もうひとつの「拉致被害者家族」~離婚時のabduction

https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakatoshihide/20200619-00184051/

■EU委員会による決議

6月16日、EU欧州議会の請願委員会において、当欄でも度々指摘してきた離婚時の「子どもの連れ去り」行為を日本人に禁止するよう日本政府に求める決議案を、全会一致で採択した。日本では共同通信がこのニュースを短くとりあげている(子の連れ去り禁止を日本に要請 EU議会委、決議を採択)。

共同通信は「連れ去り」と表現するが、EUの委員会ではこれをchild abduction、つまり「子どもの拉致」と明確に表現している。

このabductionは、あの北朝鮮による日本人拉致問題を表現する際にも同じabductionが使われる。政府による「拉致問題対策本部」サイトでも、Abductions of Japanese Citizens by North Koreaと表現されており、力による強引な連れ去り、という意味でこのabductionが用いられる(北朝鮮による日本人拉致問題)。

だが日本語ではより穏健な表現である「連れ去り」が一般的には用いられてきた。僕も、「拉致」という強い表現を使うと、離婚時のabductionを世間に啓発していく際にはむしろ逆効果かもしれないと考え、これまで穏健な「連れ去り」を使ってきた(「ぼくは、父(母)親に絶対会いたくありません」~「連れ去り洗脳」という児童虐待)。

■それは「もうひとつの拉致被害者家族」

だが、現実のその行為はまさに拉致である。Twitterで「単独親権」や「連れ去り」で検索していただくと、連れ去られた親たち(別居親。多くは父だが母もいる)の嘆きや悲しみが散乱している。

また上の記事(「ぼくは~」)でも簡単に触れたが、僕自身、保護者への面談支援を行なう中で何人かそうした「拉致被害者家族」である別居親たちと出会ってきた。

ここには、「虚偽DV」に巻き込まれた別居親たちも含まれており、最近ではこんな(「DVの加害者と判断された」市に損害賠償求めていた公務員の46歳男性 市が謝罪し和解成立)訴訟・和解もあった。

もちろん、離婚の原因には本物のDVも20%前後含まれ(参院議員の嘉田由紀子氏によれば、夫・妻双方から20%程度の加害DVがあるとのこと6月7日 離婚後の子どもの親権問題で養育費義務化の問題)、また「子どもに無関心な別居親」や「母親の不倫問題」なども隠されていると言われる(いずれ当欄で取り上げます)。

そうしたDVや虐待で子どもに被害を与える(どちらかというと少数派の)別居親を除き、多くの別居親は「拉致」被害に遭うことで日々嘆き悲しんでいる。

それは、北朝鮮による拉致被害者家族とは別に存在し、しかも数としては数十万単位(毎年20万組の夫婦が離婚しており、その一部がabduction/拉致被害者だとしても、それが10年以上積み重なるとそれくらいの数になる)存在する、「もうひとつの拉致被害者家族」だ。

■テレビでは取り上げられない?

今回のEU委員会の決定はロイターでも取り上げられ、それは共同通信の記事と比べるとはるかに長い記事として紹介されている。

ロイターなので、これは世界各国のメディアにも配信されている。僕がTwitterでフォローしている小島太郎さんという方が、ありがたいことに、これらの記事を共同親権の配信記事とともにまとめてくださっている(EU議会が日本へ連れ去り禁止を要請することを決議したことを報道した機関のまとめ(リンク集))。

また、同じく僕がTwitterでフォローする雷鳥風月さんという方が、ロイターの記事をありがたいことに訳していただいている(欧州連合(EU)欧州議会の請願委員会についての報道)。

共同通信のそっけない記事と違い、ロイター記事は熱く解説する。

日本の母親に連れ去られた子供を見ることができない父親たちに働きかけられた欧州の議員たちは火曜日、片親による未成年者の「拉致」に対抗し、離婚後の共同親権を認めない法律を変更するよう東京に求めた。

全会一致で可決された決議で、欧州議会の請願委員会は、「親による子の奪取」の慣行と、国際法を遵守しようとしない日本の当局の消極的な姿勢を懸念していると述べた。

出典:欧州連合(EU)欧州議会の請願委員会についての報道

このような熱い内容の記事が世界をかけめぐっている。

日本では共同通信がなんとか記事にして地方紙に配信はしたものの、それは短く事実を伝えただけの記事にとどまった。

ましてや、僕はテレビを持たないのでわからないが、Twitterなどで別居親の方々のつぶやきを見る範囲では、テレビではいっさいこのニュースが取り上げられていないという。

今回のEU決議に感謝の応答をするためにも、離婚時の子どものabductionに関して、「拉致」という言葉をこれから僕は使っていこうと思う。

4年前