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11/16(火) 12:31配信
幻冬舎ゴールドオンライン
(※画像はイメージです/PIXTA)
国際離婚でトラブルとなりやすいのが国境を超えた「子どもの連れ去り」。子どもの生活基盤を急変させ、有害な影響を与えてしまう可能性があります。そのような影響から守るために、日本では2014年にハーグ条約が締結されました。本記事では、家事裁判を得意としている水谷江利氏が、子どもの利益を守る「ハーグ条約」について解説します。
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国境を越え、連れ去りから守るために作られた条約
1970年ごろから国際結婚が増加したことで、一方の親による連れ去りや監護権をめぐる裁判管轄の問題を解決する必要性があることから、1980年に「国際的なこの奪取の民事上の側面に関する条約=ハーグ条約」が成立しました。2020年10月現在で世界101ヵ国が締結しています。
ハーグ条約は、次の発想に基づき、規定されています。
(1)子を元の居住国へ返還することが原則
・監護権の侵害を伴う、国境を超えた子の連れ去りは、子どもにとって悪影響であること。
・どちらの親が子の監護をすべきかの判断は、元の居住国で行われるべきであること。
こういった考えから、まずは原則として子を元の居住国へ返還することを義務付けています。
(2)国境を超えた親子の面会交流の実現のための協力
国境を超えて所在する親と子が面会できない状況を改善し、不法な連れ去りを防止するためにも、締結国が、相互に国を超えた面会を支援することを定めています。
なお、ここでの「子ども」は16歳未満です。16歳に達したらハーグ条約の対象外となり、返還命令を出すことはできなくなります。
子どもに危険が及ぶ場合は、返還拒否が認められる
原則としては子供を元の居住国に返還することになっていますが、返還することで子どもに危険が及ぶ場合などは、返還を拒否することが認められる場合もあります。返還拒否事由が認められる場合は以下の通りです。
●連れ去りから1年以上経過し、子どもがすでに新たな環境に適応していると認められる場合。
●連れ去られた時に、他方の親が監護していた実態がない場合。
●連れ去られた親が事前の同意または事後の承諾をしていた場合。
●返還により子どもが心身に害悪を受け、または他の耐え難い状態に置かれることになる重大な危険がある場合。
●子どもが返還を拒み、かつ該当する子どもが、その意見を考慮する年齢・成熟度に達している場合。
●基本的人権の観点から認められない場合。
これらは国際離婚だけでなく、国を超えて連れ去りが生じる日本人カップルにも妥当します。連れ去られた方が、国外から、日本の在外公館(領事館、大使館など)に申立を行うと、ここから日本の外務省に連絡がいきます。
日本の外務省のハーグ条約対策室が、連れ去りや面会の実現についての対応を行いますが、これについて裁判上の取り決めを必要とする場合は、さらにこれを日本の家庭裁判所に持ち込む必要があります。
水谷江利
世田谷用賀法律事務所弁護士
水谷 江利
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