「親子断絶防止法」、3つの誤解 と 3つの狙い
2016年末、「親子断絶防止法」という法律案が公表され、その後、この法律への賛否の議論が巻き起こりました。「問題のある別居親のための法律は必要ない」(週刊金曜日)と子どもに会えない親への偏見がかき立てられる一方で、子どもと引き離された親の中からも、この法律では会えない親が増えるのでは、と反対の声が上がりました。あれから一年、まだこの法案の成立がもくろまれていると言います。この法律に潜む誤解と狙いを解説しちゃいます。
誤解1 「親子断絶防止法」ができれば会えない親子はいなくなる
法案では、児童虐待やDVの場合に、会せると子どもの最善の利益に反する「おそれ」を生じさせる事情がある場合には、「交流を行わないこと」を含めて特別の配慮をしなければならなくなります(法案9条)。親子関係を規定した法律にこれまで「親子断絶」が明記されたことはありませんでした。「おそれ」を誰がどのように解釈するのかの規定もありません。
行政窓口や学校が別居親を追い払うことに根拠規定を与え、裁判では「おそれ」を主張した親に裁判所が「特別の配慮」をし、「問題のある別居親」のあぶり出しが始まります。行政職員や裁判官の偏見、親の主張だけで事実確認もないまま「正式な引き離し」ができるようになります。「冤罪」も増えます。
誤解2 子どもの意見が尊重される
手続きを保障するだけではなく、両親との関係を維持することについて年齢・発達に応じて子の意思を考慮することが義務付けられます(法案2条2項)。親が別居している場合、これは子どもにどちらかの親を選ばせる残酷な行為です。引き離された子どもは、いっしょにいる親の手前、もう一方の親に「会いたい」とは言えません。しかし「会いたくない」と言えば、自分の発言を根拠に親と一生会えなくなることにもなります。
子どもの意見表明権は、子どもが自由に自分の欲求を表明できる環境を確保する大人の側の義務です。親がすべき判断を子どもに負わせることは虐待です。
誤解3 立法は会えない親たちの悲願・共同親権への足がかり
左の各点を立法活動を進める「親子断絶防止法全国連絡会」に質問しましたが、答えがありませんでした。
法案の策定は密室で進められ、kネットは初期段階で全国連絡会から離脱し、「正式な引き離し」の明記された法案を見て反対を表明しました。「親子断絶防止法全国連絡会」や議員連盟は立法そのものが目的化し、子どもに会えなくて困っている親たちを見捨てたのです。
すでに3年を空費した立法活動。この法案で実現するのは、連れ去りの合法化と単独親権の強化です。
「親子断絶防止法」のホントの狙い
◆ なぜ問題だらけの法案の立法活動が続くの?
1 引き離し親のワガママを守ります
例外規定を明文化したことで、会わせたくない親は、(ウソでも)DVを主張し、子どもを引き離して「嫌ならそう言いな」と促すだけで、親権取得と引き離しにお墨付きが得られます。
2 引き離しビジネスが繁盛します
「おそれ」だけで引き離しができ、一方で交流自体は促されるため、離婚・親権目的の連れ去りを促す弁護士の離婚ビジネスや、同居親の不安を煽って別居親への監視を強化する、「交流監視ビジネス」が隆盛を迎えます。
3 立法活動のガス抜き
立法活動を進めてきたグループは、自分で間違いを認めて途中でやめるだけの勇気がありません。理念を掲げて一方で正式な引き離しを合法化することで、会わせたくない親も、会いたい親にも示しがつき、政治家は成果を挙げられます。また、共同親権の民法改正の目標を遠くに設定することで、立法活動に期待を寄せる当事者を政治活動に継続的に動員することができます。
【断絶法立法は裏切り】修正が、「会わせたくない」側の意向を受けてのものである以上、会えない親たちの意向を切り捨てて練られた法案を再修正することは無理筋です。今すべきは実子誘拐を違法化し、民法を変え子育ての機会均等を明記することです。私的感情(ワガママ)で引き離す親を親権者にするのが間違いなのに、問題点がわかっていながら「やめられないから」なんてメンツだけで継続する立法活動は、会えない親たちへの裏切りです。何一つ「会えない原因」が除去されない引き離し法案は、白紙撤回しかありません。(2017.12.10)