「子の連れ去り」という言葉が乱用されている本当の理由【DVサバイバーのソーシャルライターが解説】

日本は男性優位社会だから、女性の自力救済は何が悪い、という社会構造と個人の責任をはき違えた記事です。
本来なら、男性優位社会だから、女性が自力救済しなくてすむように、制度を変えましょう、
あるいは、男性優位社会を変えるために、男性に育児をさせましょう、
もしくは、主たる監護者にならなくても子どもと子育てが継続できるようにしよう、
となるはずです。
もちろん、別居親のヘイトには関係あっても、男女平等とは関係ありません。

https://news.yahoo.co.jp/articles/e39fb0cb645874abd72f113e71e3cc9274692eb2?page=1

6/9(水) 7:16配信

webマガジン mi-mollet

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自らもDVサバイバーでシングルマザーのソーシャルライター・松本愛さんが、DV当事者の「声」を丹念に拾い上げ、日本のジェンダー意識の遅れの実態をレポートします。

【DVアリ地獄】マザコン夫による経済的DVの実態

※個人の特定を避けるためエピソードには脚色を加えている場合もあります

「子の連れ去り」という言葉の定義とは?

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DV夫に家から追い出され子どもに二度と会えなくなったAさん、別れても終わらない元夫からのリーガルハラスメントに弁護士費用が百万円単位で消えていくBさん。

そして続く今回のCさんもまた、一度は愛したはずの人にアリ地獄に引き摺り込まれた一人です。なんといっても産んだばかりの子どもを父親に無理やり連れ去られたのですから。

今後、取材に協力してくださる方が増えるにつれ、普通に暮らしていては想像もつかない話をどんどんお伝えすることになると思います。しかしそれは誰の後ろにもぽっかり開いている深い穴。法律やその運用、社会通念などから生まれた深い穴ですから人ごとではありません。一歩足を踏み外せば誰でも落ち込む可能性のある穴なのです。

さてそんなわけで、今回はCさんの話に入る前に、まずは「連れ去り」という言葉の定義から整理をしてみたいと思います。というのも昨今、巷に「子の連れ去り」という言葉が溢れ、不適切に使われているから。例えば、主に子どもの世話をしていた妻が夫からのDVに耐えかねて子どもと家を出たときに「連れ去り」と申告する父親が増えているといいます。

弁護士さん曰く、弁護士相談でも、以前は「妻子が家を出て行ってしまって」としょげた様子だった夫が、最近では「妻に子を連れ去られました」と怒りながら事務所を訪れることが多くなったとのこと。

その理由はDV加害者によるロビー活動や報道関係者への働きかけにありました。みなさんも新聞などでもご覧になったことはありませんか?「離婚後、子どもと会えない父親急増、連れ去り防止に対策が急がれる」などの事実とは異なる煽りタイトルで、離婚をして親権を失うことは子供に自由に会えなくなること、そしてそれは自らの権利を侵害されていることだと、大手メディアが報じることが増えているからです。

例えば、令和2年9月27日付の東京新聞には 「背景に単独親権制度」という見出しで 「『同意なき連れ去り』は深刻化している。 (中略)仕事から帰ったら家がも抜けの殻』『妻(または夫)が子どもを連れて出て行ったきり戻ってこない』と不意打ちのように子と引き離されている。なぜこのような連れ去りが横行するのか(中略)作花知志弁護士は 『根底には離婚後、単独親権しか選べない日本の⺠法に問題があり(中略)連れ去った者勝ち』を肌で感じてきた。(中略)家族法に詳しい京都大学の棚瀬孝雄名誉教授は 『(中略)配偶者の暴力があって子を連れて家を出なければならない場合は必ず警察を呼んでその保護下で家を出る(中略)ことが必要だ」などと書かれています。

たとえ夫婦間にDVがあっても、それは子どもには関係ない。殴られている最中に通報するか、夫の同意を得てから別居をするべきだ、それができなければ「連れ去りだ」というのですからえらいことです。

「女性が男性に支配されるのが当たり前」な現状

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DV夫からの同意!

どうやったら取れるというのでしょうか。だってDV夫は同意などしない。DVの本質は支配であり、それは同意の真逆にある概念だからです。

しかしそのDVの本質と、被害者のSOSは社会には届かない。

なぜなら連載初回でお伝えした通り、

“共働き率が7割を超えるものの、いまだ家事育児の8割を女性が担い、男性の育休取得率は1割以下。女性の就業時間が特別短いわけでもないのに女性の半数近くの平均年収は200万円を下回ります。その上、DVそれ自体を固有の犯罪として取り締まる法律はなく、たとえDVを受けても、一般的な暴行や傷害としての立件のハードルを超えられない限り、被害者には、そのDVが「命に関わるものであり、継続性がある」と自ら証明した上で、家から逃げ出すことを認めてもらうしか環境を変える道がありません。おまけに配偶者暴力防止法(いわゆるDV防止法)による支援措置を受けていてもなお、実態や背景を見ない家庭裁判所は、独自の論理で加害者と子供との面会交流を命じるのです。そしてその面会に、公的なサポートは一切ありません“

これが今の日本の現状であり、女性は社会的な仕組みの中で男性に支配されるのが当たり前になっているからです。

しかしよく考えてみてください。婚姻中「この人ともう暮らせない」と思ったとき、別居するのに相手の許可が果たして必要なのでしょうか? 否、そんなものは必要ありません。そして自分が主たる監護者であったとき別居に際して、子どもを連れていくのは「連れ去り」でしょうか? いいえ、むしろそれは監護者の義務といえるでしょう。

(もちろん子を置いていくこともできます。その場合、最初に主たる監護者を務めていなかった方の親が全く育児に参加しない=育児放棄をしていたとしてもそれは咎められず、子を置いて家を出た主たる監護者の方が義務を放棄したとして親権争いでは不利になるようです。しかしこれは離婚が認められるかどうかとはまた別の話です)

では「連れ去り」とは、なんなのか。次回からは、産んだばかりの我が子と引き離されたCさんの話の戦いの記録を紹介しましょう。

(次回につづく)

松本 愛

3年前