「親になろうとしてごめんなさい」…離婚・再婚によって生まれる“新しい親”の悲劇

養子縁組の斡旋をしている人が言っても「説得力を一気に失ってしまう」。文春書かせる人間違えたよね。
裁判所関与させればいいでしょ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/0600a7f5665493de427d4a2462e46bbf2eec23eb

3/11(木) 11:12配信

文春オンライン

『ステップファミリー 子どもから見た離婚・再婚』(野沢慎司、菊地真理 著)角川新書

 ステップファミリーとは、親の再婚によって、血縁の無い親子関係を含む家族形態だ。

 離婚が一般化していく中、ステップファミリーもまた珍しいものではなくなってきているが、社会的理解はまだまだ広がっていない。加えて、ステップファミリーに属する当事者たちも、どうしていけばうまくステップファミリーを運営していけるのか、理解できていない場合も多い。

 それが最も悲劇的な形で表出したのが、2018年、目黒区で起きた(船戸)結愛(ゆあ)ちゃん虐待死事件だろう。結愛ちゃんは再婚によってできた継父(けいふ)によって、度重なる虐待を受け亡くなった。裁判において継父は「親になろうとしてごめんなさい」と泣きながら謝罪した。

 本書は、こうしたステップファミリー独特の心理的関係性に着目し、継親が「新しい親」になろうとすることに様々な悲劇の源があることを指摘する。無理して親になり替わろうとせずに、第2の親だったり、いいおじさん的なポジションを得る方が、よっぽどヘルシーにステップファミリーを運営できる、と説く。

 更に、親が二人いる、ということを正常な家族とする家族観に疑問を呈し、元の父(母)、新たな父(母)と親が複数人いて、全員が子ども達に愛情深く関わり続ける「ネットワーク型家族像」を提起する。説得的だ。

 しかし、途中までステップファミリーの声を集めて実態を丁寧に説明していた本書は、政策提言として「離婚後単独親権から共同親権にしなければならない」と語り始めたところから説得力を一気に失ってしまう。

 日本では、夫婦でいるうちは親権を共同で持つが、離婚後はどちらかの親が親権を保持する。これを単独親権と言う。離婚後も、別れて暮らしている夫(や妻)が親権を持ち続けるのが共同親権だ。著者らは「共同親権にすればネットワーク型家族ができる」という趣旨を語っているが、残念ながら空論と言わざるを得ない。

 まず、共同親権になると、子どもが住む場所や行く学校等を決める「重要事項決定権」を別れて一緒に住んでいない夫(ここでは仮に夫としておく)が持つことになる。つまり別れた夫が「俺はそんなこと認めない」と拒否権を発動して、別れた妻子に嫌がらせを続けることが可能になってしまう。欧米で共同親権が主流なのは、原則的に離婚が裁判によって行われるものであり、細かく裁判所が関与することで嫌がらせのないような調整をするからだ(それでも完璧ではなく、たくさんの悲劇が生まれている)。

 約90%が裁判所の関わらない協議離婚である日本において、共同親権は現実的ではない。共同親権の導入だけが先走れば日本中で離婚後トラブルが続発し、法律婚という制度自体が成り立たなくなるだろう。もちろん最も犠牲になるのは、他ならぬ子ども達だ。

のざわしんじ/1959年生まれ、茨城県出身。明治学院大学社会学部教授。専門は家族社会学、社会的ネットワーク論。

きくちまり/1978年生まれ、栃木県出身。博士(学術)。大阪産業大学経済学部准教授。専門は家族社会学、家族関係学。

こまざきひろき/1979年生まれ。NPO法人フローレンス代表理事。日本初の「共済型・訪問型」病児保育サービスを首都圏で展開中。

駒崎 弘樹/週刊文春 2021年3月11日号

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