福原愛の離婚で注目された「共同親権」は日本でも可能なのか 台湾の弁護士が語る「日本との違い」〈dot.〉

https://news.yahoo.co.jp/articles/c26916fda1e69a2ef24bf53be84a3f0049816a70?page=1

7/23(金) 16:00配信

AERA dot.

離婚した福原愛(右)と江宏傑(C)朝日新聞社

「福原愛さんの離婚のニュースで、共同親権という言葉を見て、本当に台湾がうらやましく思いました」

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 こう語るのは、10年ほど前に1歳の子どもの親権を失った会社経営者のKさん(50)だ。元妻は6歳年下の地方公務員。離婚の際、元妻の不倫疑惑もあったというが、Kさんは親権を取れなかった。

「入籍直後、他の男と関係を持っているという証拠が出てきました。家事はほとんどやらず、独身時代のように飲み歩いてばかり。子どもが産まれたら、母という自覚が生まれて、真面目になってくれるかと思ったんですが、出産後は育児放棄のような状態でした。なので家事育児はほとんど私が担当しましたが、当然、夫婦関係は険悪になっていきました。すると『あなたに受けた暴力が』などと言い始め、私に無断で子どもを連れて家を出て行きました。私からみれば“連れ去り”です。そして離婚協議の際、私をDV男として仕立て上げようとしたんです」

 Kさんはその後、家庭裁判所で審判という手段をとり、妻のDV主張が虚偽だということを裁判官に認めさせた。何とか月一回5時間の面会交流は認められたが、親権を取ることはできなかった。

「もし日本に台湾のような共同親権があれば、妻の行動はまったく違ったものになっていたでしょう。親権を確実に得るために子どもを連れ去ったり、あることないことを裁判で主張したり、長い年月をかけて法廷で激しい争いをしたりすることはなかったはずです。福原愛さん元夫婦のように、共同親権でスピード決着できる台湾の制度だったらどんなに良かったかと思います」

 7月9日、卓球の福原愛(32)が、夫の江宏傑(32)との離婚成立を連名で報告した。その中で、次のような一文が目を引いた。

「私共の子供達については、共同親権となりますので、少しでも子供達への影響を減らすことができるよう、それぞれ努力いたします」

 共同親権、という用語はSNSなどでトレンドワードとなり、一部の報道番組でも取り上げられた。

日本では離婚後は単独親権になると法律で定められている。夫婦で親権を争うケースも多いが、そのうち約9割は母親が親権を持つ。一方で、海外では多くの国が共同親権を認めており、日本でも導入に向けた議論が始まっている。

 2016年9月に結婚した福原は、夫の住む台湾に移住し、翌17年には長女、19年には長男をもうけた。結婚後も夫婦で仲むつまじい姿を披露していたのだが、今年3月に女性週刊誌が福原が日本で年下男性と“不倫お泊まりデート”をしていたと報道。一方で、別の週刊誌は夫の江の「モラハラ疑惑」を報じるなど、泥沼化の様相をみせていた。

 夫婦の内実は異なるが、妻に不倫疑惑、夫にはDVの疑いという点だけみれば、冒頭のKさんと同じようなケースともいえる。

 だが、Kさんは離婚まで長期化したうえに親権は母親、月一回の面会しか認められなかった一方で、共同親権制度がある台湾に住む福原元夫妻は、離婚後も夫婦で子どもを養育することでスピード決着した。

 日本と台湾の差が如実に表れているが、共同親権であれば、福原元夫妻が記したように「子供たちへの影響を減らすこと」は可能なのだろうか。
 趨勢法律事務所(台北)の代表弁護士である徐崧博氏に台湾の離婚事情について聞いた。

――日本では、離婚届にお互い押印し、サインすることで、成立する協議離婚が全体の約9割です。台湾はどうですか。

 お互いにもめることがなければ、協議離婚が主流です。離婚届に2人がサインし、判を押して提出すれば離婚が成立します。一方、もめれば裁判や調停での離婚となります。裁判離婚になるとお互い、主張の応酬となり、何年もかかってしまう。泥沼化することが珍しくないという点でも日本と変わりません。

 日本と台湾の違いは、共同親権がある点です。台湾の共同親権の制度は1996年の法改正で完備されました。それ以降、協議離婚、裁判離婚を問わず、共同親権という選択肢はよく選ばれます。もちろん、かなりもめていれば双方が単独親権を主張したりしますが。

――共同親権になるとどう違うのですか?

 DV、親が犯罪者である場合などは共同親権が認められない場合もありますが、日本のように、すべて単独親権ということはありません。例えば、銀行口座の開設、進学先をどこにするのかといった、法律上、子どもの人生の重大な選択において、共同親権者である2人の合意が必要になります。しかし、共同親権が採用されても、主要扶養者という概念があります。主要扶養者は、普段と子どもと一緒に生活して、日常生活に関わることについては、主要扶養者に決定権があります。

――離婚後の養育については、欧米のように、両親がそれぞれ一週間交代でといった感じなんでしょうか?

 協議離婚の場合、子どもに関する養育計画のある離婚協議書を持って区役所で離婚登記できるので、実際の養育計画は個々の自由裁量となります。裁判離婚の場合、裁判官は、今まで双方の生活状況を十分踏まえた上で総合的に養育計画を決定します。共同親権であれ、単独親権であれ、一方は普段の主要扶養者として子どもを養育し、一方は指定されている時間帯で子供と面会、過ごせるというケースが最も多いです。養育計画があっても、事後的にもめているケースでしたら、養育計画を一方が守らないというケースも珍しくありません。

――国際的な離婚の場合は?

 一緒に住んでいなくても、小学生、中学生までの間は台湾、その後は日本といった形で養育を進めたり、夏休みや冬休みといった長期休暇のときに普段一緒に住んでいない親とすごしたり、というケースを今までに見てきました。

――「連れ去り」についてはいかがでしょうか。日本の場合、別れるにあたって相手方の同意を得ずに子供を連れて家を出る「連れ去り」が近年、社会問題化しています。

 片方の親に内緒でもう片方の親が「連れ去り」を実行すると、誘拐罪で起訴される可能性があります。台湾で公開されている過去5年間の刑事判決の中で、片方の親が子どもを連れ去ったことを理由として、誘拐罪に該当する有罪判決が10件以上あります。しかし、ハーグ条約に加盟していない台湾から外国へ子どもを連れ去られても、台湾当局は何もできない可能性が高いです。もちろん台湾に戻ってこられたら、話は別ですが。

福原の不倫疑惑が報道された際には「台湾に子どもたちを残して不倫なんて」と批判する声がSNSなどで多く上がった。報道をみる限り、福原は離婚後も台湾には戻らずに、日本に滞在しているようである。徐氏が語ったケースのように、普段は台湾で夫家族が子どもの面倒をみて、長期休暇などは日本で福原が養育をするという計画なのだろうか。

 アメリカ人との間に娘がいる女優の武田久美子(52)は、離婚後、アメリカに住み続けている。というのも、子育てを共同で行うため、近隣で暮らすことが求められ、離婚後に外国に引っ越すことは許されないからだ。共同親権といっても、その国ごとに運用はさまざまで、離婚後の家族のありようもまた多様なのだ。

 いずれにせよ、福原の離婚が日本の共同親権導入の議論に一石を投じたことは間違いないだろう。今後、どのように子どもたちを共同養育していくのかが注目される。(西牟田靖)

3か月前