【家族のかたち】両親の離婚で誰と住むのか選択を迫られた…【家族のかたち】両親の離婚で誰と住むのか選択を迫られた…今度は自分の離婚で選ばれる立場に~その2~

https://serai.jp/living/1046935

2021/11/3

取材・文/ふじのあやこ

時代の移り変わりとともに、変化していく家族のかたち。幼少期の家族との関係を振り返り、自身も家族(パートナー)を持つようになったからこそわかるようになった思いを語ってもらいます。~その1~はコチラ

今回お話を伺ったのは、関西にある精密機械の会社で研究職の仕事をしている宏之さん(仮名・42歳)。宏之さんは兵庫県出身で、両親との6歳下に妹のいる4人家族。中学生の時に両親が離婚するも、父親とは定期的に会うことができる関係に。しかし、一緒に住んでいる時と違い、気を遣ってくる父親に戸惑いを覚えることもあったとか。

「私はもう高校生だったので、母親は一切関与せずに自由に会えていました。父親は一緒に過ごす時はいつも何かを買ってくれましたね。当時流行っていたゲームのソフトなどが多かったかな。一緒に住んでいないから、会いたいと思ってほしくて気を遣っていたのかなって思います。最初は妹と一緒だったんですが、いつからか別々に会うようになりましたね。ギクシャクという感じではないんですが、会話を探すことはあった気がします」
大人になるにつれ、家族とは疎遠に。そして、結婚して子宝に恵まれるも

大学までは実家で過ごしていた宏之さんですが、母親の提案で社会人になり一人暮らしをスタート。それ以前に父親との交流もなくなり、母親とも月に一度程度の連絡をするだけの関係になっていきます。

「父親とは携帯を持ち始めた頃から電話じゃなくメールで連絡するようになり、約束を学校が忙しいと先延ばしにしてしまっていたらいつの間にか……ですかね。本音を言うと、友人と過ごすほうが楽しかったし、もう子供って年齢でもなかったから。

でもそれは父親だけじゃなく、母親や妹とも一人暮らしを始めてからは疎遠になっていきましたね。妹なんて、携帯の番号は知っているけど、メールアドレスは知りません。一緒に住んでいる時から顔を合わせたら少し会話するぐらいだったから、急に疎遠になったというわけじゃなかったこともあり、特に気にしていませんでした」

そして30歳の時に学生時代から8年付き合った女性と結婚。結婚2年目には女の子、そのさらに3年後には男の子に恵まれます。結婚生活の始まりは順調だったと言いますが。

「下の子が2歳の時ぐらいから、嫁の態度がどうもケンカ腰なことが増えて、本当に些細なことでの言い合いが増えました。例えば、仕事帰りに買い物を頼まれて、それを確認しないで帰ってしまったら怒られる。私が『そんなに必要なものならメールじゃなくて電話してほしかった』とか言うと、『どこにいるかもわからないから気を遣った。メールは逐一チェックしろ』と言われてどっちが悪いかという言い合いになるなど、本当に改めて話すとくだらないですよね。でも、お互い言葉だけじゃなくイライラしている態度を隠さないから余計揉めるんですよ。それでも私は離婚などまったく考えていませんでした。でも、嫁から『離れて暮らしたい』と言われてしまって……」

昔の父親に瓜二つな自分。どこまでも母親に勝てない父親の存在

離れて暮らしたい=離婚とは考えていなかった宏之さんは別居を提案。別居期間中に宏之さんは一人で暮らすのではなく、実家に戻ります。しかし、これがいけなかったと当時を振り返ります。

「私は安易にすぐ戻れるだろうと、わざわざ家を新しく借りる必要はないと思ってしたことなんですが、嫁からしたら嫌だったんでしょう。母親は一応迎え入れてくれましたが、当時まで実家にいた妹は嫁と仲が良くて、最悪だとよく言われていました。それが妹の言葉なのか、嫁の言葉なのかは怖くて聞けませんでしたが(苦笑)。

結局、別居期間は1年弱で話し合いにより離婚となりました。嫁からは『一緒に暮らさないほうが、すべてがスムーズになる』と一緒に暮らすことを全否定されましたね。親権の話になった時、子供たちは当然のように母親と一緒に生活することになっていました」

親権について争うことはしなかったとのこと。それはなぜかと聞くと……。

「元嫁は手に職を持っていたし、自宅は相手のご両親の持ち家ということもあって、争ったところで勝算がまったくないですよね。それに、両親が離婚した時の自分を振り返ると、必要なのは父親よりも母親だということもわかっていましたから。まぁそれでもお父さんと一緒にいたいと子供たちが言ってくれたら全力で頑張ったんでしょうが、そんな言葉もなかったので」

離婚から3年、現在は2週間に1度のペースで会い、大型連休の時には泊りでの旅行も認められているそう。しかし、下の子は母親に会いたいと夜中にぐずることもあるそうで、「母親という存在はなんであんなに強いのか不思議でしょうがないです。私の両親は共働きだったから、ずっと付きっきりだったわけでないのに。刷り込まれているようなものなんですかね。今子供たちに気を遣っている自分の姿が昔の父親と瓜二つなんですよね……。今なら父親と尽きることなく会話を楽しめそうです」と苦笑いを浮かべていました。

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

2年前