時代錯誤の法制度「単独親権」が生んだ、「我が子誘拐」の悲劇

子ども目線で考えると、親の都合で両親のどちらかが養育を免れる選択的共同親権なんてありえないんですが、母親目線(親権をとれること前提)だと選択的がいいとか出てきます。

この弁護士さんは、あまりそこまで考えたことがないのでしょう。

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/537237ff4d6db6f5db979d9a6a13cfb4c362f037?page=1

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性格の不一致など、様々な理由から配偶者に不満を抱えている方は少なくありません。しかし、離婚を申し立てる理由が法的に「事由」として認められるかどうかは、また別問題なのです。世田谷用賀法律事務所の代表者、弁護士の水谷江利氏が「離婚成立までの過程」について解説します。

日本は子の保護に関する国際ルールを遵守できていない

欧州連合の欧州議会本会議が、先月7月8日、EU加盟国の国籍者と日本人の結婚が破綻した場合などに、日本人の親が日本国内で子どもを一方的に連れ去る事例について、ハーグ条約を確実に履行する措置を講じるよう日本政府に要請する決議案を採択しました。 (https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200709/k10012505591000.html) この決議は、これに進んで、日本は子の保護に関する国際ルールを遵守できていないとして、日本政府に「共同親権」を認めるよう国内法の改正を促したものとして、大々的に報道されました。

2019年3月には、「国連の児童の権利委員会」も日本政府に対して、離婚後の親子関係に関する法律を、「子供の最善の利益」に合致する場合に「共同養育権」を行使できるように改めるように勧告しています。

「共同監護」「共同親権」とは?

「共同監護」「共同親権」とは、どのようなことなのでしょうか。 日本は、先進国の中では珍しく、離婚後の両親について、一方にしか親権(親権は通常実際に子供を監護する「監護権」を含んだ概念です)を与えない法制度をとっています。これが「単独親権」です。 単独親権のみとしているのは、主要な国ではインドとトルコくらいのもので、そのほか多くの国では単独親権だけでなく共同親権をとることも認められているのです。「共同親権」というのは、別れた夫婦の双方に親権を認めるというものです。

法務省も、近年、日本の離婚後の親権をめぐる法制度と海外との比較について注目し、専門的な調査研究を進めてきました( 父母の離婚後の子の養育に関する海外法制調査結果の公表について )。 冒頭のEU決議は、あくまで、国際離婚の事案で、国を超えた子の連れ去りがハーグ条約に違反することから、これについて向けられたものですが、日本で国を超えた連れ去りが正当化されるのは、日本が単独親権という制度をとっているからで、それがけしからん、というものです。

日本において、離婚後の父母のいずれかしか子に対する親権を持つことができない「単独親権」という制度がいいのか悪いのか、「共同親権」や「共同監護」の制度を真剣に検討した方がいいのではないかということは、「諸外国がそうだから」とか「国際社会から非難されたから」ということではなく、きちんと考えなければいけないことです。

離婚弁護士から見る共同親権・共同監護

「面会拒否」で対立が深まる事例は、決して少なくない

たしかに、日本は、離婚後どちらかの親しか親権を持つことができず、親権を持つ親が子供を監護する(親権と監護権の一致)することが多いですから、片方の親は面会という手段でしか子供にアクセスすることができません。 子どもに会うという「面会」は、間接強制という金銭的な制裁以外の方法では強制することができません。

子どもを心から愛する片方の親が、離婚後、面会を取り決めてもなお子供に会うことができない事案や、子どもに会いたいけれども、片方の親が何らかの理由でこれを断固拒否して面会の調停が極めて長期化し対立が深まる、といった苦しい事案。これらの事案には、離婚弁護士として接することは決して少なくありません。 離婚後の親権が片親に与えられることの帰結というべきか、現在の日本では、共同親権・共同監護下にある子を、夫婦の一方が連れて家を出る事案は違法とはされません。これが「連れ去り」の問題です。

一方、ひとたび片方の親が子供を単独で監護するようになると、まだ離婚が成立しておらず共同親権であってもなお、そこからの子供の連れ戻しは「誘拐」となってしまいます(別居中に、一方の親が、実力で他方の親から、子を奪ったとき未成年者略取誘拐罪が成立するとした最高裁判所平成17年12月6日判決。ただし、この事案は、連れ去りの親の性質がかなり悪質だったケースのようで、すべての事案が「誘拐」ということではありません)。

離婚後の子が育つ環境をどう考えるべきか

子どもが離婚後も双方の親に触れることで安定し、愛情を感じることができ、また、メインの監護にあたる親も、もう一方の親が関与し続けてくれることでいっときの負担の軽減になるのなら、離婚後も共同して双方の親が子供にかかわることができる共同親権・共同監護の制度がよいことは当然だと思います。 弊所のある世田谷区用賀には、離婚後の面会交流を通じて共同養育をサポートする「一般社団法人りむすび」さんがあります。

この「りむすび」さんの代表のしばはし聡子さん著作の書籍『別れてもふたりで育て 知っておきたい共同養育のコツ』には、このような共同監護(共同養育)の良さ、そのために克服しなければならないことなどが平素な言葉でわかりやすくまとまっていますので、おすすめです。 本拠地が同じということもあり、「りむすび」さんとはお仕事でお互いに協力をしたり情報交換をさせていただいたりしています。

共同親権や共同監護の制度で、難しいのはどんなことか

もし、離婚後に面会を渋ったり、あまり会わせたくないという気持ちが、片親の「こちらのやり方を乱されたくない」「いいとこどりをされたくない」とか「子供がパパ(ママ)のほうになびいてしまったらどうしよう」といったような心理的な壁だけであるなら、こういった点は乗り越えていかなければならない点だと思います。 単独親権、単独監護をとるときは、やはり離婚後の子は「どちらかのもの」となってしまうので、こういった傾向を助長し、もう一方の親が入り込む余地を失わせてしまう問題があると言わざるを得ません。

一方で、共同親権、共同監護という制度にも、難しい問題があるとされます。 片方の親が監護に当たる親として何らかの不適格な点がある場合にまで共同監護を認めていいのか。あるいは、子供が双方の親の環境や考え方の違いで悩み苦しんでいるときに、親の権利を双方に認めて良いのか、子供の安定は確保されるのか、とった点などです。

日本で単独親権が長く続いてきたのは、家督制度、家制度のもとで男性優位の「X家」というファミリー感が強かったこともありますし、高度経済成長期以来、男性の長時間労働、女性は家事労働といった役割分担のもとで、ベビーシッターなどの人件費も高額な社会背景の中、実際に男性が子供を引き取ることは困難であったという社会的な背景もあるのであろうと思います。 そう考えると、単に、主要各国がそうだからという理由で共同親権が是、単独親権が否ということもできないと思います。実際、諸外国も、「共同親権」を原則とするだけではなく、共同にするか単独にするか選択制となっているところも少なくありません。

このように考えると、

(1)子どもにとって双方の親に接することが利益になるような場合には共同監護を認める、あるいは共同監護的なことができるように単独親権の制度のもとにおいても十分な面会が確保される、

(2)一方で、子供にとって双方の親を関与させてしまうとかえって子供が苦しい立場におかれるような場合には,やはり一方の親のもとで安定した環境が確保されるようにし、面会は可能な限りで行われるようにする というのが本来の理想的な手段であるのだと思います。 「単独親権」の制度は、これに対して現在違憲訴訟が進行中でもあり、今後目を離せない論点です。

水谷 江利 世田谷用賀法律事務所 弁護士

4年前