離婚までの2年間「毎月30万円」の生活費を支払うハメになった「年収700万夫」…支払った総額は?

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5/1(日) 16:02配信

現代ビジネス

夫を襲った長い「法廷闘争」/photo by iStock

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相談者の松山瞬さん(仮名)は、年収は約700万円ほどの40歳代後半の会社員。奥様である松山夏帆さん(仮名)と不仲になり、瞬さんが家を追い出されるような形で別居を開始した。パート勤務の奥様から“家賃10万円の他に生活費として20万円を支払う”ように求められた瞬さんは、それを拒否。「離婚調停」と「婚姻費用分担請求調停」の2つに対して、裁判で争うこととなった…。
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妻からの「対抗的」申し立て

夫を襲った長い「法廷闘争」/photo by iStock

 今回のケースに限らず、夫側からの離婚調停申立てに対し、妻側から婚姻費用分担請求調停が「対抗的」に申立てられることは実務上よくあります。

 裁判所では、2つの事件は別事件(別の事件番号が付けられます)扱いですが、実際の調停では、同じ調停期日で同じ調停委員会(調停委員2名と裁判官1名)が担当します。

 そして、両事件を並行して進める場合もありますが、「現在の生活費」の問題である婚姻費用の方がより早く決める必要性が高いことが多いため、こちらを優先的に協議し決着を着けるという進行パターンがよく見られます。

 瞬さんのケースでも、まずは婚姻費用を話し合うこととなりました。

 当方の主張は、従前どおり、算定表からすれば月額約10万円が瞬さんの負担するべき婚姻費用であるということを調停委員の先生に対して丁寧に説明をしました。

 これに対し夏帆さんは。別居開始直前、瞬さんと生活費について話し合い、瞬さんが家賃10万円の他に生活費として20万円を別途負担することを明確に承諾していた。という主張をしてきたのです。

 「確かに妻とは生活費について話をしたことはありましたが、そのころはすでに険悪な仲になっていましたので、私は承諾したつもりは全くないです。それは妻が一方的に私に押しつけてきた提案に過ぎません」

 瞬さんは、調停委員の先生に対し、強く反論をしました。

 その後、夏帆さん側は、瞬さんと一緒に書いたメモ書きなどを証拠として提出してきました。そのメモ書きには、作成した日付もなければ、二人の署名もないようなものでしたが、色々な支出の費目を合算した計算結果として「30万円」という記載があるようなものでした。

瞬さんの主張が退けられる

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 ここで互いの主張を整理しましょう。

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瞬さん(夫)側の主張:二人の年収から算定される婚姻費用の額は10万円、これが自分の負担すべき金額である。

夏帆さん(妻)側の主張:夫婦間で30万円の合意があり、瞬さんが負担すべき金額は30万円とされるべきである。
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 調停委員の先生を介して協議が進められましたが、5回にわたる裁判所での話し合いを経ても双方合意に至らず、結局、婚姻費用の事件は調停不成立となりました。

 婚姻費用の調停事件は不成立となった場合、自動的に「審判」という手続きに移行します。調停事件では、裁判所を介し双方の「協議」での合意成立を目指しますが、審判手続きは裁判官による一刀両断的な判断(その判断を「審判」と言いますが、通常の裁判で言う「判決」のようなもの)がなされる手続になります。

 瞬さんのケースも審判に移行し、その結果、夫婦間には婚姻費用に関する合意があったとされた上で、瞬さんは合意した月額30万円の婚姻費用を負担すべきとの審判が下ったのです。

 また、過去分の婚姻費用についても、支払いを拒否していた月額20万円につき、夏帆さんが婚姻費用請求調停を申し立てたときから遡って一括で支払わなくてはならない(20万円×10か月=200万円)との判断も下されました。

 その後、瞬さんは「審判」に対する不服申立手続きである「即時抗告」も行い、事件は高等裁判所に移りましたが、残念ながら結論が変わることはありませんでした。

 結局、瞬さんは、過去分の婚姻費用不足分200万円を一括で支払うとともに、審判後も毎月30万円の婚姻費用を負担することになりました。

 なお、瞬さんには、万一に備え、支払いを拒絶した毎月20万円はなるべく使わないで貯蓄しておいた方がいいと事前にアドバイスしておりましたので、瞬さんは何とか200万円を一括で支払うことができました。

次は「離婚訴訟」

 他方、離婚事件は、調停で何度か話し合いをしたものの、夏帆さん側は「まだ元通りに戻れると思っている」などと離婚そのものを強く拒否し続けたため、この事件も不成立となりました。

 離婚事件は婚姻費用事件と異なり審判に自動で移行することはなく、離婚に向けた手続きを進めるためには、改めて離婚請求訴訟を提起しなくてはなりません。そこで、瞬さんは離婚調停終了後まもなく、離婚訴訟を提起することになりました。
夫が支払った総額は?

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 夏帆さん側は、離婚訴訟でも「まだ夫への愛情があります。夫との関係を修復することはできると思っています」と主張し、瞬さんからの離婚請求の棄却を求めてきました。

 しかし実際には、別居後は瞬さんに対する批判ばかりでしたので、夏帆さんが離婚成立を引き延ばし、瞬さんからより多くの婚姻費用を受け取ることを目的としていることは明らかです。

 訴訟提起から約半年くらい後に裁判上での和解に向けた協議が始まり、婚姻期間中における同居期間が短いこと、双方の対立が激しく同居再開は事実上困難であることなどから、担当裁判官が離婚はやむを得ないのではないかとの心証を示すようになりました。

 そして、さらに3回ほどの裁判所での協議を行った結果、瞬さんが夏帆さんに対し、解決金(事実上の手切れ金)として150万円を一括で支払うことを条件とした裁判上の和解が成立しました。

 この和解成立により,瞬さんはようやく離婚ができることになり、ようやく毎月30万円という負担から解放されることになりました。

 離婚自体は事件を始めてから2年かからずに成立することとなり、明確な離婚事由がなく、かつ相手が離婚を強く拒否しているケースの中では比較的早期に離婚ができたと言えます。

 他方、離婚するまでの間、瞬さんは婚姻費用として合計660万円(家賃分も含む)、解決金として150円の合計810万円も支払う羽目になりました。
負担を避けるための2つのポイント

 非常に大きな経済的負担となりましたが、一体どうすればこれを防いだり、少なくしたりすることができたのでしょうか。

 ポイントは2点あります。

 (1) 別居時に安易な生活費に関する合意や取決めをしないこと

 今回の瞬さんが大きな負担を負うことになった原因の1つが、裁判所に婚姻費用について30万円を負担する旨の合意があったと判断されたことです。

 このように判断されることを防ぐためにも、別居開始時に別居後の生活費を決める場合は、裁判所の算定表を参考に適正な金額とするか、弁護士に相談するなどして適正な金額を確認し、適正な婚姻費用の金額を知った上で、それを大きく上回るような負担を安易に承諾しないことが重要と言えるでしょう。

 また、一旦決めた支払額も確定的なものではなく、暫定的なものであることを前提として支払う(そのような趣旨であることを書面やメール等で証拠化しておく)、という方法も有効かもしれません。

 (2) すぐに離婚ができるケースかどうかを知ること

 負担する婚姻費用の合計額は、大雑把に言えば「毎月の支払額×離婚までかかる月数」で計算されます。つまり、月額もさることながら、離婚までにかかるであろう期間を知ることも同じくらい重要です。

 この判断はいわゆる「離婚事由」の存否などにかかわるため、できれば弁護士に相談していただいた上で、ご自身のケースにおける「離婚成立の難易度」を確かめておくといいでしょう。

 婚姻費用の問題は、離婚そのものに比べますとあまり目立たない問題ですが、実際には積み重なって結構な経済的な負担になることがあります。特に一般的に婚姻費用の負担を負う側となることが多い既婚男性にとっては、知っておいて損はない問題と言えるでしょう。

澤藤 亮介(弁護士)

4か月前