https://note.com/kogareiko/n/n30305ea14298
弁護士古賀礼子
2021年12月12日 12:42
昨日は、手作り法制審にゲスト参加して、よき学びとなった
【第5回12月11日(土)】めざせ!共同親権 手づくり民法・法制審議会、ゲスト古賀礼子さん(弁護士) | そうだったのか!共同親権
現在親子法制の見直しのための国の法制審議会が毎月開催されています。しかし、共同親権の位置づけも不明なまま明確な改革の意思の
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お出かけする前、昨日は、共同養育と歯科治療の重なりに思い馳せたり
支援措置問題についても思い馳せ
そうやって、手作り法制審では、終戦直後の民法改正時の議論について追っかけた
今の法制審の議論を私は比較的ポジティブに見守っているので、ぜひ、この未完成の規律を自覚の上、ちゃんとしてほしい
終戦時の改正民法では、未完成部分が多かったなか、それなりに手当されてきた小さな法改正もあって、現行の規定になっている(単独親権制は残っている)
たとえば、長らく実働もしていなかった懲戒場については、そのワード自体削除された
2011年法改正までこういう規律だった↓
822条
1項:親権を行う者は、必要な範囲内で自らその子を懲戒し、又は家庭裁判所の許可を得て、これを懲戒場に入れることができる。
2項:
子を懲戒場に入れる期間は、六箇月以下の範囲内で、家庭裁判所が定める。ただし、この期間は、親権を行う者の請求によって、いつでも短縮することができる。
懲戒権自体の規定は残ってしまった
その見直し自体も議論はされている
そうしたアップデートが少しずつあって、終戦時の法改正の議論のときと状況が変遷している大きなポイントを発見した
後見人複数選任が可能になる法改正
過去は、未成年後見人は1人と規定されていた
民法842条(現在は削除)
未成年後見人は、一人でなければならない
後見人について、そもそも1人とされていた禁治産者制度(ネーミング的に差別的)が廃止され、成年後見制度に改められたとき、すでに、複数後見人が可能であり(法人が後見人になることも可能)、しかし、未成年後見人については、しばらくは一人後見人が続いていた(この辺、司法試験の模試などで見たかも)
遅れながらも、未成年後見人も、複数、あるいは法人が就任することが可能になった
その趣旨は、次のとおり
後見人間での意見の不一致によって被後見人の福祉に影響を及ぼすことがないよう、後見人の数を一人に制限する趣旨であり、戦後の民法改正においても、明治民法の規定(旧・民法第906条)がそのまま受け継がれたが、平成11年の改正で成年後見制度が開始されたことで、本制限は未成年後見人のみに対象が限定され、さらに児童虐待等複雑化する教育問題に対処すべく、平成23年改正によって本条は削除された。複数人選任されることで、専門職がチームを組んで後見にあたる、あるいは法人を後見人に選任することなどを想定している。
明治民法のかほりを、後見の分野では先駆けて、改めているのである
後見と親権の関係が実は深くあり、終戦時の改正において、親権概念の見直しの議論があって、後見と同一化しようという意見もあった
ところが、日本国憲法の理念である男女平等に即して、夫婦が対等に共同親権であるべきこと、は内実の整備までは行き届かなかったとはいえ、必要とされていたため、親権者が2人になること(婚姻中共同親権)と、当時の、後見人は1人が背離した結果、後見と親権の一体化が断念されてしまった
しかし、共同後見人の方が先に実現し、非婚の単独親権という単独親権制が残ってしまった(単独親権制の理解については↓)
未成年後見人が複数人選任可能となっており、その規律を見てみる
第857条
未成年後見人は、第820条から第823条までに規定する事項について、親権を行う者と同一の権利義務を有する。ただし、親権を行う者が定めた教育の方法及び居所を変更し、営業を許可し、その許可を取り消し、又はこれを制限するには、未成年後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。
未成年後見人は、親権者と同一の権利義務があり、また、共同後見人ではなくても、未成年後見監督人があるときは、その同意を得ることになっている
第857条の2
1.未成年後見人が数人あるときは、共同してその権限を行使する。
2.未成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、その一部の者について、財産に関する権限のみを行使すべきことを定めることができる。3.未成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、財産に関する権限について、各未成年後見人が単独で又は数人の未成年後見人が事務を分掌して、その権限を行使すべきことを定めることができる。
4.家庭裁判所は、職権で、前二項の規定による定めを取り消すことができる。
5.未成年後見人が数人あるときは、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りる。
共同後見人は、親権者と同一の権限があって、共同してその権限を行使する。その際、共同後見人が夫婦とは限らないことは当然あることである。
実際は、親族や里親が夫婦として共同後見人になることもあれば、身上監護については、親族後見人が担い、財産に関する権限については弁護士などの専門職後見人が担いながら役割分担をすることもある。
親による共同親権の規律としても十分参考になるのではないだろうか。
同条の趣旨はこちら
平成23年改正によって、未成年後見人を複数人選任できるようになったことから、本条が新設された。未成年後見人が数人ある場合の権限行使方法や、それに対して何らかの法律関係にある第三者の意思表示の方法について規定する。
ある意味、これだけで足りるとされている。
実際、社会的養護の場面では、親権のある親と離れて暮らす子が里親に監護養育される環境はあって、親権者の同意が必要なケースは、児童相談所が間に入って調整することで、適切に対応(仮に不当に予防接種を拒否するようなケースでは、親権停止を発動させるということがある)できていたりする
少し想像すればわかるが、親権者による拒否権の発動という事態は起こりえない
ちなみに、成年後見人にも同様の規律がある
第859条の2
1.成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、数人の成年後見人が、共同して又は事務を分掌して、その権限を行使すべきことを定めることができる。
2.家庭裁判所は、職権で、前項の規定による定めを取り消すことができる。
3.成年後見人が数人あるときは、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りる。
そういえば、下記の規律もなんか参考になりそう
(第三者が無償で子に与えた財産の管理)
第830条
1.無償で子に財産を与える第三者が、親権を行う父又は母にこれを管理させない意思を表示したときは、その財産は、父又は母の管理に属しないものとする。
2.前項の財産につき父母が共に管理権を有しない場合において、第三者が管理者を指定しなかったときは、家庭裁判所は、子、その親族又は検察官の請求によって、その管理者を選任する。
3.第三者が管理者を指定したときであっても、その管理者の権限が消滅し、又はこれを改任する必要がある場合において、第三者が更に管理者を指定しないときも、前項と同様とする。
4.第27条から第29条までの規定は、前二項の場合について準用する。
祖父母が子に財産を与える(無償で)とき、親権者に管理させない意思表示をすることができ、管理者を指定することができるのである
こうやって、子どもの財産を守るということもできそうである
民法に向き合うことで、親子の規律を整備することができそうである!
タイトルの思いを振り返ってまとめ
他人となる大人が親権と同一の権限を共同行使する規律についてはもう民法にある
非婚の共同親権は実現可能なのである