再婚して元夫の隣に住む二重生活が幸せなワケ~元夫宅で子どもを寝かしつけてから自宅に帰る

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1/27(水) 15:01配信

東洋経済オンライン

元夫と、再婚した夫との生活を並行して子育てと家事をこなす二重生活で女性が見つけた幸せとは?(写真:プラナ/PIXTA)

 「最近、前の夫のうつ症状がだいぶよくなって、心の浮き沈みも改善してきました。今ではしっかり私の会社の仕事もこなしてくれていますし、子育ても家事もしてくれています」

 以前お会いしたときには、別れた夫の体調を心配していた奈美さん(仮名、30代)ですが、その後どうしていたのか久々にお会いしたのでお話を伺ってみました。

 奈美さんは20代前半で元夫と出会って3カ月でのスピード婚。元夫は奈美さんより10歳近く年上で、以前勤めていた会社の取引先の担当者でした。

 当時会社勤めだった元夫は、結婚から2年ほど経った頃、仕事のストレスからパニック発作とうつ病を発症し、会社からも休むように促され休職。しかし、心療内科に通うも、電車に乗って通院しなければいけない環境も苦痛になり、治療がなかなかスムーズにいかず、2年間ほど重度のうつ症状が続き、寝たきり状態でした。

■子育てをしながら起業の準備

 この頃、奈美さんはというと、1歳を過ぎたお子さんの子育てをしながら、自ら起業をしようと準備をしていたところでした。

 内向的で外出を嫌う元夫は、そもそも通勤も苦痛だったようですし、今後体調が改善して復職してもまた繰り返してしまうのではないかと心配した奈美さんは、元夫に、自身が起業する会社で内勤業務で働かないかと提案したそうです。そうすれば、家から出ることなく安心して仕事ができますし、いずれにしても「何もしない状態」が続いては、本人の生活やメンタルの回復にもよくないのではないかという奈美さんからの提案でした。

 その後、奈美さんは起業し、会社は急成長。元夫は闘病しながらも事務所兼自宅でウェブや広報などの内勤の仕事をスタートさせ、少しずつ自分の居場所も見つけたようで、症状も改善していきました。

 しかし、それから3年ほど経った頃から奈美さんは離婚を考えるようになりました。

 内向性が強く、石橋をたたいて渡るタイプのご主人に対して、奈美さんはとても外向的で何事に対しても積極的な真逆な性格です。元夫も奈美さんを見ていてハラハラしていたのか、「社会人経験がほとんどないくせに……」などといったモラハラ発言が多くなっていったそうです。

 そして病気が改善してきても、なかなか子育てに参加してくれる様子もなく、そのうちに奈美さんは、「女性としても見られていない」という思いが強くなっていったと言います。

 性格も真逆、意見も真逆、すべてが対立してしまうという関係が続いたとき、先々のお互いの幸せ、そして子どもの幸せを考えたときに離婚したほうがよいと決断。

 奈美さんは、「お互いにきちんとルールを決めて、まずは子どもの幸せを第一に、お互いの幸せの形を築いていこう」と話し合いを何度も重ね、6年間の結婚生活に終止符を打つことにしました。

 離婚は決して悪いことではないのですが、お子さんのいるお宅においてはやはり特別なことですので、離婚の話し合いを重ねる際に奈美さんがお子さんにどのようにお話をしたのか尋ねてみました。

 「子どもに確認したことは、“パパとママと、長い旅をするならどっちとしたい?”というたった一言だけなんです。どこかで“ママ”という答えを期待していた自分がいたのですが、子どもは“どっちも”と答えました。これを聞いたときに、“元夫とは一緒にいないといけない”と思いましたね」

 奈美さんは続けて、

 「うちの子はとても勘がよく、夫婦げんかの際もいつも間を取りもってくれるような子ですから、“ママはパパと夫婦ではなくなるけれど、あなたにとってのパパとママとはずっと仲良しのままだよ。あなたのことも、ママとパパは2人とも好きのままだし、ちゃんとママもパパもあなたとこれまでどおり一緒にいるからね”と何度も言い聞かせました。

 そしたら子どもも、なんとなく状況がわかったようで、“うん!  わかった!”と明るく返事をくれました」

■元夫の意見を尊重しながら公正証書を作成

 奈美さんは離婚するにあたって、今後のルールをきちんと決めて公正証書を作成することにしました。

 内容は多岐にわたりますが、まずは、奈美さんからの離婚申し立てに対し、「親権は自分じゃないと離婚しない」という夫の意見を尊重。

 そのほか、子どもの幸せを第一に考えるという内容を中心に、

・子どもはいつでも両者に会えるようにすること
・勝手に住居を変えないこと
・家事育児は必ず平等にポイント制にすること
・夫に対してはまた体調を崩して寝込んで仕事や育児に響かないように健康管理を第一行い、生活、家事を管理すること
・奈美さんの会社の仕事をこれまでどおりきちんと行うことを約束する
 など、きちんと証書を交わし、お互いのルールとしました。

 これには奈美さんも、「まだうつが完治していたわけでない中でしたが、しっかり話し合いに向き合ってくれた元夫には感謝しています」と話していました。

 奈美さんは離婚後、すぐ隣のマンションへ引っ越し、自宅と元自宅との二重生活がスタート。

 その後しばらくして、奈美さんは普段から何かと支えてくれていた知人男性と再婚。

 もともと異性として意識していた人ではなかったのですが、気がつけば、何かトラブルがあったときにはつねに隣で支えてくれ、今後の夢を一緒に追いかけられる仲間でいちばんの理解者だと、ある日ふと気がついたのだそうです。

 なにより、お子さんも彼のことを昔からよく知っていて懐いており、奈美さんの母親も以前から彼のことをとても信用して慕っていたのだと言います。

 再婚する際にもお子さんとは、「ママは今度別の人と結婚するけれど、その人はパパではないからね。あなたのパパはパパだからね」と話し、あくまでも、“この人が新しいパパだよ“という押しつけだけは一切しなかった奈美さん。これにはお子さんもまた「うん!  わかった!」と答えたのだそう。

 再婚した奈美さんは現在も隣人同士の二重生活を送っています。

・朝7時に自宅で夫のもとで目を覚ましたら、子どもを起こしに元自宅へ行き、子どもに朝食を食べさせ、一緒に遊んでから保育園に送る

・その後元自宅が事務所でもあるので午前中はそこで事務処理などの仕事をし、お昼には今夫と食事し、そのまま夕方まで仕事
・17時半に保育園にお迎えに行き、21時過ぎまで元自宅で子どもと過ごし、時々今の夫と子どもと3人で外食をしたりして、元自宅で子どもを寝かしつけたら夫の待つ自宅へ帰る
 という毎日のルーティンで今の生活がとても気に入っていると話していました。

■みんなが幸せな形を築けている

 このような二重生活をするにあたって、今の夫は、元夫の体調も気遣ってくれたり、お子さんの幸せをいちばんに考えてくれる理解ある方で、これにはお子さんもいつもニコニコと幸せそうにしているそうです。

 奈美さんはじめ、元夫も、今夫も、幸せそうにしているお子さんの姿を見ているのがいちばんの幸せだと言います。

 奈美さんと離婚後、元夫の体調も徐々に回復していき、奈美さんの経営する会社で仕事を続けています。奈美さんも、「あまりにも性格が違いすぎたので、元夫も私と離れてストレスが軽減してかえってよかったと思いますし、今がみんな同じくらいに幸せな形を築けていると思います」と。

 母、女、娘、妻、恋人、どれかを選ばなければいけないという世の中の風潮に以前から疑問を抱いていたという奈美さんは、

 「私はすべての自分を全力疾走したいと常々感じています。それにはやはりきちんと向き合うというのが大切だと身を持って感じました。“察してよ”では絶対に無理で、言語化して、相手が聞いてくれる言葉で話すということが大事。きちんと向き合って話し合いさえすればどんな形もつくれると思うんです」

 そう笑顔で話す奈美さんにはとても共感しました。

 とくに離婚という関係になった夫婦は、お互いに“話をしても無駄だ”“相手に話が通じない”と思ってしまっている、または目を反らす方が多い中、相手に寄り添った言葉でコミュニケーションを図るということが大切なのかもしれません。

鈴木 まり :生活カウンセラー

3年前