家裁の“忠告”無視した児童相談所の一時保護継続は「違法」 大阪地裁で異例の判決 面会制限の違法性も認める

親の権利が確立していないがために、それを制約する制度も作れない。結果行政の一存で無制限に引き離す。それが現状です。

https://news.yahoo.co.jp/articles/f326bf4206f53a0571226d516d03d8fda8f22696?page=1

3/24(木) 22:56配信

関西テレビ

報道ランナー

2022年3月24日午後2時、生後間もない我が子と約8カ月離ればなれになった大阪府内に住む30歳代の母親が、児童相談所の対応が違法だと訴えた裁判で、判決が言い渡されました。

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【裁判長】
「本来であれば子どもの毎日の成長を見守るというかけがえのない時間が失われてしまった。一時保護を継続したこと、面会制限をしたことは違法である」

判決は、一時保護を続けたことや、子どもに会わせなかった児童相談所の判断の違法性を認める異例のものでした。

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4年前、初めて授かった待望の長女。
母親は、長女の父親であるパートナーとは同居せず、パートナーや家族の協力も得ながら育児に励んできました。
母親にとって何よりつらかったのは、生まれたばかりの娘と8カ月間離ればなれになったことです。

【母親】
「抱っこしながらグラスを取ろうと手を伸ばして、グラスをつかんでまた娘に手を戻すときに娘を落としてしまって…」

生後1カ月の長女が、頭からフローリングに落ちてしまい、母親はすぐに119番通報。長女は病院へ運ばれました。
診断の結果、長女は頭の両側が骨折していて、入院することになりました。
事故から2日後に長女は児童相談所に一時保護されましたが、母親は毎日病院に通い、1日12時間の看病を続けました。

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入院から16日後、母親は児童相談所に突然呼び出されます。
その理由は…

【大阪府池田子ども家庭センター・担当児童福祉司A】
「鑑定の結果、1 回の落下では2 箇所の骨折は説明できないとの(鑑定の)速報が出たので、これからは面会できません。保護施設へ移ります」

この日を境に、およそ2カ月間、長女との面会が一度も認めてもらえず、居場所すら教えてもらえませんでした。

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今の制度では、児童相談所の判断だけで2カ月間一時保護が認められていますが、2カ月を超えて延長しようとする場合には、家庭裁判所の審査が必要となっています。

児童相談所は、虐待が疑われるなどとして一時保護の延長を家庭裁判所に申請。

審判で児童相談所側の医師の鑑定書が提出されましたが、理由の記載はおよそ1ページ。虐待を疑った根拠を示す画像や医学文献は記載されていませんでした。

一方、母親が鑑定を依頼した脳神経外科医は…

【奈良県立医科大学・朴永銖病院教授(脳神経外科)】
「赤ちゃんの頭蓋骨はたわむという特徴的な特性があるので、1回だけの頭部外傷でも両側に骨折生じる。この赤ちゃんの場合もその可能性ありますと(鑑定書に)お書きしました」

家庭裁判所は、医師の鑑定も踏まえ、「母親の説明とケガの状況は矛盾しない」としたうえで、「母親に虐待傾向は一切見られず、説明も一貫している」と指摘。

あと2カ月の一時保護の延長を認めるが、その理由は、「医師の鑑定が信用できるかを検討し、自宅引き取りに向けた準備の期間にする」というものでした。

【母親】
「私はあの審判の内容を見て、これで娘を返してもらえると思った」

“これでまもなく長女が戻ってくる”そう思っていた母親に、児童相談所から思いもよらない方針が告げられました。

【児童福祉司A】
「長期間施設に入所させる審判申し立ての予定は変わらない」
「裁判は勝負みたいなところがある。勝算がないとは思ってない」

結局、児童相談所は、長期間の施設への入所が必要だとして、家庭裁判所に審判を申し立て、審判の間、一時保護がさらに続くことになったのです。

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しかし、審判が始まっても、児童相談所からは新たな証拠の提出もなく、裁判官の勧告により、児童相談所は審判を取り下げました。
一時保護からおよそ8カ月が経っていました。

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【母親】
「なぜ一時保護されたのか、なぜ面会制限されたのか、なぜ一時保護解除してもらえなかったのか。制限された娘のために少しでも知りたい」

母親は児童相談所の中で何があったのか知りたいと、裁判で闘ってきました。
去年10月、担当していた児童福祉司への尋問が行われました。

【裁判官】
「児童相談所として、家庭裁判所で具体的に示された検討をしなかったということですね」

【児童福祉司A】
「していません」

【裁判官】
「家庭裁判所は(鑑定書の)信用性について検討してくださいと。故意の虐待の可能性について検討してくださいと言われたわけですよね。そう理解しなかったのですか」

【児童福祉司A】
「おっしゃっている意味が分かりません」

【裁判官】
「なぜ分からないのですか。もう家庭裁判所の理由は尊重しなくていいとお考えになっていたということですか」

【児童福祉司A】
「そんなことは…」

「ケガの原因が分からず、 虐待の可能性が疑われる」として継続された一時保護。
しかし、家庭裁判所の忠告があった後も、児童相談所はケガの原因を調べていなかったことが法廷で明らかになりました。

そして、提訴からおよそ3年、ついに迎えた判決の日。

大阪地方裁判所の山地修裁判長は、「家庭裁判所の指摘があった後、速やかに他の医師の鑑定を求めていれば、一時保護の必要がないと認識できた」と指摘。

そのうえで、家庭裁判所の審判の後、3カ月半にわたって一時保護を継続したことは違法だと判断。

さらに、2カ月間の面会制限についても「行政指導なのに、事実上強制的に行われた」として違法だと認め、大阪府に対し計100万円の損害賠償を命じました。

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【母親(判決後の会見)】
「娘と会えなかった時間はすごく長かったし、その時の娘にはどうやっても会うことができない。娘のための一時保護といいながら今回の一時保護が本当に娘のためだったのか、児相も大阪府もきちんと検証してほしい」

判決を受け、大阪府の吉村洋文知事は「判決内容を精査して、控訴するかどうか判断する」と話しました。
また一つ、児童相談所が機能不全に陥っている実態が明らかとなりました。
背景の一つには、虐待通告受理・介入(一時保護など)・家庭支援を全て児童相談所が担っている「制度の問題」があります。

児相職員の経験もある花園大学の和田一郎教授(子ども家庭福祉)は「必要なのは役割分担。通告受理から支援まで全て児童相談所が担っているのは日本くらい。しかも、児相職員の数も非常に少ない。システムは破たんしている」と指摘しています。

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和田教授によると、「48時間といった一定期間を超えて親子を強制的に引き離すのは、大きな人権制約になるので、福祉機関である児童相談所ではなく、司法(裁判所)が主体的に担うのが国際常識だ」と話します。

特に、最初の2カ月間、児童相談所の判断だけで一時保護を行うことが認められている日本の制度は、「児童の権利条約」に違反していると国連からも指摘されてきました。

今年の通常国会でようやく、児童福祉法改正案が提出され、「保護開始から7日後までに児童相談所が一時保護状を請求し、裁判所の承認を経て、2カ月間の一時保護が認められる」という制度が新たにできあがろうとしています。

しかし、この改正案では、裁判所が一時保護を認めるかどうか審査する際に、なぜか保護者や子どもの意見を聞かずに、児童相談所が提出した資料だけで書面審査する“逮捕状”類似の制度になっています。

関西学院大学・井上武史教授(憲法)は、「(改正案は)保護者の意見を聞く機会がないまま2カ月間も強制的に保護ができてしまう制度になっていて、憲法上も条約上も問題がある」と話します。

和田教授も「司法の関与があまりに弱く、児相が主体のままで役割分担になっていない。これだと今後も子どもの権利は守られない」と改正案に厳しい目を向けています。

この点については、厚労省の検討会や審議会でも疑問の声が続出しましたが、厚労省からは具体的な説明がほとんどなされないまま、3月4日に法案が提出されるに至りました。

今回の母親のケースも、家庭裁判所は母親側の主張や母親側の医師の鑑定書の内容を踏まえたからこそ、児相の判断に疑問が投げかけられたといえます。

「当事者の言い分を聞く」という当然必要とされる仕組みを設けていないのはなぜなのか。
厚労省の改正案の「信用性」があらためて問われることになりそうです。

(カンテレ「報道ランナー」2022年3月24日放送)

3年前