もうカオス?!「吉村人気」と「もつれた構図」に、「政策」かすむ羽曳野市長選挙(オフィス・シュンキ)

もうカオス?!「吉村人気」と「もつれた構図」に、「政策」かすむ羽曳野市長選挙(オフィス・シュンキ)

東京都知事選の投開票があった7月5日。大阪府下で注目される市長選の公示が2つありました。

一つは河内長野市、もう一つは羽曳野市です。どちらも、コロナ禍の中で、その機敏な動きがメディアの目に留まり、一気に認知度が上がった吉村洋文大阪知事の所属する大阪維新の会の候補が出馬しており、11月にも控える2度目の「大阪都構想」選挙をにらんでも、大切な選挙になっています。

私は、このうち羽曳野市の方に公示当日に入って何らかの形で、出馬している5人の候補の陣営に接触させていただきました。

この羽曳野市長選挙。現職に4人の新人が挑む形で争われているのですが、特徴は5人も出馬しながら、泡沫、とされる候補がひとりもいないという点です。1期だけとかいうのでなく、長く市民の代弁者として活躍されている方たちでした。

そして、1人を除いて、4人が無所属での立候補となっています。届け出順に、北川つぐお氏(77)=現職=、松村なお子氏(50)=元市議会議員=、嶋田たかし氏(72)=共産党推薦、元市議会議員=、やまのは創氏(39)=大阪維新の会公認、元府議会議員=、田中もとかず氏(55)=元市会議員=が5人の顔ぶれです。

急に、現地取材を思い立った私は、公示日前日に、各陣営の選挙事務所に連絡しようと思い、ネットで検索してみました。

こんなどうでもいいことを書くのには理由があって、これが検索にヒットしないのです。どこに事務所があるのか、ほとんどの候補が分からない。ある候補は、後援会の最近の収支報告書がヒットしたのですが、そこに記されていた責任者の携帯番号はすでに別人のモノでした。それでも、各候補陣営の連絡先はなんとか確保。さっそく、事前取材を開始してみました。

 

今選挙唯一の政党公認であるやまのは候補(やまのは候補のFacebookページより)

 

「維新系が2人といわれているのは違うんですけどね。公認候補は、やまのはです」と、今選挙唯一の政党公認であるやまのは候補の陣営。「なんで無所属なの?とプレスの方にも聞かれたりします」とは松村候補の陣営。5人の候補のうち、2人が維新系、2人が自民党系、1人が共産党系、と取材開始前に私は聞かされていました。しかし、単純にそういった構図でないのは、電話取材の段階で理解しました。

維新系候補の確認のため、大阪維新の会の本部に、問い合わせてみました。党本部によれば「(田中候補は)5月中旬に除名になっています」とのこと。羽曳野市議会で大阪維新所属の議員だった田中候補が党を除名になった頃に、大阪維新の会公認のやまのは候補は羽曳野市長選への出馬を表明し、すぐに府議を辞職された、ということでした。

自民党系の2人の候補に関しては、「ほんとうにきちんと、できなくて(羽曳野市民の方に)すまない、とは思っています」と、ある大阪府下の自民党地方議員がいうように、松村候補は現在も、自民党員。現市長の北川候補は、市長選挙で最初に当選した2004年は、自民党推薦、前回は、自民、公明、民進党の推薦を受けての出馬でした。北川候補と松村候補は、今回、自民党の公認候補でないだけでなく、ともに、党の推薦も得ていません。

 

松村候補の出陣式 (c)オフィス・シュンキ

 

公示日当日。私は、午前8時半に松村候補の事務所横にいました。そこには、2日前に同地でスタートしている「大阪府府議会議員補欠選挙」の自民党公認の立候補者も顔を見せ、自民党所属の衆議院議員、府議、市議もずらりと顔をそろえていました。その中で、松村候補は「国からしっかり予算を取ってきます」と国とのパイプをアピール。ダルマの目入れでは、両目に目を入れるなど、当選はわれにあり、という出陣となっていました。その後、私は、市内のターミナル駅というべき、近鉄の古市駅に移動。午前10時からのやまのは候補陣営の「第一声」を聞きに行くためでした。

吉村洋文大阪府知事が、陣頭であいさつするのだろうと思って期待して向かった古市駅で最初に見たのは、「日本維新の会」所属の衆議院議員の姿。まさに、あれっ、でした。やまのは候補と吉村知事とのやり取りについては、当時の大阪府議だったやまのは候補が、昨年暮れの大阪府議会本会議で行った離婚などによる別居親子の「面会交流」に関する質問に、吉村知事が「『面会交流』は、子どもの福祉のためにある。『大阪府子ども総合計画後期計画』に明確に位置付けたい」と即答されていたのが印象に残っています。共同親権をはじめ、当時、私も調停で小学生2人の子どもの「親権」を話し合っていた最中だっただけに、このスピーディな議会での対応が、うらやましく、見事に思えたものです。

それもあって、今がまさに旬の吉村知事不在の、第一声は意外でした。

午後からは、1時に元維新の田中もとかず候補の選挙事務所横で行われた演説会に。「(維新のイメージカラーの)緑色を洗い流す、というポスターなんです」と陣営の方に、オレンジを基調としたポスターの意味を教えていただいて、拝聴させていただいた田中候補の演説。「維新の候補の方を地元で見たことがありますか?」と、維新の看板政策の「大阪都構想」には賛成の意を表しながら、維新候補の痛烈な批判が飛び出していました。 しかしそれ以上に、ここで私が驚いたのは、朝、松村陣営でみた、同日選挙となる自民党の府議会議員候補がそこにいたことです。しかも、田中候補に紹介されている!えっ、確か、自民党系の市長候補は、松村候補と北川候補だよなあ、なのになぜ?もう、カオス。複雑な人間関係が奥にあるのは、各陣営で話をうかがったことなどで知りましたが、地元の人ではない私のような者には、その場では理解不能でした。いかに府議会補選の対立候補が維新公認のひとりだけとはいえ、不思議なものを見せられた気がしました。

 

応援演説に駆け付けた吉村知事 (c)オフィス・シュンキ

 

大阪維新の会」の代表代行も務める吉村知事が、羽曳野に姿を現したのは、午後3時半。目抜きの道路のいたるところに立っている維新の運動員の方にお聞きして、そのことを知った私は、古市駅に向かいました。そこで見たものは、人の群れ。5百人ぐらいはいたのではないでしょうか?同党の元代表、橋下徹氏の全盛期をほうふつさせる集人力。朝、羽曳野に入れなかったのは「河内長野市長選」の応援のため。その理由は「僕は河内長野の生まれなんです。この羽曳野を通る近鉄電車に毎日、乗って育ちました」という、「第一声」で分かりました。

 

吉村知事の演説を聞きに来た人たちで路上が埋め尽くされる (c)オフィス・シュンキ

 

「吉村さんが選挙に出ているのではないですから」と、維新候補を警戒しながらも、語ってくれたのは、次に事務所を訪れた共産党推薦・嶋田候補陣営の方でした。「経験のある方ばかりが立っている選挙。一つ流れに乗れば、どの人が当選してもおかしくない」と、維新も自民も「ノー」の方の受け皿としての存在を陣営は強く意識しているようにもうかがえました。そして、この日、5陣営の最後に接触をもったのは現市長でもある北川候補の陣営でした。選挙事務所を訪れると、「(選挙を)語れる方は不在」とのことで、後日、電話で話をお伺いする形となって、この日は終了。

北川候補が4期16年の現職、松村候補が5期15年の市会議員、嶋田候補が6期24年の市会議員、山入端候補が3期9年の府議会議員、田仲候補が4期15年の市議会議員、とあって、各陣営のビラは、政策でびっしり埋まってました。維新のキャッチフレーズのはずの「身を切る改革」が、全く違う候補のビラに現れたり、子育て世代や高齢者支援、世界遺産を中心にした観光・産業振興などが、いたるところで目に留まり、「本来の論戦はそういったことなんだろうな」と思いました。しかし、現実には、コロナ被害への救済に市が独自で決定した支援策(市民一人1万円給付・全世帯への5千円の商品券配布など)が、時期的・結果的に、特定候補の実質的な選挙運動になったのではないか、といった話や維新や自民の「分裂選挙」の話が、主にマイクを握っていない方々、時としてマイクを握った方からも聞かれ、「政策」などよりはるかに印象に残りました。

 

政策でびっしり埋まる各陣営のビラ

 

7月12日に投開票の選挙結果はともかく、人には感情があり、政策とは別に、そこがもつれると、「何がどうなん?」ということになってしまうのではないか、と改めて感じさせていただいた羽曳野市長選挙の取材。有権者(7月2日現在、9万3927人)も人。感情があるのはいうまでもありません。もつれた構図と、実際の現場を見て、「選挙」って、「人間」って、と改めて考えさせられたのは確かでした。(オフィス・シュンキ)

9か月前