泥沼化を避け円満離婚に導く「離婚テック」米国で次々と

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7/16(金) 10:11配信

日経xwoman

「離婚テック」をご存じだろうか。米マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ氏や米アマゾン・ドット・コムの創業者であるジェフ・ベゾス氏など、米国の大富豪が相次いで離婚し、財産分与の額が話題になった。米国では一般人でも離婚に多額の費用と時間がか…

「離婚テック」をご存じだろうか。米マイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツ氏や米アマゾン・ドット・コムの創業者、ジェフ・ベゾス氏など、米国の大富豪が相次いで離婚し、財産分与の額が話題になった。米国では一般人でも離婚に多額の費用と時間がかかる。精神的な苦痛もある。こうした離婚に関わる課題をAI(人工知能)などのテクノロジーで解消するスタートアップがある。

【関連画像】Ensembleのアプリ画面

 米国で離婚するのは手続きが煩雑で、弁護士などの専門家に支払う費用がかさみ、時間もかかる。円満離婚でも居住地の裁判所に認められないと離婚が成立しないのが一般的だからだ。平均で200万円程度の費用がかかるという。

 米国ではこうした離婚を取り巻く課題をAIなどのテクノロジーで解決するスタートアップが存在する。いわば「ディボース(離婚)テック」である。提供サービスには大きく3つある。(1)共同親権を持つ親と子を支援するサービス、(2)離婚後の家計のシミュレーション、設計のサービス、(3)手続きや円満解決を支援するサービスだ。

 特に、共同親権を持つ親と子を支援するサービスは、各社がサービス開発でしのぎを削っている。
両親と子どもを、AIやアプリで仲介

 カリフォルニア州ロサンゼルスのハイフナス(Hyphenus)が提供するアプリ「コーパレンター(coParenter)」は両親同士や子どもがメッセージをやり取りしたり、スケジュールや必要経費の支出可否を調整したりできる機能を提供している。お迎えの際などに子どもの位置情報も管理できる。

 特徴は2つある。1つはAIが発言をいさめてくれること。激高して相手に不適切なメッセージを送ろうとすると警告してくれる。問題が複雑化した場合には、弁護士など専門家のアドバイスを受けることもできる。

 もう1つは片方の親だけでもサービスを利用できることだ。両方の親がサービスを利用することに同意しない場合もある。サービスは1ユーザーで年間払いの場合119.99ドル(月払いの場合12ドル99セント)。2ユーザーで年間支払いの場合は199.99ドルとなる。

 同じくロサンゼルスのアンサンブルテクノロジーズ(Ensemble Technologies)は、子育て費用など、共同親権を持つ両親の間のお金のやり取りをスムーズにする。

 養育費は食料や食事、住居、衣類のみを対象としているため、学費や医療費が発生すると、両親の間でテキストメッセージを何度もやり取りして負担を決めることが多いという。アンサンブルは子どもがスマホアプリで、生活にかかった費用をレシートなどで両親に報告。その上で、両親の間で取り決めた配分による負担金額を提示する。

離婚後の家計をAIが予測

 離婚という人生でもつらい場面に直面した人は、離婚後の生活について冷静に計画できない場合があるという。それをAIで支援していこうというスタートアップもある。これが離婚テックの2つ目のサービスだ。

 デトロイトのディボースAI(Divorce AI)は離婚後の家計や生活をAIでシミュレーションできるサービスを提供している。子どもの養育費、分与する財産や売却資産などの情報を入力することで、リポートを生成してくれる。

 精神面だけでなく、家計にも大きな影響を与える離婚後の生活について、利用者が事前に備えることができるようにするのがこのサービスの目的だ。弁護士を雇う場合でも、リポートをベースに相談することで費用が抑えられるとしている。

●円満離婚にプライベートジャッジ

 離婚テックの3つ目が、専門家による手続きや円満解決の支援のサービスだ。

 シリコンバレー発のウィボース(Wevorce)は、円満離婚の手続きを支援するスタートアップ。法律家などの専門家による「プライベートジャッジ」のサービスを提供している。

 プライベートジャッジのサービス内容はこうだ。円満離婚を望む夫婦がそれぞれのアカウントを作って、ウェブサイトに必要な情報を登録。親権や財産分与の条件提示を受ける。両者がそれらに同意することで、プライベートジャッジの弁護士が調整に動く。従来式の離婚は裁判所への申し立てが必要だが、プライベートジャッジでは、最終的な判決を下す権限を認められた弁護士が対応することで、裁判所に出向かず、自宅や事務所で、離婚の手続きを終えることができるのが特徴。

 さらに、すべての情報が裁判所に記録されるのではなく、財産分与の内容や子どもの居場所など、プライバシーにかかわる情報は非公開になる。円満な離婚をスピード解決することに活用される(※編集部注:プライベートジャッジが認められないケースもある)。

 サービスの利用料金は3450ドル。「法廷に行かなくてもよく、プライバシーが守れる」を売り文句にする。離婚後に親権を共同で持ち続ける案を提供するサービスは5850ドルとなっている。

●離婚家族と離婚専門家をつなぐ

 円満離婚にも活用できるが、係争になりそうな場合に心強い情報源となりそうなのが、ニューヨークのディボースフォース(DivorceForce)だ。

 利用者と専門家のコミュニティを構築している。離婚についての法制度、家計、住宅、子ども、メンタルヘルスなど約20種の情報を記事として提供した上で、それぞれに関連する専門家のリストを提供する。

 ディボーステックの市場は米国でも現時点で大きくない。各スタートアップの資金調達は初期のシードやシリーズAの段階(起業前や顧客が増え始める成長段階)がほとんどだ。スタートアップ情報を集計している米クランチベースによると、ウィボースが650万ドル、アンサンブルが300万ドル、ディボースフォースが290万ドルである。

 米国で離婚したある日本人男性は「相手側の弁護士にいいように条件を決められた」と憤慨する。今回紹介したようなディボーステックを利用すれば、専門家側に偏った情報の非対称性による不公平さをある程度は是正できるだろう。また、離婚後の家族の生活や幸せを継続的に支援する視点も欠かせない。

取材・文/市嶋洋平(日経BPシリコンバレー支局)

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