なぜ夫は妻に無断で子どもを「連れ去った」のか 連れ去り当事者が語る夫婦の内情〈dot.〉

https://news.yahoo.co.jp/articles/4f2d5f3e651ce593d8d6b9140b03cd9cebdddfa0?page=1

8/9(月) 11:00配信
75

この記事についてツイート
この記事についてシェア

AERA dot.

夫は連れ去りについて「子どものためには最善だった」と話した。画像はイメージ(画像/PIXTA)

 離婚・別居の際、一方の親が相手に無断で子どもを連れて家を出てしまうことがある。いわゆる「子どもの連れ去り」だ。離婚・別居をしても子どもにとって親はふたり。もちろんDVや虐待など子どもに被害が及ぶ場合は別だが、夫婦の同意のない子どもの連れ去りは、海外では違法行為となることもある。一方で、夫婦の葛藤によって生じる問題から「避難」するためには、とりあえず子連れ別居するのもしかたないという意見もある。いずれにせよ、親子の断絶にもつながりかねない「子どもの連れ去り」については、慎重な議論が必要だ。連れ去った側、連れ去られた側、それぞれの言い分とは――。

【写真】「妻に子を連れて行かれた」と語るノンフィクション作家はこちら

*  *  *
 北関東在住の内田健吾さん(仮名・42歳)は、妻が仕事に出ている隙に、7歳の息子を連れて実家に引っ越した。妻には黙って転校手続きもすませ、次の日から子どもは実家の近くの小学校に通うことになった。

「僕のしたことはいわゆる『子どもの連れ去り』で、世間から非難を浴びても仕方のないことだとわかっています。でも、子どものためにはそれが最善だと思いました」

 なぜ健吾さんは、子どもを連れ去ったのか。結婚から子どもの連れ去りまでの経緯を振り返ってみたい。

 健吾さんは、地方公務員で市役所勤め。8年前に結婚した妻は介護職で、共働きをしていた。

「妻とは、友達の紹介で知り合いました。仕事に誇りをもっていて、真面目なところが気に入り、1~2年付き合って結婚。すぐに子どもに恵まれました」

 妻は産休・育休を経て、子どもが1歳で仕事に復帰。3年間は時短勤務をしていた。健吾さんは職業柄、5時には仕事がきっちり終わる。夫婦で家事、育児を分担し、生活はうまく回っていた。

「自分で言うのもなんだけど、ふつうの男性よりはかなり家事、育児にかかわっていたと思うんです。食事の支度や掃除、洗濯はほぼ半々。子どもが赤ん坊のころの夜泣きも、平日は育休をとっている妻にまかせていましたが、週末の2日間は、妻は別室に寝てもらい、僕が子どもと一緒に寝て、搾乳しておいた母乳を哺乳瓶で子どもに飲ませて対応していました。でも、不満はまったくなかった。子どもと過ごすのが、僕は楽しかったんです」

一方、妻は子育てを負担に感じているように、健吾さんの目には見えた。

「いつもイライラしていて、しんどそうでした」

 時短勤務で夫の協力があるとはいえ、仕事をしながらの子育ては確かに大変だ。

「妻は『早く夜勤をしたい』と。子どもが生まれる前は、週に1~2回ほど夜勤があったんです。夜勤の日は朝、子どもを保育園に送って行ったら少し寝て、夕食の支度をしてから仕事に行くなど自分のペースで過ごせるから、少し楽だと言うんですね。夜は入所者が寝ているので、昼間ほど忙しくないのもいいと言っていました」

 時短勤務で日勤だけだと、仕事の中心が後輩のヘルプや雑用になりがちなのも、プライドの高い妻には我慢がならないようだった。

「よく愚痴っていましたね」

 子どもが3歳になり、妻は早速夜勤を始めた。

 健吾さんは、それまで以上に子育てを担うことになった。妻が夜勤の日はもちろん、そうではない日も毎晩、お風呂に入れ、歯磨きをして寝かしつける。

「僕がお風呂に入っている間、妻が食事の後片付けとかしてくれていたんです。それはありがたいことなんですけど、子どもが『ママとお風呂に入りたい』と言うことがあって、『僕が片付けるから、一緒に入ってあげてよ』と言っても、『いい』と断る。なんかお風呂は1人でゆっくり入りたい主義らしくて。そんなことが続くうちに、子どももママとお風呂に入りたいとは言わなくなりました」

 休みの日に遊びに連れて行くのも、ほとんど健吾さんの役目だった。

「僕は土日が休みなのですが、妻が土日に休めるのは月に1~2回で、あとは平日が休みなんです。家族がそろう貴重な休みに公園とかに誘っても、なかなかいい返事が聞けず。僕は子どもを外で遊ばせたいほうなので、結局、僕1人で子どもと遊んでいました」

 そんな生活のなかで、どうしても子どもは健吾さんに懐きがちになる。

「それはそれで、気に入らないらしくて。子どもが小学校に上がったあたりから、子どもに対する当たりがキツくなり、僕に対する態度もぞんざいになってきました」

誕生日を忘れられ、当日の夕方に「ケーキ食べたかったら自分で買ってきて」とメールが来るなど、健吾さんにとっては「ないがしろにされている」と感じるできごとが続いた。健吾さんは趣味のツーリングサークルで一緒に活動している女性に、ついLINEで愚痴ってしまった。そのやりとりを、妻が見た。

「何にもやましいことがないから、スマホをそのへんに置きっぱなしにしていたんです。でも、妻は『これは浮気だ、離婚したい』と。このくらいのことで離婚だなんていやだって言ったんですけど、聞く耳をもちませんでした」

 ここまでは健吾さんの主張だが、当然ながら、妻側にも言い分はある。妻・夏希さん(仮名・39歳)の主張を審判の陳述書等から再現した。

 夏希さんは介護職で、7歳の子どもの母親である。8年前に健吾さんと結婚して以来、夫婦で協力し合いながら共働きを続けてきた。

 それなのに。ある日、夏希さんが仕事から帰ると、家にいるはずの夫と子どもがいなかった。しかも、夫と子どものものもほとんどが持ち出されていた。

「驚いて、すぐに警察に通報しました。警察官は、夫と子どもの居場所を確認してくれましたが、事件性がないので介入できない、どこに誰といるかも教えられない、と。まだ幼い子どもを連れて行かれ、居場所もわからず、私は大きなショックを受けました」(陳述書より)

 夫婦仲は悪かった。というのも、1年ほど前から夏希さんは夫の浮気を疑っていた。夫はツーリングを趣味にしていて、その仲間の1人である女性と親密な付き合いがあったようなのだ。

「夫のLINEを見たところ、性行為をにおわせるようなやりとりがありました。夫に聞いたら、夫は私の話を聞かず『何もない!』と怒鳴りました。その後も誠意のある回答は得られませんでした」(同)

 お金のことでも、不満があった。夫は住宅ローンの支払いはしてくれていたものの、家に入れる生活費は5万円。ボーナスからの追加もあったが、夏希さんとしては、もう少し家計に貢献してほしかった。光熱費や通信費、食費、子どもの教育費などで生活費がかさむため、自分の出費のほうが多いと夏希さんは感じていた。

「次の夏のボーナスからは、住宅ローンの返済分と夫婦それぞれの小遣いとして3万円ずつを抜き、残りは生活費として入れてくれるというので期待していました。それなのに、夫は約束を守りませんでした」(同)

 これについては、健吾さんにも反論がある。

「結婚してから8年間、ボーナスは全額妻に渡していました。昨年の夏だけ、夫婦のいざこざからボーナスをいったん回収したのです」

 すれ違った夫婦の溝はどんどん大きくなっていき、ついに子どもの「連れ去り」へと発展する。

【後編】では、夫が子どもを連れ去った動機を語り、それを妻はどう捉えたのかを振り返る。(上條まゆみ)

※プライバシーに配慮して一部の個人情報を修正しています。

2か月前