未成年育成の「監護者」 祖父母は申し立て不可の初判断 最高裁

最高裁は、法解釈で運用を実情に合わせるより、法改正を促すことを選んだようです。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210331/k10012948281000.html

未成年育成の「監護者」 祖父母は申し立て不可の初判断 最高裁

未成年の子どもを育てる「監護者」に家庭の事情で父母に代わって祖父母がなれるかが争われた審判で、最高裁判所は、父母以外の第三者は監護者になる申し立てができないという初めての判断を示しました。

申し立てをしていたのは、未成年の孫を養育していた祖母で、孫の母親が再婚したあと、孫と新しい父親との関係が悪いなどとして、みずからが監護者となることを求めました。

大阪家庭裁判所は申し立てを認め、大阪高等裁判所も「子どもの福祉を全うするためには、祖父母なども申し立てができる。子ども自身が父親を強く拒絶している」として祖母を監護者とする決定をしました。

母親と父親の抗告に対し、最高裁判所第1小法廷の池上政幸裁判長は、31日までに決定を出し「子どもの利益は最も優先して考慮しなければならないが、父母以外の第三者が監護者の申し立てができる法令上の根拠はなく、申し立てはできない」という初めての判断を示しました。

そのうえで、家裁と高裁の決定を取り消し、祖母の申し立てを退けました。

また、これとは別の審判で、最高裁判所は、祖父母が孫との面会交流を求めたケースについても初めての判断をしました。

孫の母親が病気で亡くなったあと、母方の祖父母が孫と会えなくなったと申し立てたのに対し、大阪高等裁判所は「父母以外でも子どもの利益にかなうのであれば、面会交流を認める余地がある」とする決定をし、子どもの父親が抗告していました。

これについて第1小法廷の池上裁判長は「第三者が面会交流を求める申し立てができるという規定はなく、第三者を父母と同一視することもできない。父母以外の第三者は申し立てができない」という初めての判断を示して大阪高裁の決定を取り消し、祖父母の申し立てを退ける決定をしました。

監護者とは

監護者とは、子どもの身の回りの世話をして育てる人のことです。

親権の一部に子を監護する権利=監護権があり、民法では、親権者は子の利益のために、監護と教育をする権利があり、義務を負うと、規定されています。

家族法の研究会は提言「民法に新規定設けることの検討を」

最高裁は今回の決定で、現在の民法の規定を厳格に捉えて、祖父母などの第三者は監護者の申し立てができないと判断した形です。

一方で、家庭裁判所の裁判官や大学教授、それに法務省の担当者が参加した家族法についての研究会は、先月まとめた報告書で「父母以外の第三者を監護者に指定できる方向で検討を進めることに異論は無い」として、民法に新たな規定を設けることについて検討するよう提言しています。

また、祖父母など親以外の親族と子どもとの面会交流についても、現在の民法に規定がないことを踏まえ「規律を設けるか、さらに検討を進めてはどうか」と提言しています。

この研究会での検討状況も踏まえ、上川法務大臣は先月、子どもの養育をめぐる制度の見直しを法制審議会に諮問し、30日に部会の初会合が開かれています。

専門家「社会の実情 理解していない判断」

家族法が専門の早稲田大学の棚村政行教授は「家庭裁判所では、子どもの養育に関わっている祖父母などの第三者を『監護者』と認めたり、『面会交流』を認めたりした判断がこれまでいくつも出ている。最高裁は、民法の条文の文言だけの解釈で切り捨ててしまっていて、社会の実情を理解していない判断だ」と批判しています。

そのうえで「父母が子どもの面倒を十分にみられないために祖父母や親族が、親代わりになるケースは多くあると考えられる。子どもの福祉や権利を最優先に考えるべきで、第三者も監護者となれるよう、法改正などを議論すべきだ」と話しています。

3年前