中心社会の権利闘争の中では、言葉のごまかしをすることが分かった。SNSで滅茶苦茶なことを書くのも戦略のひとつなのか・・・。

この本で「被害者階級」という言葉を学んだのは良かった。シングルマザーやDV被害者は「被害者階級」。だから階級闘争によって、養育費や親権などを獲得することは正義という理屈になる。

#シングルマザー産業 という言葉は日本社会のなかで必要な表現だと思う。夫を家庭から追い出して、子どもの親権を独占する。そのあとの生活費をいかにして獲得するか。それは #シングルマザー産業 に依存することで達成できる。

共同親権について不正確なことをいくら書いても構わない、結果として シングルマザーやDV被害者という #被害者階級 に貢献し、#シングルマザー産業 に寄与できればよい、ということならば、さまざまなTwitter発言のつじつまが合う。

2年前