ジュリスト特別座談会 家族法の改正に向けて
下記は、「ジュリスト」の2006.12.15、2009.9.1号で、民法学者の座談会の中で検討、提案された、改正親権法の条文です。メンバーは以下です。
内田 貴/大村 敦志/角 紀代恵/窪田 充見/高田 裕成/道垣内 弘人/中田 裕康(司会)/水野 紀子/山本 敬三/吉田 克己
■ジュリスト(No.1325)2006.12.15
水野・条文素案
(監護及び教育の権利義務)
M-1条 親権を行う者は、子の利益のために、子の監護及び教育をする義務を負い、権利を有する。
(親権者)
M-2条 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2 子が養子であるときは、養親の親権に服する。但し、養親と父母の一方が婚姻中は、夫婦が共同してこれを行う。
3 親権は、父母が共同してこれを行う。但し、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が、これを行う。
4 父が認知した子に対する親権は、父が母の同意を得て戸籍に共同親権行使の届け出をしたときに限り、父母が共同してこれを行う。
5 父母が親権行使の事務について協議が整わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父若しくは母の請求又は職権によって、親権行使の態様を定めることができる。
M-3条 協議上の離婚をするときは、その協議で、親権行使の態様を定めなければならない。
2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、親権行使の態様を定める。
3 父母が別居しているときは、父若しくは母の請求又は職権によって、家庭裁判所は一方の父母の親権の全部又は一部を停止させ、また停止させた職権を復活することができる。
4 親権を停止させた父母は、子の利益を害する重大な理由がない限り、子との面会及び交流をすることができる。
(祖父母等の面会交流)
M-4条 祖父母は、子の利益に反しない限り、子との面会及び交流をすることができる。家庭裁判所は、子の利益に必要な場合には、子の養育にかかわる正当な利益をもつ第三者の請求によって、第三者と子の面会及び交流に必要な措置を命じることができる。
(体罰の禁止)
M-5条 子は暴力によらず教育される権利を有する。→(懲戒権削除)
M-6条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その行為の許可を家庭裁判所に請求しなければならない。
2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合においては、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その行為の許可を家庭裁判所に請求しなければならない。
3 家庭裁判所は当該利益相反行為が子の不利益になる場合には、その行為を許可しなければならない。
4 家庭裁判所の許可を得ずになされた利益相反行為は、無効とする。
(相続財産の管理)
M-7条 親権を行う父母は、自己の管理下にある、子が死亡を原因として取得した財産を処分するにあたって、家庭裁判所にあらかじめ許可を得なければならない。
(親権の失権及び委譲)
M-8条 父又は母が、親権を濫用し、子を放置することによって、子の身体的、精神的健康を危うくしたときは、家庭裁判所は、子又は子の養育にかかわる正当な利益をもつ者からの請求若しくは都道府県知事からの請求又は職権によって、その親権の全部若しくは一部を失権させ、又は子を養育する者若しくは都道府県知事に委譲させることができる。
■ジュリスト(No.1384)2009.9.1
E-1条(現行820条)親権を行う者は、子の利益のために、子の監護及び教育をする義務を負い、権利を有する。
E-2条(現行818条) ① 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
② 子が養子であるときは、養親の親権に服する。ただし、養親と父母の一方が婚姻中は、夫婦が共同してこれを行う。
③ 親権は、父母が共同してこれを行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が、これを行う。
④ 父母の一方の配偶者は、配偶者である父母が子と同居して親権行使を行う場合には、必要に応じて配偶者に代理してこれを行う。
⑤ 父が認知した子に対する親権は、〔本条3項の規定にかかわらず、〕父が母の同意を得て戸籍に共同親権行使の届出をしたときに限り、父母が共同してこれを行う。
⑥ 父母が親権行使の事務について協議が整わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父若しくは母の請求又は職権によって、親権行使の態様を定めることができる。
E-3条(現行819条) ① 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、親権行使の態様を定めなければならない。
② 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、親権行使の態様を定める。
③ 父母が別居しているときは、父若しくは母の請求又は職権によって、家庭裁判所は一方の父母の親権の全部又は一部を停止させ、また停止させた親権を復活させることができる。
④ 親権を停止された父母は、子の利益を害する重大な理由がない限り、子と面会及び交流をすることができる。
E-4条 祖父母は、子の利益に反しない限り、子と面会及び交流をすることができる。家庭裁判所は、子の利益に必要な場合には、子の養育にかかわる正当な利益をもつ第三者の請求によって、第三者と子の面会及び交流に必要な措置を命じることができる。
E-5条(現行822条削除)子は暴力によらず教育される権利を有する。
E-6条(現行826条) ① 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その行為の許可を家庭裁判所に請求しなければならない。
② 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その行為の許可を家庭裁判所に請求しなければならない。
③ 家庭裁判所は、当該利益相反行為が子の不利益になる場合には、その行為を許可しなければならない。
④ 家庭裁判所の許可を得ずになされた利益相反行為は、無効とする。
E-7 親権を行う父母は、自己の管理下にある、子が相続によって取得した財産を処分するに当たって、家庭裁判所にあらかじめ許可を得なければならない。
E-8(現行834条) 父又は母が、親権を濫用し、子を放置することによって、子の身体的、精神的健康を危うくしたときは、家庭裁判所は、子又は子の養育にかかわる正当な利益をもつ者からの請求若しくは職権によって、その親権の全部若しくは一部を失権させ、又は子を養育する者若しくは都道府県知事に委譲させることができる。