別居親がまとまれないから法制化ができなかった?

という意見を持つ人が別居親の中には少なからずいるようだ。自分は別に何かまとめるためのことをしてるでもなく「経緯を知ってる」顔をして批評しているダサい人もいると聞く。

こういう意見は本当だろうか。

国会議員に陳情に行くと、議員から「ばらばら来られて困る。まとまってくれないか」と言われることはときどきある。とはいえ、議員というのは人々から意見を聞いて政治に反映させるのが仕事なので、むしろ似た課題で多くの人が意見を届けに来るというのは、それだけ大きい社会問題だと認識してもよさそうなものだ。

また、まとまったからといって、政治課題が実現できるかと言えば、例えば、朝鮮民主主義人民共和国の拉致問題の家族会は、共同親権運動よりも歴史もあり、以前から一枚岩で、別居親の何十倍も世間の同情を買っているが、「拉致被害者の全員帰還」という政治課題をいまだに実現できていない。

政治課題には政治課題なりの課題の大きさの違いがあるのだから、まとまったらすぐに目的が叶うわけではないだろう。例えば、2011年の民法766条改正のときには、別居親団体は今よりも数も少なくて、ある程度足並みをそろえた部分があったけど、目標としたのは民法766条改正ではなかったはずだ。別居親が声を挙げなければ実現しなかったかもしれないけど、今と同じでハーグ条約加盟圧力という外圧もあり、国がガス抜き的に国内法をいじったのが実態だ。

ぼくも何回か経験があるけど、当選者1人の選挙やらは、ある程度足並みをそろえれば当選可能性が高まる場合もあるので、そういうやり方も有効な場合がある。ただ、足並みをそろえることは、政策を実現することとイコールではないから、当たり前だけど、動きが悪くなる場面も当然出るし、場合によっては足を引っ張られることもある。

逆に、団体がばらばらしているから有効な場合も当然ながらある。例えば、ハーグ条約や共同親権反対の運動はこの10年間一貫してある。いつも彼らが政策をすり合わせて議員ロビーでも足並みをそろえていたかと言えば、そんなこともないだろう。バラバラ議員に訴えかけて、うんざりさせて、それで目的を達しているのだから、彼らから見習うことは多い。

議員の側からすれば、団体がまとまっていれば、団体のトップの頭を押さえつけていれば原則的な意見(多く少数派だったりする)や違う観点からの懸念を、直接聞くこともなく団体の幹部のせいにしてあらかじめ調整させることができる。これはずいぶん仕事が楽だ。共同養育支援法案のプロセスではこれが見られた。

以前も書いたけど、何を実現したいのかの獲得目標のない運動など、しても意味ない。短冊に願い事を書いても人任せで、願いが叶う保証もない。法律を作るのは議員だけど、彼らに税金を払って仕事をさせているのはぼくたちで、彼らもまた、多くの人が納得のいく解決策を真剣に考えて提示したっていい。法務官僚に法案を書かせても、今のままが楽だから現状維持の法案を作りがちだ。

団体がまとまるのが目的ではなく、政策を実現するのが目的なら、実現する政策をまず決めないと、「どれでもいいから実現できそうなものからしてください」なら、「どれも無理そうだから全部だめ」とぼくが政治家なら言うだろう。目的のために組織という手段があるので、目的のはっきりしない団体の民主主義を論じたところで意味はない。こういう場合、「目的は一緒だから」は「俺の言うことを聞け」と同義だ。

単独親権前提で、それを微修正して積み上げるというやり方は、結局、「私には関係ない」という当事者が多すぎて、当事者をまとめるなんてできないし、反対意見にも対抗できない。一部の当事者をヘイトすれば法案を潰せるのだから反対派にも楽だ。

一方、単独親権制度を撤廃、という逆方向の提案は、「それって関係ないと思っていたけど私にも関係あるかも」という人が多く出てくる。家族の形や性役割から派生する問題は多くの人にとっての課題で、そういう問題意識を共有できる。

当事者がまとまるなんて結果であって、何の課題の当事者か、というのでまとまる対象も変わってくる。たしかに、十年前は誰も共同親権なんて知らなかったから、現実味を感じなかったけど、これだけ共同親権という言葉も出回ってきていて、別居親が「単独親権制度を終わらせよう」と今言わないと、政策論争なんて永遠にできない。

目的意識のない別居親ももちろんいるだろうけど、そういう人は別に単独親権制度のままでいいから、いっしょにやる必要は全然ない。無理にいっしょになればお互いの足を引っ張ろうとして、根拠のない中傷を垂れ流し主導権争いに血道を上げる。ただし、「自分が子どもと会えればいい」という主張だけなら、それを政治課題の上位に上げてくれるほど、世間の人はお人よしには思えない。

あと、宗像は運動から金をもらわないと生活できないから、法案ができないようにしている、なんていう批判もあるそうだ。今までの説明からそういう批判は根拠がないことはわかるだろう。というか、社会事業家が経済的に暮らしていけることはいいことなのに、そんなしみったれた批判をよく思いつくものだ。今年の大河ドラマ見ろ。

ちなみにぼくの本業はライターだ。楽な暮らしではないけどそこそこ人生を楽しんでいる。(宗像 充 2020.01.21)

別居親がまとまれないから法制化ができなかった?

 

3か月前