なぜ女性ばかり改姓の負担が 夫婦別姓を求め、事実婚を選んだ夫婦の思い

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10/28(木) 16:01配信

京都新聞

夫婦別姓を望み事実婚を選択した藤井さん(左)と鈴木さん=京都市左京区

 配偶者同士が法的に同姓か別姓かを選べる「選択的夫婦別姓」制度が、31日投開票の衆院選で争点に上がっている。伝統的家族観や子どもへの影響を懸念する声がある一方、ジェンダー平等に対する関心も高まり、若い世代を中心に実現を望む人もいる。多様性を尊重できる社会に向けて議論は深まるか。別姓を求め、事実婚を選んだ京都市内の夫婦は選挙の行方を見つめている。

■結婚19年目、表札に並ぶ二つの姓

 京都市左京区に暮らす団体職員の藤井歩さん(49)と保育士の鈴木ユキさん(47)。結婚19年目を迎えるが、婚姻届は出していない。自宅の表札には「藤井」と「鈴木」、二つの姓が並ぶ。

 民法は「夫または妻の氏を称する」と規定するが、実際は夫婦の96%が夫の姓を選んでいる。旧姓を通称として使う人はいるが、不動産の登記や納税、各種資格などでは法的根拠のない旧姓使用は認めらない。同一人物と認識されずキャリアに支障が出る懸念もある。

■「どちらも我慢しない選択をした」

 なぜ女性ばかりが名字を変えるのか―。鈴木さんは、旧姓で働く母親たちと接する中で、改姓を強いられることへの疑念や旧姓使用の不便さを耳にしてきた。法律婚をしなかったのは、結婚を前に抱いたそんな疑問がきっかけだった。

 2人で話し合い、どちらにも改姓の負担を強いることがない事実婚を決めた。親や友人から「なぜ普通に結婚しないの」と聞かれることもあったが、藤井さんは「どちらかが我慢することのない選択をしたことが、2人の関係のベースにある」と振り返る。

■事実婚は法律上の制約も、「父親なのに悔しい」

 ただ、事実婚には制約が多い。法律婚と同様、社会保険や遺族年金の受給は認められるが、正式な配偶者と見なされない。法定相続人になれず、配偶者控除も受けられない。子どもが生まれた場合、共同親権は得られず、父親が認知しなければ父子関係は認められないなど、法律婚と扱いに大きな差がある。

 2人の間には高校生と小学生の男の子がいる。ともに鈴木さんの姓を名乗り、日常生活で大きな不便を感じたことはない。しかし、藤井さんは父の欄に名前を記した出生届を区役所に提出した当時、「法律上の父」ではないとして書き直しを求められたことが忘れられない。「父親なのに、という悔しい思いは今も変わらない」と語る。

 鈴木さんは、多様なパートナーシップや家族の在り方があるとした上で「時代に合わせ、まずは夫婦別姓を認めてほしい」と望む。藤井さんは「結婚は本人同士が自由に選ぶことなのに、思うようにできず我慢している人がいる。社会としてそんな人たちの関係を認めてほしい」と話す。

■世代間で意識差 国連から日本に「差別的」と改正勧告

 選択的夫婦別姓制度の導入を巡る議論は、男女雇用機会均等法が成立し、女性の社会進出が進んだ1980年代に盛り上った。96年には法制審議会が導入を答申したが、反対意見が強く実現しなかった。夫婦別姓を認めない法律は違憲とする訴訟が各地で起こされているが、最高裁は2015、21年に「合憲」と判断し、国会に議論を委ねている。

 法務省によると、世界で夫婦同姓を義務付けているのは日本のみ。国連の女子差別撤廃委員会は日本の制度を「差別的」とし、度々改正を勧告してきた。国の17年の世論調査では、夫婦別姓を容認する人が42・5%と過去最高になった。18~39歳で容認が5割を超える一方、70歳以上は反対が52・3%を占めている。

 衆院選では、自民党を除く主要政党が導入の方針を示す。自民の岸田文雄総裁は公示前日の党首討論で、「国民の皆さんの意識がどこまで進んでいるのか考えていくことが重要」と述べるにとどまった。

2年前