仏司法当局、未成年者の拉致容疑で日本人妻に逮捕状発行。インターポール(国際刑事警察機構)へ提訴は?

https://news.yahoo.co.jp/byline/puradonatsuki/20211201-00270607

プラド夏樹
パリ在住ライター
12/1(水) 20:50

請願のために欧州議会を訪れたフィショ氏(写真:ロイター/アフロ)

11月30日、フランス時間で16時、経済紙レゼコー紙(電子版)が、フランス司法当局が、日本に在住するフランス人男性の日本人妻に対して、未成年者の拉致、傷害の容疑で逮捕状を発行したことを報道した。その中で、「インターポール(国際刑事警察機構)への提訴」、つまり国際逮捕手配が言及されている。昨日、筆者が発信した記事はフィガロ紙の記事を中心にしたものだったが、今日は、このレゼコー紙の記事を以下に翻訳してみたい。

「2018年に東京で日本人妻に子どもを拉致されたヴァンサン・フィショ氏は、これまでに何度も東京の警察署に出向き、告訴しようと試みた。家の監視カメラには、妻がわずか11ヶ月の次女を車のバンパーに閉じ込めて家を出ていく様子が映像が残っており、それも警察に証拠物件として見せた。しかし、警察は、プライベートな問題だからという理由で、いかなる被害届も受理しなかった。そして3年後の今日、フランス司法当局はこの事件に関して、フィショ氏の日本人妻に逮捕状を出した」と、傷害容疑の理由が書かれている。

「(中略)これは、tsubasa(6歳)とkaede(4歳)に再会するためにフィショ氏がこれまで続けて来た激しい戦いの一環である。日本の裁判所に対して行ったほとんど全ての申し立てが実を結ばなかったため、この元トレーダー39歳は、東京オリンピック期間中に3週間にわたるハンガーストライキを行った。それでも日本の裁判所は全く動じなかったが、これを機会に、数百人の同じような境遇にある親たちが動き始めた。

日本司法では共同親権は存在しない。超保守的な(Ultra-conservateurs)判事は、親権の一貫性を維持するためという理由で、最初に子どもを「拉致」した親に、必ず親権を与える。もし、親権を剥奪された親が子どもたちに会おうと試みると、警察がすぐに出動し、些細な理由をつけて(筆者注:近所迷惑など)逮捕されてしまうこともある。

このようなメカニズムを弁護士と研究した上で、フィショ氏の日本人妻は子どもを連れて蒸発した。家庭裁判所が離婚成立までの間、彼女に単独親権を認めるであろうことを計算した上でのことだ。彼女は、夫を訴えてすらいないのである。

フランス司法当局が発行した逮捕状は今、すぐ、彼女を脅かす効力はないかもしれないが、2022年初めに決着がつく予定の離婚調停に影響を与えるかもしれない。フィショ氏は『私たちは、離婚の条件と子どもたちの今後の生活について交渉している最中です。フランス司法当局から重大な容疑で逮捕状が出ている人物に、単独親権を与えることができるのかどうか、判事に、聞いてみようと思っています』と言っている。

最後に、「逮捕状発行で、この事件が別次元の事件に発展する可能性もある。フランス政府がインターポール(国際刑事警察機構)に提訴する場合は、日本人妻に赤手配書、つまり国際逮捕手配書が発行され、彼女は逃亡者とみなされることになる。これは世界各国で重大な容疑を受けている人物の居場所を突き止め逮捕するための制度である。」とある。

(筆者注:赤手配書が発行されると、それぞれの国の間で犯罪人引き渡し条約が締結しているかどうかにかかわらず容疑者は身柄を拘束され、送還される)

これまで国際逮捕手配された事件といえば、よど号ハイジャック事件、日本赤軍事件といったテロ関連の事件を思い出す読者が多いかもしれない。しかし、欧州の人々にとっては、子どもの連れ去りは「プライベートな問題」の一言では済まされない、人権を踏みにじる重大事件だ。フランス政府がインターポールへ提訴というのは「あり得る」こと、日本政府はどのように今後、対応するつもりなのだろうか?

2年前