https://www.japanpi.com/ja/blog/child-investigation/domestic-violence-increase-as-covid-19/
近年、配偶者からのDV被害および児童虐待が増加しています。コロナの影響を受けて、問題はさらに深刻化すると予想されています。
そのような背景から、この記事では統計結果を用いてDVや児童虐待に関わる問題をグラフで分かりやすく可視化しました。さらに、DV相談件数の増加に伴い、DVの特別支援措置を悪用した子供の連れ去りの問題についても解説します。
配偶者からのDVについての相談対応件数
まずは配偶者からの暴力事件の発生状況を見てみましょう。警視庁のデータによると、相談対応件数は過去20年ほど、継続して増加していることが分かります。また、2019年には、2001年にDV防止法が成立して以来最多の8万2207件となっています。
児童虐待相談対応件数
厚生労働省によると、児童虐待においても平成2年から増加傾向にあります。最新のデータである2018年には、過去最高の15万9850件を記録しました。
コロナ後のDV被害相談に関わる検索トレンド
上のグラフから、配偶者からの暴力や児童虐待は過去20年または30年以上継続して増加しており、既に重大な社会問題になっていることが分かります。さらに、メディアなどでは、新型コロナウイルスの流行による外出自粛や経済問題からさらにDV被害が増えると予想しています。そのような背景から、Googleトレンドを使ってDV(ドメスティック・バイオレンス)に関わる検索のトレンドを調査し、以下のインフォグラフィックを作成しました。
上記インフォグラフィックでは、コロナウイルスとDVに関連の高い検索トレンド結果を表示するため、新型コロナウイルスが配偶者からの暴力問題に与える影響をより分かりやすく示している4つの検索カテゴリーに絞って検索トレンドをグラフにしました。
グラフで表示されている数字は、実際の検索数ではなく、100を最高値とした時の相対的な検索回数のスコアです。
法律および行政のカテゴリー
2020年3月から検索数が増加したキーワードには、「DV 相談 プラス」、「DV 相談 窓口」などが見られます。外出自粛が始まった3月後半の22のスコアに対して、ピークである4月19日には100の最高値を記録しています。
これらのワードの検索数の増加は、配偶者からの暴力を受けての被害や、暴力への不安などから、インターネット上で関係する相談機関を探す人が増加したことを意味しています。
医療・健康のカテゴリー
「コロナ ウイルス DV」、「精神的DV」を含むDVと医療・健康に関わる検索ワードは、3月22日の33からおよそ2ヶ月後の5月17日にピークを迎え、97のスコアを示しました。配偶者からの暴力が肉体的なものだけでなく、精神的なものであるケースも多いことが分かります。
人々と社会のカテゴリー
このカテゴリーでは、「DV 離婚」などのキーワード検索が2020年3月から主に増加しており、このテーマにおいてはメディアでも数多く取り上げられました。3月22日のスコア41に比べると、5月半ばには50以上アップの99にまで達しています。
金融のカテゴリー
3月から検索数が増加したキーワードには「給付金 DV」等が見られます。家庭内暴力を受けていて、避難または自立しようにも経済的な理由でそれが困難である人が多くいるという背景が生んだ検索トレンドと言えるでしょう。3月末から4月の始めにかけてほぼ0だったスコアが、3週間程で100にまで達しました。
増加するDV相談件数と低い保護命令発令率
こうして数字を見ると、DV被害は年々増えており、コロナ後の増加を踏まえると2020年は状況が悪化することが予想されます。では、関係機関や警察などはこの問題にどのように対応しているのでしょうか。下のインフォグラフィックでは、男女共同参画局の最新データを元に、相談から保護命令までの流れと実際の件数を分かりやすい図にして表しています。
※一時保護については、婦人相談所が自ら行うか、婦人相談所から一定の基準を満たす者に委託して行うこととなります。
相談から保護命令までの流れ | 件数 |
① 配偶者暴力相談支援センターへの相談件数 | 106,110 |
② 警察における配偶者からの暴力事案等の相談件数 | 72,455 |
③ 総相談件数 | 178,565 |
④ 婦人相談所における一時保護件数 | 7,965 |
⑤ 配偶者暴力防止法に基づく保護命令事件の既済件数 | 2,293 |
保護命令発令率 | 1.3% |
グラフを一見してわかるのは、相談数に対する一時保護、保護命令発令率の低さです。
DVの被害者が相談する主要な窓口は、配偶者暴力相談支援センターと警察署です。相談を受けた行政機関は、DVの特別支援制度で、被害者に保護措置を実施します。保護命令は、裁判所から発令される手続きです。これは、被害者への接近禁止命令や退去命令を含みます。しかし、保護命令以外でも、一時保護や住民票のブロックだけを行うDV支援措置もあります。
相談件数に対し、これほどにも保護命令の発令件数が少ない背景には、DV被害者が裁判所へ保護命令を申し立てることのハードルが高いこと、これらの相談機関が、保護命令申立の取下げ率の高さから、被害者自身の判断によって保護命令申立を諦めさせる方向に誘導する傾向にある可能性も推測されます。その他、HRN(ヒューマンライツ・ナウ)によれば、保護命令の発令期間が年々長期化しており、発令までに時間がかかりすぎること、司法関係者のDV被害に対する無理解や過小評価なども問題として挙げられています。このような問題が挙がる原因となる実例があることは事実であり、被害者を正しく守るためにはあってはならないことです。
しかし、保護命令発令率の低さの理由は、DV被害と申告されている件数の中に、緊急度が低いケースが含まれている、という可能性もあります。中には、夫婦関係が悪化し、別居する口実や子供を連れ去る口実として、DVの特別支援措置制度を悪用しているケースも含まれます。
虚偽DVとは
虚偽DVとは、実際にはDVの被害がなかったのに、それがあったように虚偽の申告をすることです。なぜ虚偽DVの事例が発生するかというと、DV被害を訴えれば別居や離婚の口実にすることができ、慰謝料の増額や、子供の連れ去りを正当化するツールしても利用できるからです。
虚偽DVには、以下のようなパターンがあります。
- 自作自演で傷を作り、病院から診断書を取得する
- 外傷がない精神的虐待を根拠とする精神的なDVを捏造する
- 実被害を診断書で証明するということではなく、DV法の特別支援措置適用し、住民票をブロックし、所在をくらます
DVの特別支援の適用を申請する窓口は、以下となります。
- 配偶者暴力相談支援センター
- 警察署
- 市区町村役所の窓口
そして、DV の特別支援措置としては、おおよそ以下の5種類があります。
- 保護命令(接近禁止命令)
- 一時保護(シェルター入居等)
- 住民票の開示拒否
- 国民健康保険への特別加入
- 子供の特別転校
保護命令を発令させるには、裁判所にDVの被害状況を証明しなければなりません。しかし、一時保護や住民票のブロックだけであれば、自己申告がそのまま通り、警察の捜査や特別な審査は何もありません。行政機関で申請書を提出しさえすれば、無条件で一時保護、住民票の開示拒否、国民健康保険の特別加入、子供の特別転校等の支援措置を受けることができます。
虚偽DV被害申告の増加と子供の連れ去り
虚偽DVの目的としては、「虚偽のDV被害を訴えて裁判所から保護命令を受け取る」というパターンの他に、「転居先を知られない為に、住民票の開示拒否等の無審査で適用できるDV支援措置だけを利用する」というパターンがあります。その中には、婚姻費用や養育費のみを受ける為に支援措置を悪用し、実際には、不倫相手と駆け落ちしていたり、連れ去った子供に虐待やネグレクトの実態が疑われるケースまであります。
無審査で通るDV支援措置
DVの特別支援措置は、配偶者からの暴力が発生している場合、被害者の緊急保護を実施する制度です。家庭内の問題であるので、警察の捜査は行われません。基本的には、被害者は、自己申告で被害状況を説明した書類を提出するだけで、支援措置を受けることができます。
無審査で適用される制度ですから、婚姻費用、慰謝料、養育費を増額させたり、子供を連れ去る為に、この制度を悪用する事案が一定数発生しても仕方がないかもしれません。また、行政機関の窓口の担当者や家事案件の相談を受けた弁護士も、この制度を積極的に紹介し、適用を奨励している実態もあります。最初からこの制度を悪用する気がなくても、周囲からの入れ知恵で、結果的にこの制度を悪用してしまっているケースもあるかと思われます。
このように、必ずしも悪意があるケースばかりではないとはいえ、虚偽DVで子供を連れ去られた側の親にとっては、許しがたい事態であり、社会の歪みであると言わざるを得ません。特に、国際的な子供の連れ去りの事案では、この制度を入れ知恵して、子供の連れ去りを合法化する日本の一部の弁護士が、国際社会から厳しい批判に晒されている側面があります。
DV被害の相談件数が増加したことは、DV法が整備され、一般国民にその存在が周知された結果でもあると思います。しかし、被害者側の保護命令申し立てのハードルの高さを考慮しても、その中にはDV支援措置を悪用している件数が一定数入っていることも事実です。もちろん、虚偽DVの比率は統計には現れない為、その数が著しく多いのか、意外と少ないのかは、わかりません。
ハーグ条約と子供の連れ去り問題を解説してビデオがありますので、ご参照ください。
また、「親子の面会交流を実現する全国ネットワーク」には、虚偽DVに関するアンケートの結果がまとめられています。
虚偽DVを親子引き離しに利用されないために
ストーカーやDV、虐待は、被害者の心や体に一生忘れられない深い傷を残す犯罪であり、私たちは社会を挙げて迅速かつ適切に被害者を守るべきです。同時に、それらは非常にセンシティブな問題でもあります。
現行の法律や行政機関の対応としては、制度が悪用される懸念があるとしても、一時的な保護や支援を実施することを優先しています。従って、そうした支援措置を悪用し、子供の連れ去りや面接交渉権の妨害に悪用されるケースが一定数発生しているのが現実です。
離婚や親権問題を扱う弁護士や行政機関の窓口の担当者も、相談者にDVの支援措置制度を積極的に紹介し、無条件でその制度の利用を推奨しています。少なくとも虚偽DVによる子供の連れ去りの被害に合いそうな方は、事前にそうした事実があることを知り、予防策を考えておく必要があります。
それでも、配偶者が、前触れなく子供を連れ去って、虚偽DVの支援措置を使って所在をくらますことがあるかもしれません。普段の生活から何の問題もなく、思いやりと愛情を持って接していたにも関わらず、そのようなことが起こってしまった場合は、Japan PI ができる限りの所在捜索や現状確認の素行調査に対応させていただきます。