年収900万円の “真面目な夫” から娘を奪った不倫妻の「厳しい末路」

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12/3(木) 7:01配信

現代ビジネス

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 前編はこちら → 夫が青ざめた、不倫がバレた “子持ちの妻” の「逆ギレ」と「ヤバすぎる行動」

15歳息子の「親権争い」、夫が妻から「養育費」まで取った凄いテク

 元妻の紫織さんのアプローチがきっかけで交際に発展、結婚に至ったという孝志さん。結婚の翌年には娘の咲楽ちゃんも産まれ、仕事も順調。なにもかもが順風満帆で幸せな日々を送っていたといいます。

 しかし、妻の不倫発覚をきっかけにその幸せは脆く崩れ落ちました。パート先のオーナーとの不倫の証拠を突き付けたところ、妻は逆ギレして娘を連れて家出をしてしまったからです。さらに親権をめぐり、孝志さんにさらなる絶望が降りかかります。

【今回の相談者】
岡本 孝志(仮名、以下同。公認会計士 大手監査法人勤務35歳 年収900万円)
【家族構成】
岡本 紫織(派遣社員 37歳)
咲楽(3歳)

※以下でご紹介する事例につきましては、弁護士の守秘義務との関係で実際の事例が特定されることを避けるために、実際の事例での事実関係から一部変更しているものもありますので、予めご了承ください。
連れ去りで真っ先にやらなければいけないこと

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 孝志さんが相談に来られたのは、一方的に紫織さんが娘さんを連れて出て行き、別居開始して2か月後のことでした。

 紫織さんにはすでに弁護士がついていて、協議離婚の申し入れがあったということでした。孝志さんのご相談は、「妻から子供を取り戻したい」というものでした。

 ここで両親のどちらかに一方的に連れ去れられた子供を合法的に取り戻すために、配偶者がまずやらなければならない3つのことがあります。

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(1)子の引き渡しの審判
(2)子の監護者の指定の審判
(3)(1)と(2)の審判前の保全処分
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 この3つは、弁護士の間では「3点セット」などと言われますが、これらをまず真っ先に裁判所に申し立てる必要があります(なお、申立の前に、捜索願や未成年者略取の被害届の提出を検討する必要がある場合もあります)。

 (1)は、裁判所に対して子どもを引き渡すよう命令する審判を求める手続です。

 (2)は、裁判所によって、子の監護者を夫婦の一方に指定してもらうことを求める手続きです。「監護者」とは、子どもと同居して、住むところを指定したり、日常の世話や教育をする権利(「監護権」といいます)を有する者のことです。

 親権は、財産管理権と身上監護権で構成されています。つまり監護権とは親権の一部なのです。

 離婚成立までは夫婦は共同親権者ですので、親権の一部である「監護権」も親権者である両親に帰属するのが原則です。つまり、別居していても夫婦が共同で「監護権」を行使するのが原則なのです。

 (1)によって、子どもを引き渡してもらっても、相手方にも監護権がある状態ですと、いつまた子供を連れ去られるかわからないという状態が続くことになります。

 そこで、裁判所によって子の監護者を夫婦の一方に指定してもらうことにより、監護者に指定された者だけが監護権を行使でき、監護者に指定されなかった方は監護権を行使できなくなるのです。

 (3)の保全処分とは、(1)と(2)の結果が出るまでには一定の時間がかかるため、たとえば、連れ去ったほうが育児放棄をしていたり、子供に対してDVをふるっていたなどの、子供の生命・身体に危険が及ぶおそれがある場合に緊急に引き渡しを求める手続きです。

 咲楽ちゃんが連れ去られたのち、孝志さんもインターネットで大体のことは調べてこられたようでした。しかし、(1)と(2)の保全処分が認められるためには「保全の必要性(緊急性)」及び(1)と(2)が認められる蓋然性が必要です。

 孝志さんのようなケースで、別居から2か月も経過している段階では、よほどのことがないかぎり「保全の必要性(緊急性)」は認められそうにありません。

 なぜかというと、裁判所は孝志さんが連れ去りが起きた2カ月間もの間申立てをしなかったということは、咲楽ちゃんの身に危険が迫っておらず、母親と平穏に暮らしていたという見方をするため、母親側はどんどん監護実績を積んでいくことになるのです。

 仮に孝志さんが連れ去られた直後に、すぐさま上記の「3点セット」を申し立てていれば、違う結果になっていた可能性も考えられますし、私たちのような専門家がお手伝いをすることもできるのです。

 また、孝志さんは、夜遅くまで働いていていましたから、咲楽ちゃんの面倒はほとんど紫織さんが見ていました。紫織さんは浮気をしているとはいえ、咲楽ちゃんの育児放棄などはすることなくしっかり面倒を見ていたので子供の安全は守られています。

 「お話をお聞きする限り、親権や監護権を取得する可能性はほぼゼロに近いと言っていいでしょう」と現状を率直に孝志さんにご説明をしましたが、孝志さんは納得されませんでした。

 「私としては、たとえダメとわかっていても、咲楽のためにできるかぎりのことしたいのです。私にとっては、命より大事なのが咲楽なんです。

 仮に先生のおっしゃるように親権や監護権の争いに負けたとしても、咲楽が大人になったときに、お父さんは咲楽の親権をすんなりあきらめたわけではないんだ、とことん戦ってくれたんだ…、そう思って欲しいのです。

 正直なところ、とにかく、あの男には死んでも咲楽の面倒を見てほしくない。それが本音です。咲楽は私が愛情をもって育てたいんです。咲楽にとっても、私が育てた方がいいことは明らかだと思います。先生、どうかよろしくお願いします」

 そう言って、孝志さんは、事務所を後にされました。ただ、孝志さんには申し訳ないのですが、ほとんど勝ち目はありません。一体どうしたものか…、私は頭を悩ませました。

結局保全処分は認められなかった

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 翌週、孝志さんから再度、連絡がありました。孝志さんのお気持ちは強く、一度は裁判所の判断を仰がないと到底気持ちが収まりそうにないということでした。

 孝志さんの依頼をうけて、すぐに裁判所に、「(1)子の引き渡しを求める審判」「(2)監護者の指定を求める審判」「(3)(1)と(2)の保全処分」の申立をしました。保全処分に関しては10日後に第一回目の期日が決まりました。

 保全処分のポイントは、なんといっても「保全の必要性(緊急性)」があるかどうかです。

 第一回目の裁判期日で、孝志さんが裁判官から聞かれたのが、「あなた、そんなに緊急性があるというなら、どうしてお子さんを連れてすぐに実家にでも戻らなかったの?」という質問でした。

 孝志さんとしては、違法な連れ去りはしたくないし、合法的な解決をしたかった、というお気持ちだったのですが、裁判官には通じなかったようです。

 裁判官も保全処分は特に厳格に判断しますから、当然といえば当然の質問でした。結果的に、保全処分は認められず、監護権や子の引き渡しについてはその後審理されたものの、全面的に敗訴の結果となりました。

 最終的にかろうじて、月に一度程度の面会交流が決まり、離婚が成立しました。不倫相手からは300万円の慰謝料は勝ち取りましたが、孝志さんはあまりの理不尽さに打ちのめされました。

 不倫をした妻に親権を勝ち取られ、子どもと離れ離れになるなんて…孝志さんとしては、予想はしていたものの、現実になると到底受け入れられることができない結果でした。不倫相手は慰謝料300万円を「そんなはした金!」と言わんばかりに、示談成立の翌日に満額を振り込んできていました。
どん底に落ちて、自暴自棄に

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 しばらくして、孝志さんから連絡がありました。至急、相談にのってほしいということで、事務所でお会いすることになりました。事務所にやってきた孝志さんは、顔色も悪く、かなり思いつめた様子でした。

 「先生、私はどうしても納得できません。私は妻に不倫をされたんですよ? なのに、裁判所は、紫織を責めずに、まるで私が悪いみたいに言っています。裁判官のあの言い草はないでしょう。

 私だって、咲楽を連れて逃げたかった。でも、そんなことをしたら、みんなが不幸になる。そんな思いで私は理性で咲楽を連れて行くのをやめたんです。私はなにか間違っていましたか?」

 孝志さんの訴えは続きます。

 「もう、やってられないですよ。世の中理不尽なことばかり…私は、咲楽をどんな方法を使っても連れ戻します。咲楽が、紫織と不倫相手に養育されるのだけは堪えられません。私は紫織と咲楽娘を心の底から愛していたのに、なんでこんな目にあわないといけないんでしょうか…」

 私は、必死で孝志さんを説得しました。母親が親権者となっている以上、孝志さんが強引に咲楽ちゃんを連れ戻すことは法に反することになり、孝志さんのためにはなりません。それこそ、咲楽ちゃんまで不幸になることになるかもしれないのです。

 「孝志さん、早まらないでください。現在の状況は本当にお辛いと思いますが、この先、何が起こるかなんて誰にもわかりません。孝志さんはいま、目先のことしか見えなくなっています。

 紫織さんと連絡を取り合いながら、咲楽ちゃんのために、いい父親、母親でいることを目標にしましょう。いまが、一番辛い時期です。一緒に頑張ってここを乗り越えましょう」

 孝志さんは、号泣しながらも、私の説得にかろうじて耳を貸してくれました。

 その後、孝志さんは、紫織さんとは全く連絡がとれなくなり、約束していた面会交流もほとんど実現できなくなりました。ただ、孝志さんは、いつか娘に会えるということを信じて、養育費は必ず月の初めに指定された口座に振り込みを続けていました。

 そんなとき、以前から癌を患っていた孝志さんの父親が亡くなりました。孝志さんの父親は、可愛がっていた孫に会えないことに一言も文句を言ったりしなかったそうです。

 ただ、一言、孝志さんに「死ぬときに後悔しないようにしろ」と言ったそうです。それまでは、紫織さんと咲楽ちゃんのことばかり考え、悶々としていた孝志さんですが、お父さんの言葉によって、はっとしたといいます。

 ――自分は死ぬまで、別れた妻と娘のことを思って、悶々としているのか? 裏切った紫織と不倫相手を恨みながらすごすのか? それではあまりに自分がみじめだ。ここは辛いけれど、前を向いて行くしかない。

 咲楽が成長したときに、恥ずかしくない父親でいたい――孝志さんは、立ち直ることを決心しました。

コロナによって事態は好転し

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 その後、孝志さんは、趣味でロッククライミングを始めるなど、生活を一変させる努力をしました。幸い、ロッククライミングが性にあっていたのか、仲間も増え、週末には楽しい時間を過ごせるようになりました。

 仕事上でも、誠実な孝志さんの姿勢がクライアントに大変評判がいいということで、同期の中で一番のりで課長に昇進しました。孝志さんは、徐々に前を向いて行けるようになりました。

 そんな折、突然、紫織さんから孝志さんに連絡があったそうです。

 「実は、今年の10月に1年ぶりに紫織から突然、電話がかかってきたのです。なんでも、浜崎のお店はコロナの影響を直に受けて、3店舗あった店はすべて閉店したそうです。浜崎はその後、行方不明になり、全く連絡がつかないそうなんです。

 紫織からは泣きながら、助けてほしい、しばらく咲楽を預かってほしいと懇願されました。もちろん、咲楽を預かることに躊躇はありません。すぐに指定された場所に迎えに行きました。

 紫織は、かなりやつれていて、以前の輝きや艶は失われていたように感じました。すぐに咲楽と紫織を実家の母親の元に連れて行きました。母親は驚きながらも、快く受け入れてくれました

 正直なところ、紫織には一切未練はありません。ただ、いまは彼女と協力しあって、咲楽の面倒を見ています。紫織は、結局不倫相手から一方的に捨てられたそうで、ほとほと懲りたと言っていますが」

 現在は、孝志さんの実家の近くにアパートを借りて、派遣に登録し真面目に働いているという紫織さん。咲楽ちゃんは、平日は孝志さんの実家で預かり、週末に紫織さんに引き渡すといった監護体制を続けている。

 「平日にはなるべく早く家に帰るようにしています。課長に昇進したおかげで、時間はある程度、調整がつくようになりました。咲楽に全く会えなかった時を思うと、元気な咲楽の姿を見るだけでありがたくて涙が出そうになります。

 …しかし、弁護士さんが言われたように、本当に人生、何が起こるかわからないですね。あの時、自棄を起こさなくて本当に良かったです。やはり真面目に生きているといいことがある、神様は見てくれているんだな、と実感しました」

 孝志さんは、心から幸せそうに微笑んでおられました。

 このように男性の親権獲得は、一般的にはまだまだ難しいと言わざるを得ません。孝志さんのケースのように、妻が不倫をしていても、育児放棄などをしていないかぎり、現実的に親権は妻側に行くことが多いのが実情です。

 孝志さんは、別居をしてから2か月後に相談に来られたため、どうしても対策が後手後手になってしまい、裁判では親権や監護権を勝ち取ることができませんでした。

 ですが、男性が親権を獲得する可能性はゼロではありません。実際、親権を獲得して、立派にお子さんを育てているお父さんは沢山いらっしゃいます。

 親権を獲得したいのなら、早めに専門家に相談に行くなどして、綿密な対策をたて、ねばり強く戦うことをおすすめいたします。

後藤 千絵(弁護士)

3か月前