夫婦別姓がないのは怒るけど、共同親権じゃないから入籍する最近のパターン・・・
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写真:現代ビジネス
毎年公表される世界各国の男女格差をランキングで示す「ジェンダーギャップ指数」。世界経済フォーラムの最新データによると、日本は153ヵ国中121位。前年度の110位と比べると大幅にダウンしたどころか、過去最低の結果となった。この数字から分かるように、日本のジェンダーギャップは、思っている以上に深刻なのだ。けれど「日本にはジェンダーギャップがあることさえ気づいていない女性もまだまだ多いと思います」と語るのは、BLAST Inc.CEOの石井リナさん。 【写真】「ナプキン不要なショーツ」って?
石井さんは、女性向けエンパワーメントメディア「BLAST」の運営をはじめ、女性へのエンパワーメントをさまざまなシーンで発信している。とくにミレニアル世代の女性への影響力は多大で、じわじわと、確実に、今みんなの意識が変わりはじめているーー。
「おかしいと思ったことに対しておかしいと口にしないと何も変わっていきませんよね」と語る石井さんに、日本の“ジェンダーギャップ”のこと、そしてナプキン不要の吸水ショーツを作るに至った経緯について語ってもらった。
先進国だと思っていた日本の現実
石井さんがCEOを務めるBLAST Inc.は、女性向けエンパワーメントメディアを運営している。インスタグラムやツイッターを主体とし、取り上げる内容は社会問題からセックスまでと幅広い。ミレニアル世代である石井さんが、大学卒業後ものの5年足らずでメディアを立ち上げたのには、「日本の女性たちに現状を伝え、さまざまな選択肢があることを伝えたい」という強い思いがあった。
「BLAST」公式インスタグラム。国内外で活躍する注目のクリエイターの紹介や、性とセックスについてのオリジナル動画など、独自の視点で切り込んだ情報は、どれも厳選されているのがよく分かる。
「新卒で入社したIT系広告代理店を卒業し、フリーランスでSNSマーケティングに携わっていた2016~2017年頃。海外のメディアや企業、インフルエンサーたちの発信を追っていたんです。ちょうどダイバーシティーやフェミニズム、#MeTooなどが社会のうねりにある時で、たくさんの人や企業が社会問題と向き合っていました。そんな様子に、日本と海外のギャップをすごく感じていたのですが、ある時、日本のジェンダーギャップ指数のランクの低さ(2016年度111位、2017年度114位)を知って驚きました。私は日本で生まれ育ったので、ずっと『日本は先進国だ』と当たり前のように思っていたのでかなりショックでしたね。今ほどフェミニズムという言葉も浸透していなかったので、きっと私のようにこの現状を知らない人はたくさんいるはず。日本の女性たちに現状を知ってもらい、生き方においてもいろんな選択肢があることを伝えようとメディアの立ち上げを決めました」。
他者からの評価より、自分らしく生きる方が大切
完成したばかりのオフィスで。
そのあとすぐに起業。「BLAST」をはじめ、自身のSNSやさまざまなメディアでのコラム執筆やインタビュー取材を通じ、日本のジェンダーギャップにまつわる発信をし続けきた石井さん。記憶を辿るとフェミニズム的思想は、幼い頃からあったという。
「両親に『女の子なんだから』というようなことは言われた記憶がないですね。それよりも『なぜ働くのか? 』『なぜ自立しないといけないのか』とそんな話を母によくされていたので、自立した女性への憧れは早くからありました。あと我が家では、父が家事のほとんどをしていましたし、高校時代は男女別学でほぼ女子校のような環境だったこともあり、ジェンダーのバイアスを受けにくい環境で育ちました」。
とはいえ、中高生時代は今思うとジェンダーバイアスにつながる“刷り込み”はあったと話す。例えば女性ファッション誌。ページをめくると『モテるための仕草』『彼のお母さんに好かれるためのファッション』など、他者からの視線を気にした情報ばかりが溢れていた。
「違和感をいだきながらも『そうしなきゃいけないんだろうな』とは思っていました。ただ、『不特定多数の人にモテる』ことに関しては昔から興味はありませんでした。フェミニズムを知ってからは、ますます“モテ”という他者からの評価よりも、自らが満足のいくように、自分らしく生きることの方が大切だなと。なので、『BLAST』では“モテ”について発信することはありません」 就活の際は「食わず嫌いせずに自分の目で確かめたかった」と、不動産、銀行からIT企業まで、あらゆる業種の会社訪問に100社くらい自分の足でまわった。中には、「女性だけ制服着用が義務づけられている会社もあり、嫌悪感を覚えた」という。「性差、年齢差など関係なく、実力で評価されるような成長市場で働きたい」というのが、就職に求めるいちばんの条件だった。その後、希望の会社に入社をしたが、3年足らずで退職し、ベンチャー企業を経て起業した。
「起業家はもちろん、ベンチャーキャピタルと呼ばれる投資会社も男性がほとんどです。もちろん昔に比べると女性も増えてはいますが、男性の方がマジョリティであると言えます。女性のコミュニティが不足していると思いますし、ジェンダーバイアスのかかった言葉を投げかけられることもあります。まだまだダイバーシティーに富んだ業界ではないですね」。
夫婦別姓がなぜ許されない? 日本の戸籍制度に対する疑問と怒り
パートナーはフォトグラファー兼アーティストの三澤亮介さん。Photographer : はまなかよしたけさん Hair : 丸林彩花さん
2019年に結婚した石井さんは、これまでさまざまなメディアで夫婦別姓においても強く主張を続けてきた。結婚をする際に、一方が相手の戸籍に入るという日本の戸籍制度そのものに対しても納得していない。
「夫婦別姓がなぜ許されないのか、不思議でなりません。『夫婦別姓だと家族の絆が弱まる』なんて声もありますが、外国籍の方と結婚をしたら夫婦別姓を選択することができますよね。なぜ日本人同士だとダメなんでしょうか。家父長制を象徴する、日本の戸籍制度そのものがおかしいと思っています。結婚をする際に多くは、女性が男性の籍に入り、離婚をしたら除籍される。男性が人であり、女性は人ではないというように言われているように感じました。男性の戸籍を軸として、追加されては削除される女性はアクセサリーのようですよね。とても尊厳を傷つけられましたし、国に対してはじめて強い怒りを覚えました」。
パートナーもまた、石井さんと同じように日本の戸籍制度に疑問を抱いてきた。二人の間でジェンダーギャップに関わる価値観の相違はなかったという。
「彼もフェミニストです。例えば、『男性だから女性に食事をおごらなきゃいけない』というようなジェンダーバイアスや、マッチョイズム的な社会にはふたりとも拒否反応があり、根底的な価値観が似ている部分が多いです。ジェンダーギャップ、それにまつわる構造的差別についてなど、日々いろいろなことをたくさん話すので、お互いが学びながらアップデートされている感じはありますね」。
夫婦別姓を望んでいた石井さんが、事実婚を選択せず、法律婚した理由については、「夫婦で共同親権をもつことができないため」と語る。
「共同親権を持つことができれば、事実婚を選んでいたと思います。また、子供を持つことに私も旦那さんも意欲的なのですが、血縁関係がなくてもいいと思っています。あと、自分たちの子どもは男の子だから、女の子だから、みたいなジェンダーバイアスのない環境で育てたいですね。私たち夫婦はどちらも語学力がなく日本にいる状態なので、子どもにはどんな国でも生きていけるようにサポートしたいと思っています」。
ナプキン不要の吸水ショーツで人生をコントロール
国内の工場で縫製されたショーツは全3種類。スタンダードナプキン約3枚分の吸水量(30ml)があり、制菌効果や消臭機能がある。価格は5,250円~5,800円。公式オンラインにて購入できる。
日本のジェンダーギャップは、20年前に比べるとずいぶんと変わってはきている。けれどその進化は、他国に比べると牛歩だという。ではなぜ日本はそんなにも変われないのか。その理由は「何事も自分たちの力で変えられないと思っている人が多い」ところにあると指摘する。
「日本人は、従属的な考え方の人が多いんじゃないですかね。何かは与えられるものであって、自分たちで取得するものではない。政治も社会も、自分たちの力で変えられると思っている人は少ないし、自分たちの力を信じていないというか。例えば、韓国はジェンダーギャップ指数で日本と肩を並べていたけれど、この一年間で変わりましたよね。それは、韓国の女性たちが学び、一致団結をして、声をあげて行動にうつしたから。シスターフッドのような連帯感が日本よりもあったと思います」
BLAST Inc.は、女性をエンパワーする新たなアクションとして、5月28日に生理用品ブランド「Nagi(ナギ)」をスタートさせた。日本ではあまり馴染みのない、ナプキン不要のスタイリッシュな吸水ショーツを発表し、話題を呼んでいる。
「生理は女性にとって身近なことなのに、選択肢が少ないし、あまりポジティブに捉えられていないですよね。物理的に選択肢を増やし、ポジティブに変換していけたらと思い、生理用品ブランドを立ち上げました。吸水ショーツは、日本ではあまり馴染みがないけれど、海外にはすでにあります。ただ、吸水性や消臭効果があまり高くなく『もっとよくならないのかな』と感じた点がたくさんあって。なので『Nagi』のプロダクトは、そのような機能性にかなりこだわって作っています。また、『生理だから黒』という選択肢を変えたくて、明るいカラーも展開しています。今後はショーツ以外にもいろんなプロダクトを出したいと思っていて、フェムテック(フィメール×テクノロジー)の中でもさまざまなジャンルがあるのですが、セクシャルウェルネス(性の健康)にはどんどん挑戦していきたいですね。自身の体をコントロールすることは、自分の人生をコントロールすることだと思っているので、『Nagi』を通じてそんな風に感じてもらえたり、自分の体に興味をもつきっかけになればうれしいです」。
———- 「NetFlix」からインプットすることが多いという石井さんのおすすめ番組はこちら!
———- ———- 「世界の“今”をダイジェスト」 「アメリカのニュースメディア「Vox」制作のドキュメンタリー。K-popや大麻、女性オーガズム、ジェンダーギャップなど、今世界中で注目されているニュースを、インフォグラフィックスを使って分かりやすく説明しています。“学び”を得るにはとてもいいコンテンツだと思います。各エピソードが15~20分ほどで終わるので、興味があるエピソードだけ観るのもおすすめです」。
———- ———- 「ワイルド・ワイルド・カントリー」 「フェミニズムとは関係ないですが、固定観念を覆すという意味で衝撃を受けたノンフィクションのドキュメンタリー。インドの宗教団体が、アメリカ・オレゴンの荒野に村をつくるのですが、その平和なコミュニティを、先住人たちが危ないと攻撃し、コミュニティも武装化し、さまざまな事件が発展していく。宗教=怪しいというようなバイアスがある方もいるかと思いますが、自分の宗教観が大きく変わった作品です」。
———- 石井リナ|BLAST Inc.CEO 2018年に起業し、エンパワーメントメディア「BLAST」と生理用品ブランド「Nagi」の立ち上げ、運営を行う。2019年に日本を代表するビジョンや才能を持った30歳未満の30人を表彰する「Forbes 30 Under 30」インフルエンサー部門を受賞。 「自分も大切にできるようになったし、相手に期待しすぎることがなくなった。男性、女性というラベルを外せば、一個人としてお互いを尊重しあうことができるから」 最後に聞いた「フェミニズムを通じて得た大きな喜びは?」という質問に対する答えが印象に残ったインタビュー。 男だから。女だから。という思考のクセを、まずは手放すことから始めよう。
FRaU編集部