フランス人が考える離婚後の「父親」の重要な役割

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10/3(日) 15:01配信

東洋経済オンライン

父親が離婚後も子どもと良好な関係を築くにはどうしたらいいでしょうか(写真:プラナ/PIXTA)

 7月にフランスから日本へ帰国した際、オリンピックスタジアムの近くの千駄ケ谷でフランス人男性がハンガーストライキをしていて驚きました。その男性、ヴァンサン・フィッショによると、彼の妻が子どもたちを連れて突然家を出て以来、彼は3年間子どもたちに会っておらず、会える見込みもないということでした。

 彼の話を聞いて、私は10年前にもこうした問題について執筆したことがあるのを思い出しました。パートナーのどちらかによるドメスティック・バイオレンス(DV)などが絡んでいて複雑な問題ではありますが、日本でも共同親権を求める動きがあることは事実です。しかし、実態は10年前とほとんど変わっていないようです。

■両親の離婚後、父と暮らしてきた

 私自身父とはとても親密な関係です。父の愛情は、私が自分の人生において自信と均衡を保つうえでとても重要な役割を果たしています。私の両親は離婚しており、父が単独親権を取りました。これは当時、とても珍しいことでした。

 私は独立心が強く、早くからフランスを離れて暮らしてきましたが、つねに父とは特別なつながりを維持してきました。彼は何度も私に会いに日本を訪れていますし、私がパリにいる時は多くの時間をともに過ごします。困った時、彼は私に頼れると知っています。もちろん逆の場合も同じです。

 そんなこともあって、今回のコラムでは父親、とりわけ父子の関係性について考えてみたいと思います。1970年代以来、フランスの離婚件数は増え続けています。結婚件数はつねに減少しており、日本とは対照的に、「同棲」がますます増えています。そして多くの子どもが未婚のカップル間に生まれています(約60%)。

 特にパリの離婚率は50%と非常に高いです。しかし、離婚をするということは、子どもたちと別れるという意味ではありません。離婚はカップルの恋物語の終わりであるかもしれませんが、子どもたちとの関係の終わりではありません。

親権に関して、フランスの法律は明確です。

 民法によると、親権は共通の権限であるため、採用された親権の在り方にかかわらず、子どもに対して両親は同等の権利を有します。親権に関しては、平等かどうかはさておき、単独親権と交互親権があります。

■子どもが双方を行き来して暮らすことも

 フランスでは、今でも母親が主な親権を持ち、父親が週末や休日に子どもたちと過ごす場合がほとんどです。「garde alternée (交互保護制度)」は理想的な制度で、2家庭間が子どもに関するすべてを共有し、子どもも母親と父親の家庭を行き来します。ただしこの場合、両親は別れた後も互いに近くに住み、子どもたちのために良質なコミュニケーションが取れる状態でなくてはなりません。

 フランス人ジャーナリストのマルコは子どもたちが幼い頃に離婚しましたが、交互保護制度を採用することで、彼と娘たちは1週間ごとに父親と母親のマンションを行き来していたと言います。彼女たちは2つの場所で両親と人生を共有しました。これが彼女たちにとって最良の策になって欲しいと、娘たちが決まった日でなくても彼の家を訪ねられるようにしたそうです。

 マルコは「papa poule(めんどりパパ=愛情深く/保護意識の強い父親)」で、娘たちの要求にはつねに応じてきたと言います。彼は娘たちととても強い関係を築いているほか、音楽など娘たちと共通の趣味もたくさん持っています。マルコは、離婚したとしても、娘たちと良好な関係を続けられるという好例です。カップル間の愛は終わりを迎えることがありますが、親子の絆が終わることはありません。

 フランスでは離婚した親が新たにパートナーを得るなど「famille recomposée(複合家族)」が増えていますが、その根底にあるべきは、子どもの幸せと個人の幸せです。

 マチュー(仮名)もそんな複合家族を築いている1人です。彼は従来の結婚をして2人の子どもをもうけましたが離婚し、今では別の2人の息子の母親であるフランシーヌ(仮名)と暮らしています。

 この新しい生活では、マチューの1カ月は複数の期間に分かれており、彼女の子どもたちだけと過ごす期間もあれば、彼女の子どもとフランシーヌの子どもを含めた6人の家族で過ごす期間もあります。もちろん最初は簡単なことではなかったそうですが、マチューの息子たちは新たに2人の兄弟を得たことを嬉しく思っており、今ではお互いを尊重しながら休暇などはともに楽しく過ごしていると言います。

■しつこいと思われない程度に連絡を取る

 東京に住んでいたアメリカ人ミュージシャンのマイクもまた、子どもと良好な関係を築いている1人です。彼は日本人妻から出産後まもなく離婚を求められた際、契約書を作り条件をつけることにしました。

 これによって彼は娘と面会を続けられるほか、何が起きても彼女と連絡を取り合うことが可能になったと言います。娘が20歳になった時、彼女はロサンゼルスの彼のもとを訪れ、彼のアメリカ人の家族と一緒に過ごしたいと言ったそうです。

 しつこくないと思われない程度に連絡を取り合う、面倒臭いと思われないようにする。そして、元パートナーとは初めの頃のように可能な限り良好な状態を維持するようにする……。私が話した離婚を経験した父親の多くは、「辛抱」が重要なキーワードだと口を揃えます。

 もちろんマイクは多くの大切な場面に立ち会えていませんし、長い間月に数日しか娘に会うことができませんでした。しかし、現在彼は愛と信頼に基づいた素晴らしい関係を娘と築いていると感じているそうです。

 「世間の認識の通り母親が命を与える存在であるならば、父親はその命に生を与える存在である」と、著名な小児科医であるアルド・ナウリは述べています。この言葉は、2年前に離婚したばかりのフランス人の父親であるスティーブンの意見を裏付けます。

 彼は20代前半の2人の息子と、もうじき15歳になる娘の3人の子どもの父親です。彼は自身を「père attentionné(面倒見のいい父親)」で、子どもたちとは近すぎない親しい関係を保っており、つねに子どもたちの「心の拠り所」でありたいと考えています。

 ステファンは、離婚を経験している多くのフランスの父親同様に2週間おきに娘と生活をし、休暇の半分を一緒に過ごしています。娘が月曜日の朝、家を出るとき彼は、「子どもたちの関係は近頃、より強く、個人的なものになってきた」と感じると言います。

 一緒の住んでいた時は娘にも自身の予定があり、家で顔を合わせていたものの、同じ時間を共有しているわけではありませんでした。しかし、今娘といる時は、完全に同じ時間を共有することができていると言います。

ステファンさんのように、離婚後のほうがはるかに興味深い関係性を築くことができている、と話す父親は少なくありません。それは、一緒に住むよりは短時間かもしれませんが、より濃密な時間を過ごせるようになったからでしょう。

■ある日突然、子どもが現れた

 デザイナーのCCは上記の人たちとは少しちがう経験をしています。彼によると、ある日突然、誰かが玄関のチャイムを鳴らし、ドアを開けるとそこには20歳の青年が立っていました。彼はなんとCCの息子だというのです。実はCC自身、子どもがいることを知りませんでした(元パートナーから伝えられていなかったのです)。

 今では父子2人の名前が社名となっている会社を2人で経営しています。CCは息子の幼少期に子育てや教育にまったくかかわることができなかったわけですが、それでも2人の大人としての関係を築き始めればいいのです。

 子どもは両親を持つ権利を有していますし、両親を必要としています。実父は子どもにとってかけがえのない役割を担っています。両親が別れることになったとしても、子どもにはどちらの親ともつながる権利があります。

ドラ・トーザン :国際ジャーナリスト、エッセイスト

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