私が「法的効力のない」同性パートナーシップ制度を利用したわけ

離婚家庭も自治体に二世帯家庭登録を求めましょう。

4/17(土) 21:15配信

コスモポリタン

Saya Yamaga

全国の自治体に「同性パートナーシップ制度」ができた、というニュースを聞いたことがある人は多いはず。でも「この制度を利用した」と、身近な人から聞いたことがある人はまだ少ないのではないでしょうか。

付き合って5年になる私とパートナーは、先日、世田谷区で「同性パートナーシップ宣誓」をしました。この連載では、実際に同性パートナーシップ制度を利用してみて、ぶっちゃけどうだったの? という話を、超個人的なストーリーを交えながら、時系列でしていこうと思います。

今回は、「同性パートナーシップ制度」を利用しようと思ったきっかけについて。

私の話が少しでも、同性パートナーシップ制度を知る人が増えるきっかけになり、「利用してみたいけど不安」という人たちの役に立てたら、と願っています。
一番はロマンティックな理由ではなく…

Saya Yamaga

私の住む東京都世田谷区でいわゆる「同性パートナーシップ制度」ができて、5年以上が経ちました。今年2月13日、付き合って5年になる私とパートナーは、それまで迷いながらもしていなかった「同性パートナーシップ宣誓」をしてきました。

なぜ、今さらパートナーシップ宣誓をしようと思ったのか。「愛する人と結ばれたかったから」。それも一つの理由。「パートナーとして受けられるメリットがあるから」。それも、少しはあるかもしれません。

でも、私がパートナーシップ宣誓をしようと思った一番大きな理由は、夢もロマンもない話だけれど、「両親にカミングアウトするため」でした。
「同性同士なんておかしい」と言いにくくなる

Saya Yamaga

私は、初めて女性と付き合った大学1年生のときから約20年間、離れて暮らす親にカミングアウトしていませんでした。親しい友人や仕事関係の人などには機会があれば言っていたし、本名でセクシュアルマイノリティに関する記事を書いたりもしていた。それでも、親にだけはどうしても言えなかった。

私の両親は、保守的な地方都市に住む常識人で、とうてい受け入れられないだろうと思っていたから。カミングアウトしたいという気持ちはあったけれど、どこかで「親を驚かせ、悲しませてまで言う必要はない」とも思ってきたんです。

ところが、この20年の間に、兄も弟も結婚して子どもが生まれ、両親も年を取り、状況に変化が。ここ数年、両親から「地元に帰ってきたら?」と頻繁に言われるようになった私は、帰れない理由をうまく説明できずにいました。東京で女性のパートナーと暮らしていることを親に隠しながら、今後の人生を生きていくことに限界を感じ始めたんです。

でも、いざカミングアウトしようと思ったときに、単に「実は女性のパートナーと一緒に暮らしています」では、「は? 何言ってるの?」と、なりかねない。そこで、「自治体の同性パートナーシップ制度」という後ろ盾を使えば、親は反対も否定もできないだろう、と考えたんです。公の制度で認められているのに、「同性同士で付き合うのはおかしい」とは言えないだろう、と。

法的効力のないパートナーシップ制度

逆に、パートナーシップ制度のある区に住んでいるのに、なぜ今までパートナーシップ宣誓をしなかったのか。それはもう「めんどくさいうえにメリットがない」から。

たとえば、私のパートナーは頻繁に帰る実家の自治体に住民票を置いたままにしているのだけど、世田谷区でパートナーシップ宣誓をするには、住民票を世田谷区に移す必要がある。

また、世田谷区の場合、パートナーシップ宣誓をするためには、本人確認資料のほかに、他の人と婚姻していないことの証明のために、戸籍抄本を本籍地から取り寄せなければいけない。

さらに、パートナーシップ宣誓をしたい3日前までに、区の人権・男女共同参画担当課に電話かFAX、または窓口で予約をしなければいけない。

そこまでしたところで、パートナーシップ宣誓には基本的に法的効力がない。

世田谷区のサイトには、パートナーシップ宣誓とは「同性カップルの方の気持ちを区が受け止めるという取組み」との説明があります。つまりただ単に、区が気持ちを受け止めてくれるだけであって、宣誓をしたところで配偶者扱いにはならないし、遺産相続もできない、共同親権も持てない、外国籍のパートナーの在留許可ももらえない、配偶者としての各種控除も受けられない、病院で親族として面会できないことだってありえる。

同性パートナーシップ制度は、男女の婚姻制度とは似て非なるもの。パートナーシップ宣誓が効力を発揮するかどうかは、対応する企業や担当者などの善意に委ねられている部分も。これまでも、してもいいかなとは思っていたけれど、わざわざしようと思うほどのきっかけが、私たちにはありませんでした。
公認されることが生きる力になる

Saya Yamaga

それでも、もちろん制度がないよりあったほうが断然いい。今回のように、カミングアウトするときの強力な後ろ盾として使えるだけでなく、二人のパートナーシップを続けていくうえでの一つの区切りにもなります。

今の日本では、結婚して新しい家族を持って初めて一人前という価値観が、いまだに根強く残っています。同世代の友人や知人が結婚し、出産していくなかで、同性カップルには「結婚」という人生のステップが用意されておらず、取り残されたような気分を味わうことも。

つまり、二人のパートナーシップを公にし、まわりの人に祝福してもらい、新しい家族として認識してもらう、そのタイミングがありません。これでは、不安定な地面の上にたった2人で立たされているような、心もとない気持ちになってしまいます。

同性パートナーシップ制度は、自治体が公に「2人がパートナーとして今後支え合って生きていくと誓ったこと」を証明してくれる。このことは、その後の人生を生きていくうえでの自尊感情に大きく影響してきます。

もっと言えば、制度を利用しなくも、パートナーがいなくても、当事者でなくても、同性カップルの存在を公に認める制度が社会にあることが、とても重要だと私は考えています。「自分たちはここにいていいんだ」「多様な生き方が認められる社会なんだ」と思えることが、子どもたちや若い世代はもちろん、大人たちにとっても、生きるうえで大きな力になるはずです。

現在、全国100以上の都道府県や市区町村に、同性パートナーシップ制度があります。それに、検討中の自治体も多い。今後もっと制度を用意する自治体が増えてほしいと思うし、より多くの人が安心して利用できる制度であってほしいと思います。

山賀 沙耶

3年前