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先月(11月)末,フランスの司法当局が子どもをフランス人の父親から引き離したとされる日本人の妻に対して親による誘拐などの容疑で国際逮捕状を発行したというニュースがありました。
ヴィンセント・フィショさんというフランス人の男性がフランスの司法当局に告訴していたそうです(告訴は2019年)。
報道だけでは詳しい内容はわかりませんが,ヴィンセントさんは,3年前に日本人の妻が2人の子どもを連れて無断で家を出て行ったと訴えているようで,逮捕状の容疑としては,「未成年者拉致の罪」と「未成年者を危険にさらした罪」とのことです。
ヴィンセントさんは東京オリンピックの開催期間に合わせて国立競技場前で3週間ハンガーストライキを行ったとのことで,それが注目されてフランスの司法当局を動かしたのではないかと言われています。
親による子どもの連れ去りで国際逮捕状が出ることはときどきありますが,多くは,親子が外国で生活していたところ,母親が子どもを連れて他の国(母親の国籍国など)に移住したようなケースです。
しかし,今回のケースは,元々,親子が日本で生活していたところ,母親が子どもを連れて日本内で引っ越したケースについて国際逮捕状が発行されたので極めて異例です。
ヴィンセントさんがハンガーストライキを行ったときは,日本のマスコミはほとんど取り上げなかったようですが,今回の国際逮捕状発行のニュースはかなり反響が大きいみたいです。
反響が大きいことの背景には日本と欧米の法律の違いがあると思います。
欧米では夫婦が離婚しても「共同親権」といって父親も母親も子供の親権者であり続けます。
この「共同親権」が背景にあるため(他の見解もありますが私はこのように考えております。),欧米の場合,夫婦が離婚した場合に母親が子供を引き取ったとしても,行政機関や民間施設等による支援が充実していることもあって,父親と子供との面会は比較的スムーズに行われます。
また,母親が父親に無断で引っ越したり,正当な理由なく面会を拒絶したりすると厳しい罰則があります(国や州によって異なりますが)。
その延長線上として,離婚前の別居状態の場合でも,親と子供との面会は基本的に保証されており(児童虐待等を除く),一方配偶者が他方配偶者に無断で子供を連れて家を出ると誘拐の罪に問われたりします。
これに対して,日本では離婚した場合に「単独親権」といって,どちらか一方の親だけが親権者となります。
そのため,親権者でない親が軽く扱われる傾向にあるように思います。
実際,日本では,親権者となった親が子供を引き取った後,他方の親に一切子供を会わせないケースが少なくありません。
そして,日本では,離婚前の別居状態の場合でも,離婚後において多くの場合に母親が親権者になるという背景もあり,母親が父親に無断で子供を連れて家を出ることについて問題視されない傾向にあります。
今回のニュースは,このような日本の現状に問題を投げかけたといえます。