子供は簡単に手放さないで! 共有財産はどうやって探し出す?「成功する離婚」のために女性がまずやるべき5か条

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7/7(水) 11:12配信

文春オンライン

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 日本のシングルマザーの相対的貧困率は先進国でも例をみない高さ。女性が前向きな人生を歩み続けるために「離婚の仕方」はいま必須の知識だ。

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 発売中の「 週刊文春WOMAN vol.10(2021年夏号) 」はジェンダー&フェミニズムの大特集。その中から弁護士・森詩絵里さんの「成功する離婚」に向けてのアドバイスをお届けする。

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「配偶者との結婚生活に限界を感じているけれど、どうすれば離婚できるのか?」そんな鬱屈した想いを胸に、日々過ごしていませんか。実は、こういった相談をよく受けるのです。

 何十年も前であれば「離婚した女性は傷モノ」といった価値観がはびこっていたかも知れません。しかし、今や三組に一組が離婚すると言われる時代。現代における女性の離婚は「次の人生をイキイキと生きていくための前向きなステップ」なのではないでしょうか。

 離婚には相当なエネルギーを要しますし、本稿では闇雲に離婚をおススメするわけではありません。とはいえ、結婚生活に行き詰まったり、夫から不当な扱いを受けたりして心身ともに参ってしまった際の“人生の羅針盤”はいつでも手元に置いておくべき。そんな思いから、以下の5か条をご紹介いたします。
第1条:ファーストステップは、離婚すること自体をしっかりと決め、夫に申し入れる

 当たり前のように思われるかも知れませんが、離婚するために最初にすることは、離婚することを決意し、夫に申し入れることです。

 離婚には、以下に挙げる3つのステップがあります。

ステップ1 協議離婚
 離婚の申し入れの次に来るのは、夫婦間の「協議」です。夫婦の間で話し合いを重ね、裁判手続きを使わず任意に離婚することを協議離婚と呼びます。

ステップ2 調停離婚
 夫婦間の話し合いで解決しない場合、家庭裁判所に間に入ってもらって、調停という場で離婚の話し合いをすることができます。

ステップ3 離婚訴訟
 調停でまとまらない場合、最終的には離婚訴訟をすることができます。この段階においては、裁判官が判決で最終的な決断を下します。

 もしこれらを全て一人で行うとすれば、特に離婚訴訟などは、多くの時間と法的知識が必要となります。訴訟までいった場合、二年もの時間がかかるなんてこともザラです。

 ですので、続く第2条が重要になってきます。

第2条:弁護士などの専門家を早めに味方につける

 できれば夫に離婚を申し入れる前の段階から、法律の専門家を味方につけることをおススメします。最初に法的な知識を頭に入れておくと、有利に事が進むケースが多いからです。

 とは言っても、「どんな弁護士を選べば良いのか分からない」という方が大半ではないでしょうか。

 私が提案する、離婚事案で弁護士を選ぶポイントは、次の4つです。

(1)最後まで寄り添ってもらえる人

(2)離婚事件の経験が豊富

(3)(2)の条件を満たしていて、なおかつ最新の法制度に対応している

(4)弁護士事務所が遠方でない

 弁護士の中には、多くの案件を抱えすぎているあまり、クライアントへの“寄り添い力”が希薄になってしまう方もいます。しかし離婚は一生に一度とも言える、重要な決断です。ドライな人よりも、親身に寄り添って、一緒になって悩んでくれる弁護士を選ぶべきでしょう。

 また、離婚調停の日には、半日を弁護士と一緒に過ごすこともあります。人間的に相性の合う弁護士がいいでしょう。

 選ぶポイントの(2)と(3)ですが、家族に関する法律の分野は、法改正が頻繁に行われます。離婚案件を多く手掛けている弁護士であることはもちろんのこと、最新の法制度にも対応できているかどうかも、重要です。

 家から近い事務所を選ぶのには理由があります。弁護士は、遠方地への出張日当を請求することがあるからです。出来る限り余分な経費は抑えましょう。

 最後に、弁護士費用の相場は以下のとおりです。

*着手金(事件着手時に弁護士に支払う)の相場

 【協議】30万円位

 【調停】協議に加えて15万~20万円位

 【訴訟】協議+調停に加えて15万~20万円位

*報酬金(事件終了時に弁護士に支払う)の相場

 20万~30万円位+経済的利益を得られた場合の慰謝料の成功報酬16%(300万円未満のケース)

 経済的利益に対する弁護士報酬を除いても、離婚訴訟までいくと、弁護士費用の相場は報酬金も入れて100万円位になります。

 もし弁護士費用を払うお金が今手元にない、という場合には、国が設立した法的トラブル解決の総合案内所である「法テラス」を活用することも一つの手段です(ただし、法テラスには対応していない弁護士もいます)。離婚案件では、弁護士の初期費用や報酬について、対応してくれます。

第3条:慰謝料を当てにした離婚計画はとても危険。まず仕事を見つけて経済的自立を!

「ついに離婚を決意した! さあ、夫に離婚を申し入れよう!」――ちょっと待ってください! 先に仕事は見つけましたか?

 読者の中には、専業主婦の方も多くいらっしゃると思います。家事や子育てが忙しく、キャリアがストップしてしまったので再就職が難しい。そんなお悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 離婚後には、夫の扶養を受けることはできません。 それゆえ、私は「離婚を決めたからには、まずは仕事を見つけて、離婚しても生活していけるようにしましょう」とアドバイスしています。離婚後には別居のための引っ越し費用や生活費など、たくさんのお金がかかるものなのです。

 ご相談者の方でよくあるのが、「夫はモラハラなどで長年私にひどいことをしてきた。夫から慰謝料をとって、離婚後はそれを原資に生活するんだ」という離婚計画です。

 これはおそらく、マスコミで報じられている離婚報道の影響でしょう。世に多く報道されるのは、資産家や芸能人、アスリートなどの著名人のケースです。別れた妻が、多額の財産分与や慰謝料をもらって離婚する。そんなニュースに触れれば、何となく「離婚したら夫からたくさん資産をもらえるのかも!」と勘違いしても不思議ではないです。

 確かに相手の不倫やドメスティックバイオレンス(DV)など、慰謝料の対象になるものもあります。しかしながら、慰謝料をもらえるハードルは皆さんが思っている以上に高い。

 一方的な言い分では、裁判所は信じてくれません。そもそも、大多数のケースにおいて、夫婦それぞれにお互いに対する不満や言い分があり、裁判所としても、喧嘩両成敗的判断が下されることもままあります。

 言い分を認めてもらうためには、裁判所に「証拠」を提出しなければなりません。しかし例えばDVの場合、ご自身の中で悶々と被害に悩まれた後で、ようやく一大決心をして、ご相談に来る。そんなパターンが大半です。被害から時間が経過してからのご相談では時すでに遅しであることが多いのです。ケガの痕も消えてしまっているし、DV発生直後に病院に行ってなければ診断書もない。証拠が準備できない、という事態になるわけです。

 また、夫の不倫のケースでは、探偵費用をかけるなどして直接的証拠を押さえなければなりません。

 こうした懸命な努力をして不倫やDVの証拠保全を万全にしたとしても、受け取れる慰謝料は数百万程度が大半。一生生きていける金額とは言えません。

 経済的自立は、親権者を決める上でも必要な要素となってきます。裁判所から「経済的に安定していない親の元で子供を監護させて良いのか?」と評価されないためにも、仕事による安定収入の確保は優先的な条件となってくるのです。

第4条:親権を取りたいなら、簡単に子供を手放さない

 離婚相談の中で多くを占める項目が、親権問題です。これは、一度深刻化すると泥沼が待っています。

 親権を決める上で一番有名な原則が「母性優先の原則」です。これは、特に乳幼児の発育にとって、母親の存在がより必要であるという考え方です。

「母親なら、原則的には親権を取れるのでは?」

 そうお考えの読者の方も多いのではないでしょうか。

 ところが、確かに結果的に母親が親権を取るケースも多くありますが、親権は多くの要素によって決められますので、事はそう単純ではありません。

 その一例として「監護継続性の原則」というものがあります。特別な事情がない限り、これまでに子供が育ってきた環境を今後も継続した方が良いという考え方です。別居中の夫が「週末に野球を一緒に見に行く約束をしている」などとお子さんを連れ出し、そのまま自分の元へと返してくれない。そんなケースの場合、時間の経過とともに「監護継続性の原則」が適用されてしまったら、もう大変です!

 もちろん、裁判所では、連れ去りのケースに対応して、子供を取り戻す手続きを用意しています。しかし、取り戻すのはそう簡単ではありません。実際、私が過去に扱った事件でも、連れ去った側の父親が、母親の元に戻せという裁判所の命令に従わなかった事例がありました。このケースでは、結局、年単位で母親と子供が離れ離れになってしまったのです。

 基本的には、離婚に関する色々な事が決定するまでは、お子さんを容易に手放さないようアドバイスいたします。

 なお、別れた後の養育費についてご説明いたします。

 養育費は、お子さんが「成年に達する月まで」支払うと定めることも多いですが、最近では、「高等教育終了時まで」(つまり、大学などを卒業するまで)の支払義務を認める判例も出ており(大阪高決平2.8.7家月43巻1号119頁、福岡高決昭47.2.10判時660号60頁、東京地平17.4.15等)、この判例を受けて、「高等教育終了時まで」と定めることも多くなっています。

第5条:隠されたら共有財産の特定は困難に! 別れる前に特定を!!

「離婚したら女性側が家をもらえるものだ」と思っている方も少なくありません。ところが、財産分与は単純なものではありません。

 まず、基本的な考え方をご説明いたします。

 婚姻生活中に形成した資産は、(妻が専業主婦で)夫が稼いだお金であれ、法律的には夫婦二人の財産とみなされます。「夫婦双方の助け合いがあって、形成されたもの」だと考えられているからです。これを共有財産と言います。

 もともとは「二人の財産」という定義なわけですから、離婚後は妻の側も、基本的にその半分を受け取る権利を持ちます。これを財産分与と言います。

 ところが、たくさんの財産分与をしなければならないことが想定される夫の中には、共有財産を巧みに隠す人も! 「もっと共有財産があるはずなのに、見つからない」という相談を妻から受けることがあります。

 厄介なのは、一度隠された資産はなかなか見つけるのが難しいということです。

 弁護士会照会制度で、銀行に夫の口座がないか全店照会をかけてもらえませんか、という相談を受けることもありますが、銀行もプライバシー保護の観点からそう簡単には教えてくれません(銀行が口座情報の開示に応じるには、いくつかの要件を満たさなくてはならないからです。なお、全店照会による銀行口座の特定は、本稿執筆時点ではメガバンクのみが対応しており、地方銀行や信用金庫・ネットバンキングは基本的に対応していません)。

 別居してしまうと、財産を探すことはより困難になります。一方、同居中であれば、共有財産の通帳や権利証などが家の中に転がっていて、財産を把握できることもありますよね。

 別れる前、場合によっては離婚を表明する前においても、共有財産の内容を把握しておくことが必要なのです。

 ちなみに、夫が働いている会社で加入している厚生年金も共有財産の対象です。離婚から原則2年以内に日本年金機構の年金事務所に請求すれば、保険料納付記録の最大2分の1を分割してもらうことができます(按分割合を何割にするかで夫婦間で揉めることもあるのですが、今回は紙幅に限りがあり割愛します)。

 年金分割の手続きは、年金事務所(または共済組合等)に「年金分割のための情報通知書」を発行してもらうところからスタートします。まずは、年金事務所に、「離婚したので年金分割をしたいのですが」と電話してみましょう。離婚後の老後の生活をより安定させる意味でも、見逃せない制度の一つです。

(取材・構成 鈴木英寿)

もり しえり/1989年茨城県生まれ。インテグラル法律事務所パートナー。早稲田法学部、早稲田大学法科大学院卒業。シングルマザーの家庭に育った経験から、依頼者の立場に寄り添った離婚相談を心がける。

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