日本人の妻に連れ去られた子どもに会いたいと、フランス人の夫であるヴィンセント・フィショ氏(39歳)が、東京オリンピックの開会式が行われる国立競技場に近いJR千駄ヶ谷駅前で、抗議のハンガーストライキを始めてから7日目。フィショ氏は体力を振り絞ってマスコミの取材に応じるなど、抗議行動を継続している。
フィショ氏は、日本人の妻と日本で暮らして居たが、3年前に妻が子どもを連れて姿を消し、それ以後消息がつかめていない。国連の「児童の権利に関する条約」では、締結国は児童がその父母から分離されないことを確保し、父母との接触を維持する権利を尊重する(第9条)と規定され、フランスも日本もこの条約に批准している。
ハンスト7日目を示す立札©Ryouin Okuda
フィショ氏は日本の当局に捜査の協力を依頼したが、日本では子どもを夫か妻かどちらが育てるかは家庭内の問題として扱われることが多いため、積極的な協力は得られなかった。
このため、フィショ氏はフランスのマクロン大統領がオリンピック東京大会を機に来日することから、マクロン大統領に直訴して、日本政府に善処を要請してもらうため、2021年7月10日から抗議のハンガーストライキを始めた。
7日目の7月16日朝には、在日フランス人会の代表、ジャンマルク・リスネ氏も激励に訪れ、「在日フランス人はフィショさんを支援している。子どもはフランス国民でもあり、フランス大使館にマクロン大統領に取り次ぐよう働きかけている」と話した。
7日目のフィショ氏を激励する嘉田由紀子氏参議院議員©Ryouin Okuda
また、日本の参議院議員の嘉田由紀子氏も激励に訪れた。欧米では別れた夫婦が一方的に子どもを連れ去ると「誘拐」とされているが、日本では国内法が整備されておらず「犯罪」とはされない。嘉田さんは参議院法務委員会で、「児童の権利に関する条約」の批准国としての法整備を的確にすべきだと政府を追及している人である。
日本のメディアの取材はまだ余り多くはないが、この日は京都新聞が取材に訪れるなど、抗議行動への関心と支援の輪は次第に拡がっている。
1939年生まれ。NHK記者、日本放送労働組合委員長、国際ジャーナリスト連盟(IFJ)東京事務所代表、国際ジャーナリスト連盟(IFJ)アドバイザー(1995年~2004年)を経て、現在、国際ジャーナリスト連盟(IFJ)東京フリーランスユニオン代表、IFJ会員・フリーランスジャーナリスト。主とするテーマは「メディアと人権」。