事実婚への移行を決意したモデル・牧野紗弥さんが「家庭内ジェンダーバイアス」に気づいたとき

戸籍と紐づいているのは親権制度ではなく結婚制度。単独親権も意味ないけど戸籍も意味ない。

https://news.yahoo.co.jp/articles/f5faa72a4f917e769d036cc4fa26ff4089e693cc?page=1

10/5(火) 17:50配信

集英社ハピプラニュース

男女の役割分担に対する固定観念や性差に関する偏見を示す″ジェンダーバイアス″。親の偏見や固定観念が、子どもにも影響を及ぼすことも!?

【写真】牧野紗弥さんと夫と子どもたち

家庭内ジェンダーバイアスに気づいたとき、それを解消するためにできることとは?

実際に気づき、行動したモデルの牧野紗弥さんに心の内を聞きました。

※この記事は2021年8月7日発売LEE9月号の再掲載です。
モデル 牧野紗弥さん 夫婦平等を意識したからこそ、事実婚への移行を決意

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モデル 牧野紗弥さん
1984年2月9日、愛知県生まれ。数多くの女性誌で活躍中の人気モデル。3児の母。’20年から話し合いを進め、事実婚と夫婦別姓になることを選択して話題に。
牧野紗弥さんのジェンダーバイアス解消への道のり

● 2009年 結婚
牧野姓を残したいと夫と夫の両親に伝えたが、受け入れられず諦める。

● 2010年 長女を出産
● 2011年 長男を出産
● 2016年 次男を出産

子どもが3人になり、ほぼすべての家事・育児をワンオペでこなし、キャパオーバーに。

● 2019年 夏
女性学の第一人者、上野千鶴子さんのインタビュー記事を読み、モヤモヤが晴れるような感覚に! 
わが家になかったのは夫婦平等の意識だと気づき、その後ジェンダーについて本などで知識を深める。

● 2019年 秋
夫婦ゲンカからの話し合いの末、「やってと言われたことは全部やるけど、やったことがないことを想像するのは無理」という夫の言葉で、1週間、家事・育児を夫にすべてまかせることを提案。終わる頃「あと1週続けて、もっとわかりたい」と夫から申し出があり、2週間に延長することに。

● 2021年
夫とジェンダー平等の意識を共有できるようになり、揺るぎない絆ができたからこそ、夫婦別姓にしたいと考えるように。事実婚へ移行する話し合いと手続きを進める。
夫に1週間すべての家事・育児をまかせて劇的に変化

約12年間の法律婚を解消し、夫婦別姓と事実婚に向けて移行中の牧野紗弥さん。
ことの発端は約2年前。当時、小学生、幼稚園児、保育園児の3人の子どもの育児、家事、仕事をほぼワンオペでこなしてキャパオーバーに。夫婦ゲンカが絶えなくなったと言います。

「理由はわからないけれどなぜかつらいという状況の中、社会学者の上野千鶴子さんのインタビューを読んで、これだ!と。私が苦しいのは、夫婦関係が平等じゃなかったからだと気づき、そこで初めてジェンダーについて知って、本などで勉強し始めました。

その後、夫と言い合いになった際に『パパも手伝ってくれているけど、家庭の家事・育児のほとんどを私がやっていると思う。一度私がしていると思うことを書き出してほしい』とお願いしたんです。
30個ぐらい出たものの『子どものスケジュール関係、習い事関係……』と、一番大事なところがすべて“関係”でまとめられていてびっくり。

『この先にやることがたくさんあるんだけど想像できる?』と聞くと、『やってと言われたことはできるけど、想像はできない』と。だったらと、1週間すべての家事・育児を夫にやってもらうことにしました。

結局1週間では把握ができないと、もう1週間延長。合計2週間、夫が中心で家事・育児をしたことで家庭内を俯瞰して見てくれるようになり、劇的に変化。以前よりも細やかに感謝の気持ちを伝えてくれるし、私が朝早いと伝えると率先して弁当作りを。

でも、それまでは私もいけなくて、夫に全体の流れを伝えず、部分的に頼んでいただけでした。こういう提案ができたのも、夫婦間のジェンダーバイアスに気づいたからこそだと思います」(モデル 牧野紗弥さん)

夫にもっと家事・育児をまかせたいと思っても、実際は難しいもの。牧野さんが心がけたことは?

「やはり伝え方は大切で、ただつらい気持ちをぶつけるだけでなく、丁寧に感情を言語化するように気をつけました。

何がイヤで、どうしたいのか。方法がわからないときは、一緒に考えてほしい、とも。家事・育児を実際にやってみて全体の流れを理解した経験から、夫自身もその必要性がわかれば、夫のほうから進んで取り組んでくれます。

また、片付けの本を参考に、子どものプリントや書類を誰でもわかるようにファイリング。私にしかわからない方法で管理していたので、家族の誰が見ても、誰にまかせても問題ないように環境を整えました。

細かいことですが、これも家庭内の平等を進めるうえで大切なことかなと思います」(モデル 牧野紗弥さん)

事実婚で子どもたちに選択肢があることを伝えたい

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ジェンダーに気づき、自分たちらしさをアップデートしている牧野さん。さらに、事実婚を選択する理由とは?

「12年前に結婚した際も、事実婚で自分の姓を残したい気持ちはあったのですが、当時は夫や夫の家族を説得することはできませんでした。

でも、専業主婦を経験したからこそ、家庭に専念している期間も自立を意識し続けることの大切さを実感。社会復帰を経て、家族と自分の人生を並行して考えるようになり、自分も楽しみたいと自分に焦点が合ったことが理由のひとつ。
何をもって家庭内のジェンダー対等なのかと考えると、双方の自立があれば、姓にとらわれず自分たちらしいパートナーとのあり方を作れるのではないかと思ったのです。

そして、もうひとつ大きかったのが、子どもたちにこういう道もあるんだという選択肢を見せたかったということ。

ジェンダーを知る前は、母親、妻はこうあるべきというジェンダーバイアスにとらわれていて、そこに自分を当てはめようとするからつらかった。選択肢を持って、自分で自由に選べることの大切さを痛感したんです。

子どもたちにはいろいろな選択肢があって、どれを選んでもいいと知ってほしい。それを母親として実践し、子どもたちに見せたいと思いました」(モデル 牧野紗弥さん)
ジェンダーを知って、夫婦平等の大切さに気づいた。自分たちらしいパートナーシップに

事実婚に移行して夫婦別姓になろうとしている今、さまざまなメリット、デメリットが。

「家族5人での生活は変わらないのですが、事実婚へと進めるうちに、子どもたちとの会話や私からの声かけが大きく変わったのはすごくいいことだなと。

ジェンダーの問題、事実婚のことを子どもたちと話したり、私自身が選択しようとしているからこそ、子どもたちにも自分で選べることを知ってほしくて『こういう進路も選択肢のひとつとして考えてみたら』といった伝え方ができるようになりました。
『最近ママが明るくて笑っていて楽しそう』と言ってくれたのもうれしかったな。

デメリットとしては、ペーパー離婚を経ての事実婚となるので、子どもたちが“離婚”という言葉にいいイメージを持っておらず『パパかママを選ぶの?』と不安にさせてしまったこと。

でもそれもバイアスで、必要な離婚もあるし、幸せな離婚もあるかもしれない。離婚することになるけれど、どう感じる? 気持ちの変化はある?と繰り返し子どもたちと話すよう心がけています。

また、事実婚=離婚となると、子どもの親権は共同親権が認められず、両親どちらかの単独親権になります。それに伴い、弁護士さんと相談して子どもにかかるお金や親権を持たないほうの気持ちをどうするかなど、ひとつずつ決めています。

子どもの親権と戸籍の話になった際に『子どもたちは親権がどっちになろうとも、とりあえず今の名字(夫の名字)でよくない?』と夫に言われ、モヤモヤしたことも。話し合いをせずに、とりあえずというのは違うと思うと伝えました。

深掘りしていくと、日本では、親権と戸籍が紐づいていないんです。例えば私が親権を持っても、戸籍上変えなければ夫の姓を名乗っていてもいい。かなりごちゃごちゃで、わかりにくいなという印象でした。結果的に、今の日本の制度のいろいろな問題にも気づくことができましたね」(モデル 牧野紗弥さん)

11歳、10歳、5歳の3児の育児真っ最中。大きなきっかけとなったジェンダーについては今後も勉強し続けたいそうで、大学進学なども視野に入れているそう。

牧野さんの夫婦間ジェンダー問題との向き合い方【まとめ】

1. ジェンダーについて知ると夫婦が抱える問題が見える
2. すべての家事・育児を一定期間、夫にまかせて全体を把握してもらうのも手
3. 法律に縛られない。選択肢のひとつとしての事実婚

撮影/HAL KUZUYA ヘア&メイク/麻生ヨウコ(ilumini.) スタイリスト/徳永千夏 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
※この記事は2021年8月7日発売LEE9月号『パパとママのジェンダー問題』の再掲載です。

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