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これまでの子育ては、夫婦関係にある2人が行うのが一般的とされてきた。 しかし離婚の増加や晩婚化などに伴い、子どもの「共同養育」を目的にして家族を形成する動きが欧米を中心に注目を集めているとか。育児を共にするパートナーに恋愛感情を抱いていなくても、子どもと親・親と親は良好な関係を築けるのだろうか。
「プラトニック・コペアレンティング」とは?
キム・カーダシアンやアンジェリーナ・ジョリーといった海外セレブによって、代理母出産や養子を選択する家族は世間に浸透し、市民権を得てきた。家族の形が多様化するなかで、比較的新たな現象として欧米で注目を集めているのが「プラトニック・コペアレンティング(platonic co-parenting)」だ。
「プラトニック」は友愛的な、「コペアレンティング」は共同養育と訳される。 つまり、恋愛関係にない者同士が子どもの親になり、育児をすることをいう。こうした選択をする人々の関係性は多様で、離婚した夫婦や事実婚を解消したカップルが、同居を続けながら子育てを継続したり、友だち同士で養子を迎えたり。
また、親になりたい男女がマッチングアプリを介して出会い、子どもを授かる(その後恋愛関係には発展しない)場合も。教育方針や金銭的サポート等の条件や、子どもを幸せにしたいという想いが一致すれば、「親」になる2人の間に恋愛感情は必ずしもなくとも家族は成立する、とこうした現象が教えてくれるようだ。
なぜプラトニックな関係を選ぶのか?
子どもがいる離婚した夫婦や事実婚を解消したカップルの間で、しばしば問題になるのが親権。日本では婚姻中は父母による共同親権が一般的だが、離婚後は単独親権制度が採用されている。
そのため、親権を持っている側とそうでない側とで、面会交流や養育費等で揉め、子どもがその争いに巻き込まれることが少なくない。
一方で日本以外のすべての先進国では、離婚後の共同親権が認められている。 つまり、婚姻関係解消後も両親が対等な立場で子育てにかかわり、子どもは両方の親と交流し養育を受けることができる。(虐待や夫婦間暴力などがある場合を除く)こうした制度からも、海外では夫婦でなくなっても別居/同居を選択したうえで、共同養育をするのが一般的と考える人が多いことがわかる。
子どもは産みたい/育てたいが年齢・時間的リミットを感じている
子育てに関わる問題(家事の分担や養育費等)を一緒に乗り越える最適なパートナーが、恋に落ちた相手とは限らない。そう考える場合、子育てにおける価値観の一致を恋愛よりも優先させて、友人同士で親になろうと決意するなど、共同養育を目的とした関係性の構築を試みる人もいる。 INSIDERに掲載された体験談によると、「育児をするパートナーに恋愛感情がない方が、それぞれのやるべきことを明確化でき、相手に期待しないので良好な関係を維持しやすい」と、プラトニックな関係を支持する意見も。
ただし、「プラトニック・コペアレンティング」を選択する人は増えているものの比較的新しい現象のため、恋愛関係にない親による共同養育が子どもに与える影響などの懸念点は、研究チームにより目下検証中だという。
これからは、家族の形も多様に
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養子の受け入れや事実婚、離婚などの増加により、親と子・親と親の関わり方は多様化している。「プラトニック・コペアレンティング」を含め、こうした変化により家族の在り方は形を変えつつある。「家族」の定義はもはや明白ではないが、親から子、そして子から親への愛があれば、養育者の関係性は問わないのかもしれない。
SAWAKO MOTEGI