先日の討論会でも触れました。共同親権と結びついた議論です。
https://news.yahoo.co.jp/articles/2f3b3bacc6e58acf8416af76fac7339f3526cb2b?page=1
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「一夫多妻」になると困るのは誰か
本来、夫婦間の問題であるはずなのに、「不倫は許せない」と多くのひとびと(特に女性)が声高に非難するのは、現代社会が「一夫一妻」を前提に成り立っているからだろう。だが、新著『女と男 なぜわかりあえないのか』(文春新書)で男女の性愛のタブーに斬り込んだ作家の橘玲氏は、「実は“一夫多妻”こそ女性に有利なのではないか」と疑問を投げかける。その真意について橘氏が解説する。 【図解】男女10人ずつを「一夫一妻」と「一夫多妻」でマッチングさせたら…
* * * 伝統的社会のほとんどは「ゆるやかな一夫多妻」で、厳格な「一夫一妻」は近代以降の西欧社会で生まれたきわめて特殊な婚姻制度です。それ以前に一夫一妻のように見えたのは、貧しくて1人の妻しか養えなかっただけで、経済的な余裕ができると男はすぐに複数の“妻”を持つようになり、洋の東西を問わず権力者は巨大なハーレムをつくりました。
子どもを産み育てる女にとってみれば、特定のパートナーがいつもいっしょにいてくれる「一夫一妻」が有利に思えますが、そう単純な話でもありません。
10人ずつの男女がいて、男には「経済格差」があるとします。「一夫一妻」であれば、資産の多い少ないにかかわらず、すべての男が妻を獲得できます。
では次に、同じ10人の男女を「一夫多妻」の自由恋愛でマッチングさせてみましょう。そうなると、もっとも大きな資源をもつ男が4人の女、その次が3人の女、といった具合に、上位の男が複数の女を独占していきます。その結果、下位6人の男は性愛を手に入れることができなくなってしまうのです。
このことから、「一夫一妻」が資源のない(非モテの)男に有利な制度であることがわかります。女にとってはどうかというと、一夫一妻ではなんの資源もない男と結婚しなければならなかった女が、より大きな資源のある男を獲得できるのですから、一夫多妻は「全体的には」女にとって有利な制度ということになります。
「全体的には」といったのは、一夫多妻だと不利になる女がいるからです。それは大きな資源のある男を結婚した女で、別掲の図を見れば明らかなように、最上位の女は一夫一妻だと自分一人ですべての資源を独占できますが、一夫多妻だとそれを4人で分割しなくてはならなくなります。
このように一夫一妻は、非モテの男と、結婚した女に有利な制度です。こうしてアメリカでは、「インセル(非自発的禁欲者)」と呼ばれるミソジニー(女嫌い)の非モテ男と、家庭をもつ保守的なフェミニストが、ともに「一夫一妻の伝統的な道徳を守れ」と主張する奇妙なことが起こるのです。
これは拙著『上級国民/下級国民』でも指摘しましたが、現代社会は徐々に「事実上の一夫多妻」に移行しつつあります。50歳時点でいちども結婚したことのない割合が生涯(50歳時)未婚率ですが、日本では男性23.4%に対して女性14.1%(2015年)とかなりの差があります。男女の数がほぼ同数だとするならば、一部の男が複数の女と結婚しているのです。
こうした傾向は欧米でも同じで、だからこそ男の「モテ/非モテ」が深刻な問題になっています。今後、家族の形態が多様化し自由恋愛がさらに進むにつれて、この「モテ格差」はさらに大きなものになっていくでしょう。
◆橘玲(たちばな・あきら):1959年生まれ。作家。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎文庫)、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)、『上級国民/下級国民』(小学館新書)などベストセラー多数。新刊『女と男 なぜわかりあえないのか』(文春新書)が話題。