https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakatoshihide/20200703-00186379/
■単独親権から共同親権へ
当欄ではここ半年ほど、日本の親権問題について言及してきた。離婚後のシングルマザーの貧困問題や、子どもの基本的人権のひとつといってもいい「両親から養育される権利」は、単独親権システムによって阻まれる。
世界でも少数派となったこうした「単独親権」システムを脱して「共同親権」に移行することが、子どもソーシャルワーク支援の根幹である「子どもの利益の最優先」を守ることになる。
養育費の不払いも、共同親権システムになることで現在よりは改正されるだろう。そのためには、共同親権システムに移行し、「共同養育(離婚して別居している一方の親も一週間のうち数日子どもと過ごす)」を現実化させることが必要だ。養育費というカネだけとって、子どもとの時間(ペアレンティングタイム)を過ごせない今のシステムは明らかに欠陥システムとというか古いものだ。
いわゆる先進国諸国では、現在では日本以外は共同親権ではあるものの、それはそれほど古い歴史はもたない。つい30年ほど前に、共同親権システムに各国とも移行した。
だから、日本も共同親権に移行できる。実際、今週は自民党の政務調査会司法制度調査会から『新たな「共生社会」へ,求められる司法の役割』が発表されている。この19ページには、以下のような文言が記述されている。
実はこれらの文言は、共同親権システムへの移行を求める人々(子と別居する親や支援する人々)にとっては画期的なこととして歓迎されている。保守主義である与党の自民党が、「親権制度の在り方、 養育費の確保、面会交流の改善」等に言及することはそれだけ画期的なのだ。
■「離婚の弁護、承ります」
そのように、単独親権から共同親権に移行しつつある我が国の親権システムだが、現実は、離婚時の「子どもの拉致」が頻繁に起こっている。その数は、1年の離婚件数20万件(!)のうち、数万~10万件に及ぶといわれる。
欧州議会ではそれを子どものabductionとして糾弾するが、日本語では「連れ去り」という温和な表現が一般的になっている。が、abductionは言葉の正確な意味として「拉致」であることは、当欄でも指摘してきた(もうひとつの「拉致被害者家族」~離婚時のabduction)。
そのabductionを指導しているのが、弁護士である。
その悪業ぶりは、Twitterで「連れ去り 弁護士」とでも検索すると、子を拉致され一人になった別居親たちの怨嗟ツイートで満ちていることから容易に想像できる。
そう、離婚しようかどうかで悩んでいる親に対して、「パートナーからDVされたことにして(虚偽DV/冤罪DV「DV冤罪」~昭和フェミニズムの罪} 、そのあと子どもを「拉致」っていくことが離婚する際に有利になると囁くのは、多くの場合は弁護士らしいのだ。
実際、ネットには、明確に「拉致ります」とは書かないにしろ、「離婚の弁護、承ります」という弁護士事務所の広告は容易に発見できる。
それはいかにも清潔そうな表象にくるまれているが、よーく見ると、謝礼として「養育費の30%」などとさらっと記されている。
今回のテーマからズレるので深入りしないが、仮に離婚が成立し養育費をゲットできるようになったとしても、同居親(主として母)のもとに振り込まれる養育費のうち3割は弁護士に流れることになる。
■弁護士は「正義」ではないのか?
子どもを拉致された別居親(主として父親)の嘆きを聞いたり読んだりしていると、子を拉致した背後に、どうやら弁護士の姿が垣間見られる。このあたり、個別の弁護士事務所のネット広告を引用することも憚れるため別居親サイドの感想をもとに語るしかないのだが、やはり、現代の離婚事案において、弁護士は相当「暗躍」しているようだ。
それは、子を拉致された別居親からすると「暗躍」だろうし、計画通りこの拉致に成功した同居親(主として母親)からすると「成功」かもしれない。
いずれにしろ、このabductionには、弁護士のアドバイスが相当有効に働いている。
拉致に成功した親からは感謝されるだろうが、子を拉致された親からは一生恨まれる。
こうしたabductionに、それなりに関与する弁護士の存在の意味が僕には長い間わからなかった。
だって、そんな評価を二分する危うい仕事に関与せずとも、弁護士という社会の中の最上位を占めるプロフェッショナルであれば、いくらでも仕事はあるだろうし、また、社会の中の「正義」を代表するイメージをもつ弁護士であれば、そんな離婚時の漁夫の利を得るのではなく、もっと「正義」のために尽くすんじゃないかと。
■「正義」以前に食べていく必要がある
だが、99年から始まる司法制度改革以来、多くの人々がもつ「弁護士=正義」のイメージは大きく揺らいでいるようだ(年間所得200万円も…弁護士はもはや負け組?)。
上引用記事によると、弁護士の収入の「中央値」(一番多い層)は、年収400万円だという。記事はこう書く。
げっ、弁護士が400万?
それが事実だとすると、そりゃ、「拉致」でも「養育費30%」でも、カネになるのだとしたらなんでもやるわなあ、と僕は思った。弁護士になるまで多額の投資を親はしているはずたから、とにかくその投資分を回収しなくてはいけない。
同記事ではさりげなく「離婚」弁護という文言も登場する。
殺伐としている。
この殺伐感は、究極的には「弁護士が増えすぎた」ことに原因があると僕は思う。実際、司法制度改革が始まった99年と比べると、弁護士の数は倍になっている(弁護士人口)。
そりゃ、倍になったんだから、ライバルたちに負けないためにまずは食べていかなければいけない。そのためには、「拉致」だろうがなんだろうが確実に報酬のある案件に手を染め、「離婚時の弁護を承ります。報酬は養育費の3割です」とホームページに臆面もなく記載することになる。
弁護士は増えすぎた。「正義」以前に食べていく必要がある。そんなガツガツする弁護士たちからすると、離婚時の「拉致」は、ある意味「おいしい」案件だと思う。